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レノボの「Neptune」水冷サーバーとニデックのCDUがタッグ、AIデータセンターの省エネ化を推進

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ合同会社と株式会社ニデックは28日、AIデータセンター向け水冷ソリューションに関する協業を発表した。水冷サーバーとCDU(Coolant Distribution Unit:冷却液分配装置)を組み合わせた提案を推進。共同プロモーションも開始する。レノボの高効率な水冷技術と、高い信頼性を誇るニデックのCDUを活用することで、データセンターの消費電力を40%削減し、環境負荷の低減にも貢献するとともに、堅牢性の高いCDUの活用により安定稼働を実現できるという。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長の張 磊氏(右)と、ニデック 執行役員 小型モータ事業本部副本部長の田中裕司氏(左)

 具体的な取り組みとして、共同検証済みのAIデータセンター向け水冷ソリューションを共同提案。両社の技術を組み合わせることで実現する高い冷却効率、電力効率、運用性能を訴求し、新規顧客開拓を進める。

高性能・高効率な水冷AIサーバーソリューションを共同提案

 また、レノボの水冷サーバー「Neptune」の認知度向上と需要喚起を目的としたマーケティング活動として、「Neptune集中キャンペーン」を展開する。

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長の張 磊氏は、「レノボでは、IBMが開発した水冷技術をベースに、現在、第6世代のNeptune水冷サーバーと、縦置きが可能な第7世代を発表している。最大100%の除熱ができ、最大40%の消費電力削減を実現する。これは、最先端の水冷技術であると自負している」と前置き。

 「水冷ソリューションを提供する上で重要になるのが、エコシステムである。中でもCDUは最も重要な機器であり、ニデックの技術を活用することで、日本における水冷サーバーの販売に弾みをつけられる。まずは日本で展開し、アジア太平洋地域へと拡大。将来的には協業の成果をグローバルに広げる。共同提案を通じてAIデータセンターの課題解決につなげたい」と述べた。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ 代表取締役社長の張 磊氏
持続可能なエコシステムの重要性

 また、ニデック 執行役員 小型モータ事業本部副本部長の田中裕司氏は、「ニデックでは、AI関連市場を注力領域のひとつに掲げている。サーバーメーカーであるレノボからの要求を取り入れ、一緒に検証を行うことで、新たな水冷ソリューションの創出につなげたい。また、これまでのCDUビジネスは北米を中心とした展開だったが、今回の協業をきっかけに、日本におけるCDUビジネス拡大の足掛かりにしたい。データセンターのエネルギー課題を克服し、持続可能な社会の実現に貢献したい」と述べた。

ニデック 執行役員 小型モータ事業本部副本部長の田中裕司氏

 今回の協業は、具体的な導入案件が発生したことが背景にあるという。

 レノボが提供している第6世代および第7世代のNeptuneは、AIサーバーの安定的な稼働を支える直接液冷方式を採用。45℃の温水でも冷却できるほか、グリコールベースの冷却液ではなく純水を使用するため、CDUへの負荷が下がり、電力コストの削減にもつながるという。

第6世代のNeptune水冷サーバー

 また、CPUやGPUの部分冷却だけでなく、メモリや電源ユニットなどのすべての熱源を冷却できる「100%水冷サーバー」と位置づけており、これにより、電力消費が大きい冷却ファンを排除でき、10~20%の電力削減を図ることができる。

温水冷却技術の特徴

 さらに、サーバールーム全体への熱放出が削減されるため、冷房システムをなくすか削減することができ、ここでも消費電力の削減につながるという。

液体冷却システムがPUE削減に非常に有効

 一方、ニデックでは、水冷ソリューションとして、In Rack型CDUやIn Row型の大型CDUのほか、GPUを直接冷やすためのコールドプレート、配管の接続が容易な水冷用クイックディスコネクトを製品化している。

ニデックのIn Rack型CDU
GPUを直接冷やすためのコールドプレート
配管の接続が容易な水冷用クイックディスコネクト

 今回の協業では、第1弾としてIn Rack型CDUを活用。4Uラックに搭載し、B200およびNVL32向けに高出力の冷却能力を実現した。また、冗長設計による高信頼性を実現しているのが特徴だ。

協業の第1弾製品

 ニデックの田中執行役員は、「ニデックのCDUは、HDDスピンドルモーター事業で培った精密加工技術などを生かして、高い信頼性と冷却性能を実現している。また、垂直統合生産システムにより、速く、安く、大量出荷ができる。昨年から今年夏にかけて、7000台のCDUを出荷しており、世界トップクラスの実績である」としたほか、「冷却に対するニーズはますます高まり、AIサーバーは水冷が前提となる。それに向けてラインアップを増やすとともに、レノボとともに、高性能・高効率な水冷AIサーバーソリューションを共同提案し、他社が出させない領域にもアプローチをしていく」と述べた。

 市場では、CDUに障害が発生しやすいことや、メンテナンス性に課題があることが指摘されており、さらに内部冗長性の実現は難しい技術とされてきた。ニデックでは、こうした課題を解決する冗長設計の採用により、堅牢性を実現しているという。

ニデック製品の特徴

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ プロフェッショナルサービス本部の野上友和本部長は、企業への導入が広がることで、データセンターのニーズがパフォーマンス重視から冗長性や堅牢性重視へと変化していることを指摘しながら、「電力使用量を40%削減できるレノボのNeptune水冷技術と、その効率性を揺るぎない堅牢性で支えるニデックのCDUを組み合わせることで、両立が困難とされていた電力削減と安定性の2つを提供できる。わずかな漏水も許されない高度な安全性と信頼性を実現しているほか、水が流れたままでもパーツを交換できるスワッパブル機能を持つ。水冷システムの経験がないIT管理者の運用負担を軽減できるなど、メンテナンス性においても利点がある。日本品質を取り入れることで絶対的な安定性を提供し、水冷ソリューションを次のレベルに引き上げる。日本のデータセンターの未来を変えることにつながる」とした。

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ プロフェッショナルサービス本部本部長の野上友和氏

 調査によると、企業における2025年のAI予算は前年比2.8倍に増加しており、生成AIの導入率は42%に増加。生成AIへの投資が加速し、業務効率向上への期待が高まる一方、データセンターの電力消費は世界電力使用の3%を占め、日本における電力需要は、データセンターの設置により、2030年までに3倍に増加すると予測されている。電力消費が大きな課題となっており、中でも、データセンターの電力消費の約40%を冷却が占めているとの試算もある。

データセンターの設置により、日本における電力需要は2030年までに3倍に増加すると予測されているという

 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの張社長は、「レノボの調査によると、日本のCIOは、優先事項のひとつに『サステナビリティの向上』を挙げており、グローバルとは異なる傾向がある。日本では電気料金が高いという背景もあり、水冷ソリューションに対する関心が高い。第6世代Neptuneに対する引き合いも多く、今回の協業は、日本の企業が求めるニーズに対応できる」と述べた。

 なお、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズでは、インテル Xeon 6530Pプロセッサーを搭載したThinkSystem SR630 V4を3台と、ニデックのCDUに加えて、導入計画やロードマップの策定などを支援するAIアドバイザリーサービスを組み合わせた水冷ソリューションを、先着10セット限定で、特別価格で提供する。Lenovo TruScaleによる月額料金で58万4000円としており、通常価格の83万2000円に対して、約30%引きとなっている。

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