日本IBM、日本企業のグローバル化を支援するパッケージ群を提供

IBMの20年間にわたる知見と最新ITを活用


IBM Global Ready Solutionの基本的な考え方
日本IBMの常務執行役員 トランスフォーメーション・ストラテジー&ソリューション担当の金巻龍一氏

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は22日、日本企業向けグローバル化支援ソリューション「IBM Global Ready Solution(グローバル進出総合支援パッケージ)」の提供を開始する。

 IBM自身が、1990年ごろから約20年間にわたって取り組んできたグローバル化戦略の推進経験を生かすとともに、グローバル化の実務を経験し、日本の企業がグローバル化において抱える課題を理解している日本人担当者が「監修」する、日本企業向け専門のグローバル化支援ソリューションパッケージと位置づけている。

 日本IBMの常務執行役員 トランスフォーメーション・ストラテジー&ソリューション担当の金巻龍一氏は、「日本の企業にフォーカスしたグローバリゼーション支援であること、IBMが提案した通りになにをすべきかではなく、なぜそれができないのかに着目したものであること、そして、コンサルタントだけでなく、日本人の実務担当者をアサインして支援を行うこと、さらに、ひとつひとつの目前にある課題を解決して、グローバル化を進めていくという点が特徴になる。いまの時点で、グローバル化を行っていない企業はない。だが、グローバル化に課題がある企業は多い。企業が持つ現行の組織モデルをベースに、変化が激しいグローバル競争に対応するために、自律的変革が行える企業へと変えることが、まずは目標となり、それがスタートになる」とする。

 IBM Global Ready Solutionでは、7分野14領域を体系化したソリューションパッケージ群であり、日本ならでの視点で、日本の企業が活用しやすい形で提供。実務経験者で構成される監修者の個別アドバイスや、IBMのグローバルネットワークを生かした現地サポートデスクの活用も可能となっている。

 提供する7分野のソリューションは、

(1)IBM UnicaやIBM Coremetricsなどのマーケティング支援ソフトウェアを活用し、進出国でのマーケティングおよび営業の迅速な立ち上げと、活動情報の見える化、共有化、オペレーションの最適化を支援する「グローバル・セールス(グローバル・マーケティング/グローバル営業)」

(2)IBMが持つアセットや業務アウトソーシングを活用して、グローバルでのビジネス創出実現に必要なグローバル人財を、計画的に採用および育成し、これを最適配置するプロセスと、人事情報、給与に加え、スキルや職歴などの人財情報を見える化する仕組みの構築や、グローバルでの人事オペレーションの最適化を支援する「グローバル・ピープル(グローバル・タレント・マネジメント/グローバル人事機能)」

(3)IBM InfoSphereシリーズ、IBM Cognos、IBM SPSSなどの分析、情報連携ソフトウェアを活用し、グローバルでの経営指標の標準化、統一化、最適化によるコスト削減や、各国における業務展開や企業買収を含めたグローバル全体での経営指標管理と、予測を可能にし、ビジネスインサイト(洞察)のためのプロセス変革や仕組みの構築を支援する「グローバル・アカウンティング(グローバル経営ダッシュボード/グローバル経理・財務)」

(4)IBM SmarterCloud for Social Business(SCSB)やIBM Connectionsなどのコラボレーションソフトウェアを活用して、グローバル化に伴うコミュニケーションとワークスタイルの変化に対応した、新たなコミュニケーションの仕組みを提供する一方、多言語対応や幅広いデバイスからの利用が可能なコミュニケーションツール導入やポータルサイト構築を支援する「グローバル・チーミング(グローバル・コラボレーション/グローバル情報ポータル)」

(5)IBMGlobal Integrated View(GIView)、G-PROC、Emptorisなどにより、全拠点の状況を可視化し、収益の最大化やリスクへ迅速に対応できるサプライチェーンの構築や、グローバル・レベルでの購買オペレーションの最適化を支援する「グローバル・チェーン(グローバルSCM/グローバル購買)」

(6)IBM InfoSphereシリーズやIBM Netezzaなどの情報統合ソフトウェアや、IBMマネージド・セキュリティ・サービスなどにより、グローバルな経営判断を迅速に行うために、各国に散在する情報を統合および見える化する仕組みや、世界各地の拠点を情報漏えいやウイルス攻撃などのセキュリティリスクから保護する仕組みの構築を支援する「グローバル・IT(グローバル・データ統合/グローバル・セキュリティ)」

