ニュース

パナソニック、AIインフラ・DC向けデバイスに3年で5000億円投資へ。蓄電システムは2028年度に1兆円規模を目指す

 パナソニックグループは8日、「Panasonic Group Investor Day 2026」を開催し、「AIインフラを支える事業」と位置づけるデバイス領域の取り組みについて説明した。

 パナソニック インダストリーによるAI関連事業と、パナソニック エナジーによるデータセンター向け蓄電システム事業の成長戦略に触れ、これらの領域に、今後3年間で約5000億円を投資することをあらためて強調。データセンター向け蓄電システム事業では、2028年度に売上高1兆円規模を目指し、そのために量産体制を強化することを新たに発表した。

 パナソニックグループでは、同社事業をデバイス領域、ソリューション領域、スマートライフ領域の3つの領域に分類。2026年5月に発表したグループ成長戦略では、2028年度までをフェーズ1とし、デバイス領域の売上高および利益を大きく拡大させることで、グループの成長を牽引する計画を明らかにしている。

 パナソニック ホールディングスの楠見雄規グループCEOは、「2028年度には調整後営業利益で7500億円以上を目指す。そのなかで、デバイス領域は、AIインフラを支える事業でのお役立ちを中心に、売上高、利益ともに大きく拡大し、今後3年間のパナソニックグループの成長を牽引することになる」と話す。

パナソニック ホールディングス グループCEOの楠見雄規氏

 また、「AIインフラを支える事業とは、AI化の波で急激に成長するAIデータセンター市場に向きあうものとなる。パナソニック インダストリーでは、高機能多層基板材料や導電性高分子コンデンサでは、AI処理の頭脳となるGPU、ASIC、CPUの周辺回路に加えて、データセンターで使われるさまざまな周辺機器の高速化および高度化に伴い、お役立ちの範囲を広げることができる。パナソニック エナジーのデータセンター向け蓄電システムでは、心臓部を担う電源の周辺で、電源のバックアップのみならず、GPUなどの進化とともに、より高い能力が要求される電力のピークカット性能を進化させ続けることで、継続的に貢献することが可能だ。将来的には、AIで駆動する自動運転やロボティクスなどのエッジ領域にも貢献の幅を広げる」とした。

AIインフラを支える事業

 その上で、「AIインフラを支える事業には強い需要がある。パナソニックグループには、その需要を確実に刈り取るための確固たる強みがある」とも述べた。

 パナソニックグループでは、AIインフラを支える事業として、2028年度に売上高で1兆3800億円、調整後営業利益で2900億円を計画。2029年度以降もさらに成長を目指すことになる。

 また、3年間の成長投資として約5000億円を計画しており、内訳はエナジーで約3500億円、インダストリーで約1500億円となっている。デバイスやシステムの進化、生産能力の強化を図る。

 好調な市場環境を背景に高い成長が期待され、力強い中期計画を打ち出している事業領域であるため、質疑応答で楠見グループCEOの笑顔が多く見られたことも印象的だった。

AIの駆動を担う「頭脳」と「心臓」をデバイスで支え、社会インフラの進化に貢献

パナソニック エナジー:データセンター向け蓄電システムを成長ドライバーに、2028年度売上高2兆円規模へ

 パナソニック エナジーでは、2028年度に売上高で2兆円規模、調整後営業利益で3000億円超を目指す計画を打ち出している。2025年度実績が売上高で9842億円、調整後営業利益では721億円であったことと比較すると、この3年間で売上高では約2倍、調整後営業利益では4倍以上に拡大する意欲的な計画となる。その牽引役がデータセンター向け事業となる。

パナソニック エナジーの全体総括と新中期の考え方

 パナソニック エナジーの只信一生社長は、「グリーン(EV)とデジタル(データセンター)に注力し、大きな市場変化に呼応する形で事業ポートフォリオを着実に進化させている。車載事業は当初計画の成長には届いていないが、産業・民生事業では生成AIが牽引するデータセンターの需要の急拡大を取り込み、大きな成長を実現している。その結果、車載と産業・民生の両輪経営により、環境変化への対応力を高めてきた。新たな中期計画では、データセンター事業を成長ドライバーと位置づける。新中期計画は成長と収益を両立させるフェーズになる」と述べ、「安全な電池を核とした蓄電システムでお役立ちを最大化する『データセンター向け電源ソリューションプロバイダ』を目指す」と宣言した。

