ニュース

レノボ、産学金連携の中核拠点「関西 AI Hub」を創設 AI活用を“実証”から“事業成長”へ

 レノボ・ジャパン合同会社は22日、AI技術の社会実装を加速するために、関西の産学金連携による中核拠点「Kansai AI Hub(関西 AI Hub)」を創設したと発表した。

関西 AI Hubのロゴマーク

 大学・研究機関が生み出す先端AI技術と産業界におけるAI活用ニーズ、そして金融・資本市場を結びつける共創プラットフォームとして、AIユースケースの創出からPoC、社会実装、事業化、資金調達までを一気通貫で支援し、日本発AIイノベーションの創出を目指す。

関西発、AIの社会実装を加速する共創エコシステム

 レノボ・ジャパンとともにレノボ・ジャパングループを構成するレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社の代表取締役社長、張磊氏は、レノボがこの取り組みに参加した理由を次のように説明した。

 「今、毎日、AIに関するニュースが報じられている。我々もこの1年、さまざまな現場で顧客と話し、多くの案件を進めてきたが、いくつかの課題が明らかになっている。今回、同じようにAIに関する課題を感じている皆さまと共に、関西発で、AIの社会実装を加速する共創エコシステムを開設することとなった」。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社 代表取締役社長の張磊氏

 関西地域は製造業、医療・ヘルスケア産業の集積地で、多くの大学・研究機関が存在し、大阪取引所をはじめとする資本市場機能を持っていることから、複数のオープンイノベーション施設が集積している。レノボはイノベーション施設内にスペースを設け、さらにバーチャルネットワーク内での協業ができる体制を作ることで、AI活用をサポートしていく考えだ。

関西 AI Hubの参加組織と支援体制

 関西 AI Hubには、具体的には下記の組織が参加する。

・金融・資本市場:日本取引所グループ、大阪取引所
・政府・経済団体:関西経済連合会
・大学・研究機関:未来医療推進機構、関西主要大学、AI研究機関
・企業・スタートアップ:関西企業、AIスタートアップ
・AI開発支援・テクノロジーパートナー:AI inside、レノボ・ジャパン、インテル

 今回の取り組みをスタートする発端となったという日本取引所グループ 代表執行役グループCOO兼東京証券取引所(東証) 代表取締役社長の横山隆介氏は、「今回の取り組みは私が発案した。東京証券取引所の代表になる前、北浜にある大阪取引所の社長を3年やっていた。大阪取引所では、スタートアップ育成支援にも非常に力を入れており、2023年からは大阪スタートアップ成長支援塾なども実施している。東証の社長としては、スタートアップの皆さまが成長し、最終的にIPOしていただきたいと思うが、もう少し広い視点でとらえると、IPOだけでなく、広く成長していただければとも考える。成長する大阪・関西企業が増えていけば、最終的には日本の資本市場の成長にもつながっていくのではないか」と、今回の取り組みを始めた背景を説明した。

株式会社日本取引所グループ 代表執行役グループCOO兼株式会社東京証券取引所 代表取締役社長の横山隆介氏

 レノボでは、未来医療の開発拠点であるNakanoshima Qross(大阪市北区中之島)内に設けられた、医療や創薬関連企業などを中心としたスタートアップインキュベーションセンターと、イノベーション活動の拠点であるJAM BASE(大阪市北区大深町)に人員を配置し、スペースを設ける。

 ここで、入居者や来場者からの質問や相談を受けていくと共に、日本全国に展開する複数のデータセンターおよびAI検証拠点を活用し、広域かつ柔軟なAIインフラを提供していく。

Nakanoshima Qross外観
スタートアップインキュベーションセンターの中に設けられたレノボのスペース

 GPUサービス、集積型データセンターを基盤とすることで、スケーラブルで高性能なAI環境を実現。関西 AI Hubに参加するスタートアップ企業などを、AIソリューションの開発・検証から事業化までを一貫して推進する考えだ。

Lenovoが支えるAI実装エコシステム

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの張社長は、多くの企業からAIに関連する相談を受ける内に直面した課題として、次の6つを挙げる。

1)AI活用の主体がIT部門から事業部門へ
求められる内容が技術導入だけでなく、売上向上、業務効率化、顧客体験改善などへ変化
2)実際のビジネス課題に基づくユースケース不足
「AIを使うこと」が目的になり、解決すべき課題や投資対効果が明確でないケースも
3)初期投資が大きく、ROIが見えにくい
GPU、データ、開発人材、検証環境などにコストがかかる一方、成果が出るまで時間を要する
4)PoCから本番導入・全社展開に進めない
実証実験には成功しても、システム連携、品質、セキュリティ、運用体制の壁により、スケールできない
5)新しいAIエコシステムの構築
大企業、AIスタートアップ、大学、SI企業、行政、投資家など、異なる組織を連携させる仕組みが必要
6)技術力はあっても、販売・事業化する仕組みが弱い
優れたAI技術や人材があっても、顧客開拓、商品化、販売チャネル、資金調達の仕組みがなければ事業として成長しない

AI時代に企業が直面する6つの課題

 「日本は実証実験王国と言われている。この状況を変え、実業務でのAI利用を増やしていきたい。また、AIスタートアップの方々に会って話すと、技術力はすごくある。ただ、その事業をどう続けていくのか、どう事業化するかが大きな課題だ。実際にスタートアップ企業の経営者と面談し、『営業組織は何人体制か』と聞くと、『私1人です』と社長自身が手を挙げる。こういう会社を支援し、事業として成長するサポートをしたいというのも今回の仕組みの狙いの1つである」(レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 張社長)。

 関西 AI Hubでは、レノボとインテルが技術面の支援を行うほか、行政・資本市場、大学・研究機関、IT企業・SIerなどが連携する仕組みとなることから、レノボがAIにまつわる課題として挙げた内容を改善することにつなげる。ユースケース創出から事業展開まで一気通貫で支援する体制により、PoCで終わらせないAI実装を加速するエンドツーエンドモデルとしていく。

AI活用を「実証」から「事業成長」へ

 なお、7月22日には、Nakanoshima Qrossで開設記念セレモニーが開催された。

 セレモニーには、米Lenovo VicePresident,CMO,Infrastructure Solution Group.Flynn Maloy氏、レノボ・ジャパンの檜山太郎代表取締役社長も参加した。

関西AI Hub開設のテープカット
記念セレモニー参加者の集合写真
レノボ・ジャパン合同会社の代表取締役社長、檜山太郎氏

 Maloy氏は、自身が関西で教師として働いた経験を紹介したほか、「多くの人は、今でもレノボは主にハードウェア、特にPCのメーカーだと考えているかもしれない。しかし、現在のレノボは、ポケットからクラウドまで強力で利用しやすい、責任あるAIを提供している。また、AIスタートアップをはじめ各国の企業のイノベーションに力を与えるために多大な投資を行っている」と前置き。

 その上で、「関西AI Hubは、この世界的な取り組みにおいて極めて重要な役割を担っている。関西において、このような試みをスタートできて本当にうれしい。関西は昔から商業の盛んな地域であり、学術面においても技術革新の源でもあり続けてきた場所。関西のAIスタートアップや多くの企業、大学、研究機関が協力し、破壊的なイノベーションを起こす発射台を作っている。ここからどのようなブレイクスルーが生まれるのか、非常に楽しみにしている」とのコメントを述べた。

米Lenovo VicePresident,CMO,Infrastructure Solution Group.Flynn Maloy氏

 このほか会場では、来場者同士の交流を促すネットワーキングの時間も設けられたほか、課題認識を深めるためのパネルディスカッションなども開催された。