(7)IBMのグローバル・デリバリー・センターや、グローバル標準クラウドの活用により、グローバルレベルで肥大化、複雑化しているシステムの標準化、統合化を推進し、IT環境と投資の最適化を支援する「グローバル・アウトソーシング(グローバルIT環境最適化/グローバル標準クラウド)」

となっている。

 IBMでは、事業や地域を横断して経営資源の標準化と統合を通じ最適化する「真にグローバルに統合された企業(GIE=Globally Integrated Enterprise)」への変革に取り組んできた経緯がある。これらの7分野のソリューションは、IBMのGIEへの取り組みで実績があるソフトウェア、サービスアセット、クラウドインフラを組み合わせて体系化したソリューションパッケージ群となる。

日本IBMの理事 トランスフォーメーション・ストラテジー&ソリューション グローバル・ソリューションズ担当の高橋和子氏

 日本IBMの理事 トランスフォーメーション・ストラテジー&ソリューション グローバル・ソリューションズ担当の高橋和子氏は、「監修者は、IBMのグローバル化において、身を持って、それを体験してきた人材ばかり。米国流の型にはめ込まれるのではなく、本社と交渉し、日本に適したものを提案し、自分たちで解決してきた人材である。グローバル化にどこから手をつけていいのかわからない、なにをすればいいのかわからないという企業にとって、有効な解決方法を提案できるだろう。IBMが20年かかって実現したグローバル化を、顧客企業が20年かける必要はない。その知見を活用することで短期間で実行に移せることになる。グローバルIT環境を標準化、統合化するだけでも、過去の事例では20~40%のコスト削減が可能になっている」などとした。

 さらに、IBM Global Ready Solutionでは、目的別ワークショップを提供。企業のグローバル戦略や、目指すゴールを策定する「ビジョニングセッション」、目指すゴールと現状のギャップを整理し、企業のグローバル化が進まない理由を洗い出す「ギャップアナリシスセッション」、目指すゴールに向けてなすべき事柄や順序を策定する「クイックプランニングセッション」を用意し、「単にひとつのパッケージを当てはめればグローバル化ができるというものではなく、むしろその対極にあるソリューション。セッションを通じて、なぜそれができないのか、問題はなにかといったことを浮き彫りにし、個々の企業にあわせた形での支援を提供することになる」(日本IBMの金巻常務執行役員)とした。

 近日中には、「クイック導入ソリューション」の提供を開始。短期間で新興国に新規海外拠点を開設したいという企業の要望に応えるため、ソリューションパッケージ群のなかから新興国での新規拠点開設時に最低限必要なものをパッケージ化するという。

日本IBMのパートナー グローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティング・グループリーダーの池田和明氏

 日本IBMのパートナー グローバル・ビジネス・サービス事業 戦略コンサルティング・グループリーダーの池田和明氏は、「CXOと呼ばれる人たちは、グローバル化に関して多くの課題に直面している。CEOは新興国で事業を本格展開したいが、市場動向が見えない、海外事業は成長しているが利益がついてこないといった悩みを持っている。また、COOは地産地消型とグローバル最適型のバリューチェーンをどう組み合わせるのかが悩ましく、急激な変化への対応、オペレーションリスクが増大しているという悩みがある。そして、CHROには、海外子会社にどんな社員がいるかわからない、グローバル人材の育て方をどうすればいいのかといった課題や、CIOには現地拠点ごとにバラバラのシステムを統合したいが、現地拠点がいうことを聞かないといった悩みがある。こうした『なぜうまくいかないのか』といった点を解決していくものになる」と語った。

 一方で、池田グループリーダーは、「新興国の経済成長が続くことで、日本の経済的地位は低下すると予測されている。2010年には主要15カ国のGDPの10%を占めていたが、2050年には3%にまで低下すると予測されている。ドイツと比較すると、海外に投資をし、海外で事業を展開し、海外で収益をあげるという仕組みに差があり、貿易、事業投資、人材という観点から日本の経済を成長させることができれば、GDP拡大の余地はある」と指摘。「日本の企業が海外で収益をあげるグローバリゼーションを実現すれば、日本の経済が豊かになる」などとした。


IBM Global Ready Solution(グローバル進出総合支援パッケージ)の監修者IBM Global Ready Solutionのソリューションマッピング
関連情報
(大河原 克行)
2012/3/22 16:23