パナソニック エナジー 社長の只信一生氏

 データセンター向け蓄電システム事業では、2025年度実績の売上高3200億円を、2026年度には5500億円に拡大。さらに、2028年度には売上高で1兆円規模を目指す。3年間で3倍に引き上げる計画だ。また、ROICは2028年度に20%以上を見込む。

 「2025年12月時点では、2028年度に売上高8000億円の目標としていたが、この目標は2027年度に、1年前倒しでの達成を見込む。この半年間で、お客さまからさらに強い引き合いがあることを反映し、見直した結果である」としたほか、「2028年度の計画は9500億円としていた。これを最低限のコミットとし、内部目標では1兆円以上にもっていきたい」との意向も示した。

経営目標(DC向け蓄電システム)

 製品の開発推進や受注合意案件をAwardと呼んでいるが、これまでは、2028年度の9500億円のうち、約8割をAward獲得済みとしていたが、今回の説明会ではAward獲得率が100%に達していることを明らかにした。

 データセンター向け蓄電システムでは、高度化する顧客課題への先行的なソリューション提案と、需要の急増や変動に応える柔軟な供給力を特徴としており、10年以上にわたるハイパースケーラーとの強い関係性、顧客課題を解決する設計提案力、性能や安全性、信頼性に基づいた提案商品の具現化力が、この分野における差別化になると位置づける。

 現在、データセンター向け分散型電源システム市場においては、約8割という圧倒的なシェアを獲得している。

 「生成AIによる市場成長が加速するなか、消費電力増大に対する高度な電源ソリューションへの要求が拡大している。ハイパースケーラーの設備投資は旺盛であり、2028年度にはトップ4社の設備投資が1兆ドルに達し、2025年度の2.5倍になると予測している。このなかでの課題は急激な需要拡大に即応し、安定供給を継続することである」という。

 また、「GPUやデータセンターシステムの進化に伴い、電力効率の最適化が必須となる。ラックあたりの必要電力は、1MWを超えることが想定され、電力負荷変動の吸収に加えて、データセンター全体の効率向上などが求められ、電源部は次世代プラットフォームに対応する必要がある。電力課題の重要性は一層高まり、高度な電源マネジメントシステムが不可欠になる。パナソニック エナジーは、ソリューション提案力と、供給力が強みになる。これまでにも、5年先に必要とされる新たなデバイスを開発し、それをマネジメントできるアルゴリズムを作り、まとめて提案するといったことをやってきた。顧客と共創した設計思想を早期に具現化し、これを業界標準化につなげるのが、パナソニック エナジーのビジネスモデルになる」と述べた。

市場環境認識

 従来型製品としては、現行のBBU(Battery Backup Unit)だけでなく、高出力のBBUを新たに投入。さらに、次世代製品として、CBU(Capacitor Backup Unit)や電源専用ラック向けBBUを、2026年度から市場に投入する計画だ。

 また、2028年度までに約3500億円の投資を計画。このなかには、国内の車載電池向けラインをデータセンター向けに転換するほか、米カンザスの生産ラインの立ち上げおよびデータセンター向けへの転換、メキシコでのモジュール工場の新設が含まれる。さらに、システムおよびデバイスの進化に向けた開発や試作ラインの立ち上げにも投資する。

 供給体制の整備では、日本での生産に加えて、北米完結型のサプライチェーン構築を加速する考えを示した。

 「旺盛な需要に供給量と柔軟性で対応する。車載拠点を含む、既存拠点の有効活用により、需要の急増に対応するほか、顧客の最大需要地である米国とメキシコでの能力拡充、電源コンポーネントの現地調達の強化により、需要変動に柔軟に対応できる供給網を確立する。車載に比べると投資規模が少なくて済み、迅速に対応できるため、需要の変化にも追随することができる」という。

