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富士通、ファナック、安川電機、川崎重工業がフィジカルAI分野での事業検討に合意――NVIDIA技術を活用し自律制御基盤を開発へ

 富士通株式会社は16日、ファナック株式会社、株式会社安川電機、川崎重工業株式会社とともに、フィジカルAI分野における事業検討を開始することで合意した。実現に向けては、富士通とNVIDIAの技術を活用し、ロボット業務とアプリケーションを垂直統合したプラットフォームの開発を推進することになる。

 富士通によると、デジタルとフィジカルをつないでソブリン性を確保した協調制御基盤の開発を推進し、製造、物流、ヘルスケアを含むさまざまな産業分野におけるフィジカルAIの社会実装を加速。人とロボットが共存および協働する社会の実現や、日本の産業競争力の強化を図るという。

 そのために、賛同する企業や研究機関に対して、Fujitsu Kozuchi Physical OSをオープンなプラットフォームとして提供。フィジカルAIを社会のあらゆる領域に拡大し、社会全体の実装を目指す。

 具体的には、各社が持つAIやロボティクス、制御、シミュレーション、データ分析などの先端技術を理解したフィジカルAIの共通基盤と位置づける「ソフトウェアプラットフォーム」や「ハードウェアインターフェイス」を開発。これにより、さまざまなロボットや設備間での連携を容易にし、より高度な自律制御システムの実現を目指す。

 一方で、ロボットの適用領域の広がりや、それによる他設備との連携が拡大することで、サイバー攻撃や、システム全体のダウンおよび誤作動、機密情報の漏えいなどのリスクの高まりが懸念される。それに対応するために、富士通では、ソブリン性を確保した協調制御基盤を開発するという。同基盤は、賛同企業や研究機関などとともに、オープンプラットフォームとして提供し、産業界全体でフィジカルAIの実装を推進する。

 業務アプリケーションとしては、製造、物流、ヘルスケアの3領域を想定。「工場向けソリューション」では、生産変動要因と製造現場状況を加味した工場の生産活動全体の計画最適化と現場適応の自律化により、製造業でのさらなる生産性向上とフレキシビリティを実現。「小売・物流向けソリューション」では、リアルタイムでの販売および在庫状況を加味した物流計画をもとに、搬送業務を自動化し、物流の省人化や自動化を実現する。「ヘルスケア向けソリューション」では、病院内業務システムからの指示を起点に最適化した計画のもと、ロボットが自律的にタスクを実行し、ロボットによる医薬品や検体の院内搬送の自動化、外来患者の受付、案内サービスを実現するという。

 2026年9月末までに、富士通のAIサーバーを生産する石川県かほく市の笠島工場に実装する。この成果を基に、2026年12月までに、ファナック、安川電機、川崎重工業の3社に提供し、ロボットと業務アプリケーションの垂直統合を図る。これをバージョン1とし、各社からのフィードバックをもとに、2027年にはバージョン2を開発して市場にリリースする計画だ。

 富士通では、これを成長型プラットフォームと位置づけており、工場や物流、ヘルスケアでの実績をもとに、今後はほかの産業分野にも対象を広げていくという。

 富士通の時田隆仁社長は、「今回、参画している企業は、自社のビジネス領域だけでなく、産業全体や世界の持続的発展を自分ごととしてとらえ、経営判断を行うという価値観を共有している。ロボットは、工場や物流のほか、医療や介護などのヘルスケアなどでも本格的な活用が期待されている。ロボットが人と同じ空間で、協働し、協調していくことが実装の大前提となる。富士通がリード役となり、それぞれの業務アプリケーションと、ロボット制御技術をシームレスにつなぐ協調制御を活用。さらに、タスク計画基盤を、NVIDIAの技術を取り込みながら構築する。これにより、業務プロセス全体を最適化した計画に基づいて、ロボットが自律的に動くようになる。各現場での圧倒的な生産性向上が可能になる」と述べた。

 また、「今回の5社での取り組みは、ロボットの社会実装の本格化を牽引する重要な一歩になる。産業界に新たな可能性をもたらすと確信している。人とロボットが、安心、安全に協働する豊かな社会の実現に貢献する」と抱負を語った。

富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏

 ファナックの山口賢治社長は、「製造業をはじめとした産業を取り巻く環境は大きく変化しており、人手不足の深刻化、多品種少量生産への対応、さらには現場の自動化、高度化に対するニーズがこれまで以上に高まっている。これらの課題に対して、ロボットとAIを組み合わせたフィジカルAIの社会実装は重要な役割を果たす。富士通の国産AIと、NVIDIAの先進的なAI技術に、ファナックのロボット技術を組み合わせることで、現場において、柔軟で誰もが使いやすいAIシステムの実現を目指す。ROS2やPythonなどのオープンプラットフォーム対応の技術を活用し、より多くの顧客がAIロボットを導入しやすい環境づくりを進め、製造現場などの課題の解決につなげていく。人とロボットが共存して働く社会の実現は、産業の競争力強化だけでなく、持続可能な社会の実現につながる」と述べた。

