ニュース

Wasabi、クラウドストレージに関する年次グローバル調査の日本版を発表 調査結果のポイントや日本市場での導入トレンドなど解説

 Wasabi Technologies Japan合同会社(Wasabi)は22日、クラウドストレージ市場に関する同社独自の年次グローバル調査「2026年 Wasabi Global Cloud Storage Index」の日本版を発表した。同日には、調査結果のポイントおよび日本市場におけるクラウドストレージの導入トレンドや最新の導入事例について記者説明会を開催した。

 Vanson Bourne社との共同調査である「Wasabi Global Cloud Storage Index」は、世界中の様々な企業に所属するIT担当者を対象に行われる年次調査。過去3回実施され、サービスの導入傾向、予算や利用における主な課題、ハイパースケーラーの料金体系がストレージ使用コストに与える影響など、重要な事実を明らかにしてきた。4回目となる今回は、1700人(日本での調査対象者は250人)のIT担当者を対象に、AIのユースケース/ワークロードにおけるクラウドストレージの活用方法などにも範囲を広げて調査を実施している。

 米Wasabi Technologies 戦略および市場インテリジェンス担当ディレクターのアンドリュー・スミス氏は、「日本の調査では、参加者を適切に選定および審査するため、すべての回答者について、所属組織のクラウドストレージ購入プロセスに何らかの形で関与していることを条件とした。実際に、日本の回答者250人のうち80%が最終意思決定者で占められている。また、回答者には、クラウドおよびオンプレミス環境を含む総ストレージ容量の推定も依頼しており、日本企業のストレージ容量は平均1.6ペタバイトに達した」と、日本版の調査概要を説明した。

米Wasabi Technologies 戦略および市場インテリジェンス担当ディレクターのアンドリュー・スミス氏

 調査結果の主なポイントとしては、まずセキュリティ対策の現状について、日本企業の半数以上(59%)が、「サイバー攻撃後もデータを改ざんされることなく、運用可能な状態で維持できる」と回答した。一方で、42%の日本企業がサイバー攻撃によってパブリッククラウド上のデータにアクセスできなくなる状態を経験していた。また、46%は、利用しているパブリッククラウドベンダーがサイバー攻撃対策に必要なツールや機能を提供していないと考えていることがわかった。

「2026年 Wasabi Global Cloud Storage Index」日本版の調査結果

 スミス氏は、「ランサムウェア対策の強化には、新旧のセキュリティ機能の融合が不可欠となる。特に、イミュータブル機能(オブジェクトロック)はクラウドストレージの標準仕様であるべきだが、日本では依然として多くの組織で活用が遅れている。調査では、今後パブリッククラウド内のデータ保護で最も重要になる機能として、『高度なレプリケーション機能』、『標準装備の個人識別情報(PII)検出およびコンプライアンス機能』、『シングルサインオン(SSO)統合およびパスワード保護』が上位に挙がっていた」と解説した。

 クラウドストレージの購買状況については、日本のユーザーによる支出の51%はストレージ容量ではなく、データ利用に関連するFee(APIアクセス、下り転送料など)に充てられており、「残念ながら、この割合は過去3年間変わっていない」という。また、2025年にクラウドストレージへの支出が予算を超過したと49%が回答。予算超過は、ストレージの使用、データ総量、クラウドアプリケーション移行の拡大によって引き起こされ、さらにデータ使用にかかる従量課金が拍車をかけている。ほぼすべての回答者(93%)が、予算超過につながった要因の1つにFeeに関連した理由を挙げており、依然として「データ利用にかかるFee」が課題になっていることが浮き彫りになった。

「2026年 Wasabi Global Cloud Storage Index」日本版の調査結果

 AIワークロードに関する調査結果では、「日本企業のほぼ全員(99%)が、自社組織にはAI向けのインフラ予算が設定されていると回答。そして、64%が今後1年間でAIプロジェクト向けのインフラ予算が増加する見込みであると回答し、AIを支えるインフラ投資は減速していないことがわかった。また、AI予算の66%が、AIアプリケーションを実行するためのデータおよび処理能力に割り当てられていることも明らかになった」としている。

「2026年 Wasabi Global Cloud Storage Index」日本版の調査結果

 AIプロジェクトやソリューションの導入における最大の課題としては、日本企業の48%が「データストレージの問題(コストなど)」を挙げた。さらに、現在、自社のAIプロジェクトは「赤字」であると31%が回答していた。これについてスミス氏は、「赤字の割合は、今後12か月でわずか15%まで低下すると見込まれている。日本企業では、AIプロジェクトがプラスのROI(投資利益率)になるという期待が高まっており、長期的にはAIプロジェクトの損失は許容されなくなると予想している」との見解を示した。

 次に、Wasabi Technologies Japan 取締役社長の脇本亜紀氏が、日本市場におけるクラウドストレージの導入トレンドを説明した。「日本市場では、ランサムウェア対策としてバックアップでの導入が圧倒的となっている。そのため、当社もパートナー企業に向けて、今年はバックアップにフォーカスした提案を進めるようお願いしている。この他には、ファイルサーバー運用やAI、データレイクといったユースケースも増えてきている」という。

Wasabi Technologies Japan 取締役社長の脇本亜紀氏

 バックアップのニーズが拡大している背景としては、2026年度下期に運用開始が予定されている「サプライチェーン強化のためのセキュリティ対策評価制度(SCS評価制度)」を挙げ、「SCS評価制度の星3取得には、遠隔地バックアップの実施が必須となっており、これを安価かつ容易に実現する方法としてクラウドストレージが推奨されている。また、バックアップ対象ごとにリストア手順書を整備する必要があり、当社のクラウドストレージはリストアにコストがかからないことも追い風になると考えている。さらに、ランサムウェア対策として、3-2-1ルールへの対応に加えイミュータビリティ、マルチユーザー承認、Covert Copy(エアギャップ)などセキュリティ機能の充実を図っている」と、同社にとって大きなビジネスチャンスであることを強調した。

Wasabiクラウドストレージのランサムウェア対策

 最新の導入事例では、上智学院とFOOD&LIFE COMPANIESのユースケースを紹介した。上智学院では、全職員が利用する50数TBにおよぶ基幹ファイルサーバーを刷新。広域大災害やランサムウェア攻撃のリスクからデータを保護するために、SINET接続可能なWasabi Hot Cloud Storageの遠隔拠点に移行した。導入の決め手について脇本氏は、「当社のクラウドストレージは固定料金制度を採用しており、年度の途中で追加予算が確保しにくい学校法人に最適だった」としている。導入効果としては、「遠隔地バックアップという業務が増えたにも関わらず運用負荷が増えていない」、「オンプレミスと異なりメンテナンス工数・コストが不要になった」ことを挙げている。

 「スシロー」を展開しているFOOD&LIFE COMPANIESは、AWS S3上で運用していたファイルサーバーをWasabi Cloud NASに移行した。同社では、デジタル化推進にともなうデータの爆発的増加によって、ファイルサーバーのストレージ容量が毎年20~30%増加。このため、人による定期的なストレージ容量管理が必要となっていた。AWS S3からWasabi Cloud NASへファイルサーバーを移行したことで、ストレージ容量の追加と容量管理から解放。さらに、Snowflakeとの連携で、データレイク領域にも展開を拡大しているという。