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レノボ・ジャパン、2025年度は増大するPC需要に応えつつエッジやAI領域に積極進出
2025年5月28日 06:15
レノボ・ジャパン合同会社は27日、2025/2026会計年度の事業戦略説明会を開催。注力領域として、1)GIGAスクール構想第二期、Windows 10サポート終了と管理のモダナイズなど、顕在化するニーズへの対応、2)クライアントデバイスでのSLM活用、エッジ~プライベートクラウドでのAIワークロード増加など、中長期のコンピューティングパワーの活用――を挙げた。
代表取締役社長の檜山太郎氏は、「ポケットからデータセンターまで幅広いラインアップを持ち、新たなイノベーションにつながる提案ができること、サービスなど非PC領域とセットで提供できていることで、法人のお客様を全面で支援していく」とアピールしている。
“少し舵取りを慎重にやらなければいけない”理由とは?
レノボ・ジャパンの檜山社長は、2025年度の見通しとして「メーカーとしては、少し舵取りを慎重にやらなければいけない1年」と話した。
その理由の1つ目は、2025年10月14日でWindows 10のサポートが終了するほか、GIGAスクール構想第二期にあたることから、「数量的にものすごく大きなパソコン需要が一気に来るタイミング」となることを挙げた。
「日本のパソコンマーケットは、世界中から見るとものすぐ安定したマーケットとなっており、毎年、1200万台のパソコンがユーザーのところに届いている。1200万台のうち、コンシューマユーザーが400万台、法人向けが800万台。そこに大きな数量のパソコンが必要になるEOS(エンド・オブ・サポート)とGIGAスクールという需要があり、それが10月時点で完了し、そこから後は例年通りの市場に戻ることになる。つまり、2025年度の最初の6カ月はユーザーのニーズを聞きながら、大量のパソコンを提供できるよう活動していくことが必要になり、10月末以降はどのようにユーザーニーズを深めていくかが必要になる。当然ながら、10月14日前からオーバーラップしてユーザーニーズ深掘りのための活動も必要で、各パソコンメーカーはAIへの取り組みなど、技術的な取り組みを進める必要がある」。
ユーザーニーズに合致した製品として、コワーキングスペース活用など社外でのテレワーク需要に合致した軽量ノートPC「ThinkPad X13 Gen6」、IT部門のニーズに応えたハイブリッドワークのための常時接続モデル「Lenovo ConnectIN」、GIGAスクール構想第二期向けの「Lenovo GIGA School Edition」などを提供していく。
また、製品だけでなく、法人でパソコンを導入する際のIT部門支援として、パソコン導入の際の設定からデプロイ、管理までをワンストップで支援する「Lenovo Services」を提供し、導入前の機種選定をサポートするワークショップから個社ニーズを最適化する伴走の“深さ”と、法人パソコン全体に関わることができる“広さ”を強みとしてアピールする。
こうしたサービス事業をさらに拡大していくために、企業がイノベーション実践を行う際に利用することを想定した柔軟な従量課金モデル「Lenovo TruScale」を提供している。このサービスを利用して、日揮ホールディングスではデジタル・ワークプレイスソリューションとDaaSを採用し、国内の6000台のパソコンを刷新した。また島根銀行では、Lenovo TruScale IaaSを採用し、“所有しない”インフラ運用モデルに移行したことで、資産管理の煩雑さから解放されたという。
「具体名は明らかにできないが、日本の自動車メーカーでは製造技術とプラットフォームを、我々のTruScale上で活用していただている。インフラに近い事業領域に我々の製品が、デバイスだけではなく、サービス、ソリューションと一緒に導入される事例が出てきている。おそらく、今後AIが入ってくると、こうした事例はさらに加速して増えていくのではないかと考えている」(檜山社長)。
サービス、ソリューションといったPC以外の事業は順調に拡大し、レノボグループの2024年/2025年の売上では、パソコン以外の事業の売上が47%と拡大している。それをさらに拡大する可能性があるのがAIだという。
「IDCのCIO Playbook 2025を見ると、昨年に比べAIへの投資割合が、約6割近く増えたというデータが出ている。また、AI PCについては37%が導入済み、もしくは試験導入中という結果となった」(檜山社長)。
さらに檜山社長は、生活リズムを熟知したAIの目覚ましで起きて、朝食を食べながら今日の仕事の予定を秘書のように確認するといった、自身のAI活用を例に、「AI利用には、個人で使う領域のパーソナルAI、法人として利用するエンタープライズAI、公共で利用するパブリックAIと大きく3つの領域に分かれている。この3つの領域がシームレスにつながりつつ、管理してまとめていくことは実は大変難しく、簡単に『これを使って下さい』では済ませることはできない。こうした世界を提供するために慎重に準備を進めているが、レノボはポケットからクラウドまで広範囲の製品を持っていることが強みとなる」と説明した。
なおレノボは、グループ会社のモトローラのスマートフォンから、パソコン、ワークステーション、サーバー、エッジ製品、データセンター用製品と広範囲に製品を持っていることを強みだとも説明した。AI搭載のパソコンとして、マイクロソフトのCopilot+PCのラインアップをさらに拡充していく予定だという。
「さらに、イノベーション、新しい使い方をどんどん提供していかないと、ユーザーの使い方が多様化しているので、そこに追随することができなくなる。AIに関しても、電量消費量の増大、パワーが必要になるため、熱処理技術や使い勝手、パフォーマンスも必要となる」(檜山社長)として、SGS High Performance AI PC Certificationを受けた「ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Edition」、カメラ画質にこだわった「ThinkPad X9 14 Gen 1 Aura Edition」、カメラアンダーディスプレイ設計で画面占有率98%を実現した「Yoga Slim 9i Gen 10」、会議にAIを取り入れたNPU 搭載会議室専用コンピューティングデバイス「ThinkSmart Core Gen 2」など、新しい製品を提供していくとした。
持続可能なエンタープライズAIのためのハイブリッド・インフラストラクチャとしては、クライアント、エッジ、クラウドのためのデバイスを提供する。
「今後は、パーソナルデバイス、エッジの領域、クラウドの領域で、AIエージェントがしっかりと機能し、それぞれが連携し合う世界実現が必要になる。今までオフィスでやっていた作業、研究施設でやっていた作業が外にどんどんどんどん出ていくことになる。そこでハイエンドパソコンとして、ワークステーション活用も増えていくのではないか。これまでワークステーションはCADや映像作成、技術系での利用が中心だったが、AIを含めてパワーが必要な領域が増えたことで需要が増大していくと見ている。我々は日本のワークステーション領域ではトップシェアを獲得しており、この分野にも強みがあると考える。エッジ端末についても、これまでは工場内、オフィス内に設置するといった使い方が多かったが、バックパックのエッジ端末を入れて移動しながら使うといった使い方も出てきている」(檜山社長)。
負荷が大きな使い方をする端末が増加することから、水冷の需要も増大するとしており、「IBM時代から培ってきた水冷技術があり、2024年の第6世代では100%直接水冷を実現している」とこの分野でも強みがあるとアピールした。
なお社内でのAI活用については、故障した製品の修理を行っている群馬事業場にAIを導入し、「従来はベテラン技術者が紙の故障申告書を見て判断していた故障箇所の診断にAIを導入し、85~90%程度の診断が出来ていることから、新人でも故障箇所を判断し作業できるようになっている」と、成果があがっていることも示している。