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「データセンターに電力が届かない」 Amazonが電力会社と対立

 生成AIがもたらした電力需要の急拡大が、テック企業と電力会社の対立まで引き起こしている。Amazon Web Services(AWS)が10月30日、オレゴン州の電力会社PacifiCorpについて苦情を州公益事業委員会に申し立てた。「契約通りの電力が供給されていない」というのが理由だ。一方で電力会社側には別の事情がある。AI時代のインフラを支える電力供給は、もはや一企業間の問題ではなく、国家戦略の領域に入りつつある。

「契約不履行」か「現実的な制約」か

 「1つのデータセンターには十分な電力が供給されず、別の1つには全く電力が届いていない。残る2拠点については、契約手続きを完了することすら拒否されている」。AWSがオレゴン州公益事業委員会に提出した申立書は、こう主張している。

 PacifiCorpは、投資家Warren Buffett氏のBerkshire Hathaway傘下でオレゴン州に本拠を置く電力会社だ。申立書でAWSは、同州内の新データセンター群への電力供給契約をPacifiCorpと結んだものの、PacifiCorpが十分な電力を供給せず「2021年にさかのぼる義務に違反している」と主張している。

 これに対してPacifiCorp側は、「Amazonの大規模な電力負荷を、既存顧客の信頼性や料金に影響を与えることなく受け入れるため、誠実に対応してきた。州法に従って、すべての顧客に公平に供給することが重要である」と地元TV局KOIN 6 Newsにコメントした。地域の既存顧客との兼ね合いで、AWSへの供給が困難な状況を示唆している。

 さらに、その背景にはPacifiCorpが直面する経営リスクもあるという。同社は、2020年と2022年の大規模山火事をめぐって訴えられており、巨額の賠償義務を負っている。このためインフラ投資が進まず、見通しが狂ったとの指摘も出ている。

 契約の詳細は公表されていないが、テック企業と電力会社の間で、こうした紛争が表面化したのは異例だ。