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クラウドストレージのコストは想定の2倍――、Wasabiの調査で明らかに
2025年3月13日 06:15
Wasabi Technologies Japan合同会社は12日、クラウドストレージ市場に関する年次調査「2025年Wasabi Global Cloud Storage Index」の結果を発表した。同調査にて、クラウドストレージのコストが想定以上にかかることが判明した。
今回で3回目となる同調査は、クラウドオブジェクトストレージサービス購入の意思決定プロセスに関与する1600人を対象に、オンラインで実施したもの。調査対象国は、英国、フランス、ドイツ、オランダ、イタリア、日本、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、米国、カナダで、アジアパシフィック地域の回答者は525人、うち日本の回答者は200人だった。
調査にて明らかになったのは、パブリッククラウドストレージの請求総額のうち、ストレージ容量に対する月額料金は51%という結果だ。残りの49%は、ストレージの運用やデータの取り出し、転送、分析などにかかる手数料だという。Wasabi Technologies Japan 取締役社長の脇本亜紀氏は、この結果から「ストレージのコストは、当初想定した容量課金の約2倍かかることになる」と述べている。
具体的な請求内容を調査したところ、最もコストに影響を与えていたのはネットワーク料金だった(グローバルで47%、日本で57%)。ネットワーク料金には、リージョン間のデータ転送料金やマルチリージョンアクセスポイントの料金が含まれる。次に大きかったコストはデータ管理と分析で39%、次いでデータアクセスおよび取得リクエストで36%だった。このことから脇本氏は、「運用の効率化やデータのより良い利用に対し、課金されているのが実情だ」としている。
予算超過は毎年課題として認識されており、アジアパシフィック地域では、パブリッククラウドストレージに対する予算がオーバーしたとの回答が63%にのぼっている。その要因のトップに挙げられたのは、やはり高額な運用料金で、アジアパシフィック地域では45%、日本では60%もの回答者が予算超過の要因だとした。
このように価格への不満はあるものの、全体としてクラウドオブジェクトストレージに対する満足度は非常に高く、アジアパシフィック地域では「とても満足」が49%、「満足」が43%で、合計92%が満足と回答している。完全に満足していない理由として挙げられたのは、やはり価格設定が1位で40%だった。
調査では、セキュリティに関する質問も用意。セキュリティ機能のひとつであるオブジェクトロックの使用について聞いたところ、アジアパシフィック地域における現時点での利用率は46%にとどまった。オブジェクトロック機能を使うと、データの参照のみが可能となり、上書きはできない状態になるため、「ランサムウェアによる暗号化のような事態も防ぐことが可能で、すべてのユーザーに使ってもらいたい」と、脇本氏はその重要性を強調する。ただ、現時点での利用率は半数以下ではあるものの、「1年以内に導入する予定」との回答も44%にのぼっており、その有効性は理解が進んでいると考えられる。
次に脇本氏は、クラウドストレージを活用したアクティブアーカイブの調査について解説。多くの企業が、低コストのアーカイブ層に保存したデータにアクセスすることはないと考えているものの、現実にはアジアパシフィック地域の99%の企業がこの領域に保存したデータに想定以上の頻度でアクセスしており、アクセス頻度が毎月との回答が37%、毎週との回答が51%にものぼっている。
「当初はアクセス頻度が低いと考えていても、コンプライアンスや悪意のある攻撃などの外部要因によってアーカイブデータにアクセスするケースは多い。容量課金コストは安価でも、この階層のデータへのアクセスには料金が課されることがあるほか、データ取得にも予想外の時間がかかり、業務への悪影響を訴える企業も存在する」と脇本氏は述べ、データ保管における階層設計の困難さを指摘した。
こうした状況に対し脇本氏は、「Wasabi Technologiesでは、高速なレイヤー1階層のみでクラウドストレージを提供しているため、常にデータにアクセスできる。また、ストレージの運用などに手数料がかかることもない」とアピールした。