ファナック 代表取締役社長の山口賢治氏

 また、安川電機の小川昌寛副会長は、「安川電機は、2017年に、自動化技術とデータ活用を融合したi3-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)を打ち出した。AIやGPUなどの技術進化により、データ活用による自動化が進展し、データ活用は、課題解決だけでなく、新たな気づきと革新へとつながっている。安川電機は、NVIDIAのGPUを搭載した自律型AIロボットであるMOTOMAN NEXTを市場に投入している。さらにROS2対応を進め、ロボットをオープンなプラットフォームとして活用することを目指している。こだわっているのは『自律』である。動きと知恵を持ち、コトを成す。これがまさに進み始めた。社会貢献を力強く推進するには、協調と同調が必要であるが、今回は、同じベクトルを持った企業が集まった。今後、フィジカルAIの社会実装に取り組む」とした。

安川電機 副会長執行役員の小川昌寛氏

 川崎重工業の橋本康彦社長は、「ロボットの可能性が大きく飛躍する瞬間である」と切り出し、「川崎重工は、60年近く産業用ロボットをやってきたが、10年以上前からはヘルスケア分野にも取り組んできた。ヘルスケアは、ロボットが届きにくかった領域だったが、フィジカルAIが加わることで、大きな可能性が生まれる。富士通が持つ電子カルテやIT技術と、川崎重工が持つ手術支援ロボットや、看護師や介護する人をサポートするロボットを組み合わせて、病院に対するワンストップソリューションを提供できる。フィジカルAIは、医療だけでなく、産業界が大きく変わる節目である。モノづくりを大事にしてきた日本にとっては、大きな力になる。フィジカルAIやロボットが、これから輝く時代を迎えることを確信している」とした。

川崎重工業 代表取締役社長執行役員の橋本康彦氏

NVIDIAの技術を全面活用、ソブリン協調制御を高度化

 なお、今回のフィジカルAIの事業検討のスキームにおいては、NVIDIAの技術を活用する。

 富士通が主体となり、ロボット産業界の各社とともに事業検討を進めながら、NVIDIAのフィジカル AIプラットフォームを構成する「AI」、「ワールドモデル」、「シミュレーション」、「ロボティクス」の技術を活用することで、ソブリン性を確保した協調制御基盤の高度化と、産業分野におけるフィジカルAIの社会実装を加速するという。

 ここでは、NVIDIA Cosmos世界基盤モデルを、富士通の社会物理シミュレーションの構成要素として活用。現場全体の理解や予測能力を強化する。さらに、製造、物流、ヘルスケアなどの多様な現場におけるフィジカルAIソリューションの開発と社会実装を加速する。

 また、NVIDIA Omniverse、NVIDIA IsaacオープンプラットフォームおよびNewton物理エンジンなどのライブラリを活用し、Sim2Realおよびロボット学習や検証、最適化を効率化する。

 NVIDIA 創業者/CEOのジェンスン・フアン氏は、「日本は、現代の産業革命を定義づけした国である。匠、カイゼン、カンバン、現場という言葉が生まれたことでも、それが証明されている。Made in Japanは、最高品質と最高精度の代名詞である。日本が基準を作っている」と評価。

 「例えば、ファナックのサーボモーター、安川電機のエンコーダー、川崎重工のロボットアームは、高い精度を誇り、耐久性を持つ。メカトロニクス、エレクトロニクス、コントロール技術では卓越したものを持っている」と話す。

 その上で、「次なる産業革命の基盤となるフィジカルAIが生まれている。NVIDIAは、それを実現するためのフルスタックを構築している。NVIDIA Cosmos、NVIDIA Omniverse、NVIDIA Isaac、そして、NewtonやJetsonを活用することで、日本のメカトロニクス技術とNVIDIAのフィジカルAIを融合させ、産業オートメーションの新時代を切り拓く。富士通、ファナック、安川電機、川崎重工といったパートナー企業とともに、壮大な旅路を歩んでいくことになる。ロボット工学とインテリジェントマニュファクチャリングの新たなフロンティアを、ともに切り拓いていく」とコメントした。

NVIDIA 創業者/CEOのジェンスン・フアン氏

 さらに、「ロボットがスマート化することで、大企業だけでなく、日本のモノづくりを支える中小規模の工場にも導入しやすくなる。何世代にもわたって職人技を継承してきた家族経営の工場にとっても、熟練の職人が、自身の技を次世代へと継承できるようになる。フィジカルAIの力で、日本のモノづくりは次の世紀へと受け継がれていくことになる」とも述べている。

(左から)NVIDIA 創業者/CEOのジェンスン・フアン氏、富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏、ファナック 代表取締役社長の山口賢治氏、安川電機 副会長執行役員の小川昌寛氏、川崎重工業 代表取締役社長執行役員の橋本康彦氏。会見が始まる前に、5人でとんかつを食べながら、世界や日本の情勢について議論。この5人ならば、社会課題を解決できるという話をしたという