 日本では、セル生産能力を2028年度までに3倍に増強。大阪工場の車載ラインの転用を進め、すでに2026年4月から出荷を開始したという。また、国内でのモジュール生産能力の増強も図る。「今後もお客さまの生産計画に応じて、ライン転用を進め、大阪工場の稼働を安定させる」という。

 北米では、米カンザスでのセル生産において、データセンター向けラインを導入し、2028年度から量産を開始。モジュールでは、メキシコの第2工場で2026年度から量産を開始するのに加えて、新たに第3工場を建設する計画を発表。2027年度から量産を開始する。また、電源サプライヤーとの連携により、北米での調達を加速し、2028年度には、電源コンポーネントの北米調達比率を50%以上に引き上げる。

供給体制の整備

 次世代ソリューションについては、電力ピーク抑制に対応。AIを活用してラックあたりのBBU出力を適切に設計し、最適化した電池セルを開発していることや、第2世代となるCBUの開発に取り組んでいることを示した。

 「車載電池では容量が求められるが、データセンター向けBBUでは出力が求められる。現在、1セルあたりの出力は80Wが主流だが、すでに、1.5倍となる120Wの新たなセルの投入を開始している。今後は200Wの高出力化も図る。ケミカルと機構設計の追求を両立できる強みを生かして、高出力の専用BBUの開発にも取り組んでいる。また、CBUは、2026年度から第1世代の量産を開始するが、並行して第2世代のCBUの開発に着手している。さらに、データセンター全体の電力効率化に向けて、HVDC(直流高電圧)対応のBBUの設計がほぼ完了した。2026年度中の量産に向けて準備している。HVDCの需要の本格化は2028年度以降を想定しているが、新たなものについても開発を進めている」と語った。

次世代に向けた提案・開発力強化

 また、楠見グループCEOは、「データセンター向けBBUに必要なセルはミッションクリティカルである。AIサーバーと同じラックのなかや、その隣に設置されるため、燃えることは許されない。建屋を別にした集中型電源方式では、価格競争にさらされるリスクが高いが、パナソニック エナジーが取り組んでいるのは分散型電源であり、信頼性や高品質の強みが発揮できる」と説明した。

パナソニック インダストリー:AI関連事業で2028年度売上高4300億円へ、基板材料やコンデンサの供給能力を倍増

 一方、パナソニック インダストリーでは、AI関連事業において、2028年度に売上高4300億円、2030年度には5000億円超を目指す計画を明らかにしている。

 これを実現するために、2030年度に向けて、基板材料やコンデンサなどの注力ビジネスでは供給能力を2倍に拡大し、車載分野で培ってきた強みを生かしながら、商品ラインアップや対象領域を拡大。AI領域に投入する商品を倍増させる。また、革新デバイスの創出により、非連続なビジネスや新たなデファクト化に取り組み、500億円規模の新規事業の獲得を目指す。

パナソニック インダストリーが目指す姿

 パナソニック インダストリーの小澤正人社長は、「2025年度までの収益改善フェーズを終えて、2026年度からは本格的な成長フェーズに移行する。競争力がある事業への集中投資を行うとともに、材料やプロセスに強みを持つ事業構造への転換を図る。環境の変化を踏まえ、情報通信インフラ、車載、FAの注力3領域に共通し、頭脳の役割を果たすAI領域に注力する。材料とプロセス技術によって、ユニークな価値を生み続けるデバイスメーカーを目指す。パナソニック インダストリー全体では、2028年度に売上高1兆3000億円を計画している」と述べた。

 AI領域においては、「AI半導体周辺から、インフラ、エッジ領域にもお役立ちを拡大していくことになる。車載向けで培った商品群を応用展開し、AI領域に継続的に投入する」と述べた。

中期戦略
パナソニック インダストリー 社長の小澤正人氏

 半導体周辺領域では、高機能基板材料、導電性高分子コンデンサにより、進化するAIの頭脳のパフォーマンスを最大化する。また、AIサーバーの大電力化による課題にも取り組み、新たにスーパーキャパシタを投入して、サーバーの電源効率の向上に貢献する。さらに、車載向けで高いシェアを持つインダクタやリレーなどをAIインフラ向けに応用展開するという。「AIインフラは、高電圧、高温、高耐久が求められ、車載向け品質と信頼性を磨いてきた実績が生きる」とした。

 新たな分野として、エッジ領域を挙げ、「ADASやロボティクスといったアプリケーションにもAIの頭脳が搭載される。これを支えるデバイスの需要拡大が見込まれる。この機会もとらえていく」という。

お役立ち領域・商品

 また、具体的な取り組みとして、「注力ビジネス増強」、「商品・領域拡大」、「革新デバイス創出」の3点から説明した。

 「注力ビジネス増強」では、AIサーバーに求められる高速処理、大電流、高温、スペース制約、高電圧といった厳しい物理的制約に対しても安定稼働を実現する高機能デバイスとして、高機能多層基板材料「MEGTRON」を挙げた。高周波の伝送損失を抑制し、高速信号の劣化を防ぎ、消費電力や温度上昇を抑制することができる。

 生産体制については、郡山、台湾に加え、中国・広州では2027年度第1四半期に新ラインを増設。中国・蘇州では2026年度第3四半期に、タイ・アユタヤでは2027年度第3四半期に、それぞれ生産を開始し、グローバル5拠点で役割を分担しながら、2030年度までに供給能力を2倍以上に拡大する。

 また、導電性高分子コンデンサは、体積あたりの実効容量が大きなコンデンサであり、高温および高圧条件下での容量変化が少なく、AIサーバーのような超高温環境でも、大電流を安定供給でき、少ない実装面積で実現できる点も特徴だ。

 佐賀および熊本、マレーシア、インドネシアの生産拠点において、すでに段階的に生産ラインを増強しており、2027年度から本格的な増産を開始。2030年度には供給能力を2倍以上に高める。

注力ビジネス増強

 2つめの「商品・領域拡大」では、スーパーキャパシタにおいて、車載向けで培った技術を生かしてAIサーバー向けに応用する。瞬間的に大電流を供給できる特徴により、電力負荷の変動を吸収し、電力の効率化に貢献するという。

 現在は、パナソニック エナジーとの協業により、CBUの商品化を進めており、2026年度中に量産を開始する。また、顧客ニーズの多様化に対応したキャパシタの新製品を投入。第1弾を2026年度に発売する。

 エッジ領域に対しては、AI半導体のリファレンスを獲得しており、デバイス需要の裾野を拡大し、ADASやロボティクス分野にグローバルで展開する。

商品・領域拡大

 3つめの「革新デバイス創出」では、AI関連商材への集中投資を実施。前中期計画期間中の3倍となる累計1500億円を、2028年度までに投資する。基板材料やコンデンサへの設備投資などで約600億円ずつを想定しているのに加えて、研究開発にも重点的にリソースを投入する。研究開発の強化では、スマートラボの活用拡大により、開発リードタイムを短縮するほか、産学連携や異業種連携によるオープンイノベーションを加速し、革新デバイスを創出。2028年度には革新的なデバイスの量産を見込んでいる。

革新デバイス創出/今後の事業展望

 小澤社長は、パナソニック インダストリーの強みについても説明した。

 強固な顧客接点と、材料×プロセスのブラックボックス技術を強みに、設計段階から先行提案を行うビジネスモデルを構築。「半導体メーカーとEMSという異なる顧客層と、電子材料とデバイスという異なるレイヤーの商品を持っていることから、複数のレイヤーにまたがる立体的な視点で、業界動向を正確にとらえることができる。業界キープレイヤーとの20年以上にわたる信頼関係があり、これらの情報をもとに、精度の高い未来の仮説構築が可能となっている。それをもとに顧客の声やニーズを引き出し、技術動向を先取りしたマーケティングを行える。デザインインやリファレンス活動が可能となり、他社に先行して価値を提供できる。また、化学反応を伴い、性質が変化するまねのできない素材配合設計や、製造工程においては、省人化した独自の連続プロセスを採用している点も強みになる。これは、AI領域においても強みが発揮できることになる」などとした。

ビジネスモデルと強み

 パナソニックグループでは、1万2000人の人員削減を実施し、中でもパナソニック インダストリーの人員削減が、当初計画を大幅に上回る結果になっている。この点に関しては、「注力事業には人材を投入している。また、今後は、研究開発での増強を図ることになる」と述べた。