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AWSジャパン、製造業に伴走型支援を提供――HPCや生成AI活用事例も紹介
2025年11月14日 13:01
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWSジャパン)は13日、製造業におけるAWSの取り組みについて説明会を開催した。
AWSジャパン エンタープライズ技術本部 自動車・製造グループ 本部長の岡本京氏はまず、日本の製造業を取り巻く状況について、「人材不足と技能継承の困難に直面している。また、DXの遅れも深刻で、経営課題の特定が不十分なまま技術導入が進み、期待した効果が得られないケースが多い。さらに、脱炭素対応や経済安全保障への備え、稼ぐ力の低下など、複合的な課題がある」と語る。
こうした状況に対し、AWSが製造業に役立つ理由として岡本氏は、流通・物流・製品開発の現場から得た知見をもとに、18年にわたって製造業向けソリューションを開発していることや、製造業に特化した機能群を用意していること、10万以上のパートナーと数百万のユーザーによるユーザーコミュニティがあること、143のセキュリティ標準や認定を取得していることなどを挙げる。
その中でも、特にクラウドを活用して価値が出せる業務領域として、「プロダクトエンジニアリング、スマート製造、サプライチェーン、スマート製品&サービス、サステナビリティの5領域に注力している。また、生成AIおよび機械学習が、これらの領域を強化している」とした。
また岡本氏は、AWSが顧客のクラウドやAI活用において、伴走型支援を展開していることを強調。単なるサービス提供にとどまらず、設計支援やハンズオントレーニング、運用レビューまでを一貫してサポートし、継続的な改善を促していると述べた。
3つの国内事例を紹介
続いて岡本氏は、日本の製造業で具体的な成果が出ている事例を複数紹介した。
三菱重工業株式会社の蒸気タービン設計部門では、複雑化する流体解析により計算回数が増加。従来のオンプレミスでのHPC基盤は、ピーク時対応に向けた過剰投資で年間稼働率が約40%と非効率だったという。
この課題に対し、AWSのHPC向け仮想サーバーEC2 HPC7aを採用した結果、「オンプレミス比で最大6倍の計算速度を実現した。また、コア数を5分の1に抑えながら同等の性能を達成し、解析ソフトのライセンス費用や管理コストの削減にも貢献した」と岡本氏は説明する。
古野電気株式会社では、AWSの協力を得て小型船舶向けの位置情報サービス「イチダケ30」を開発した。サーバーレス構成により5カ月でリリースし、運用負荷を軽減できるシンプルな設計を実現。アジャイル開発の成功が社内文化の変革も促進したという。
三菱電機株式会社では、全社的なAI活用体制で業務改革を推進。AWSと連携し、最初のパイロットプロジェクトを4週間以内でリリースしている。
「AWSの最新サービスをプレビュー段階から積極的に活用し、複数のAIエージェントを組み合わせたマルチエージェント構成を構築した。公開情報の検索や社内データの分析、統合レポートの生成といった各プロセスを別々のAIエージェントが担当し、これらが連携することで、複雑な成果物を導き出している」と岡本氏。今後AI活用によるビジネスプロセスの生産性をさらに高め、業務コストの80%削減を目指すという。
岡本氏は、「AWSはクラウドの柔軟性とセキュリティ、広範なコミュニティを生かし、製造業のアジリティ向上やコスト削減、デジタル人材の育成を支援している。今後もグローバル展開や組織改革を含め、企業を後押ししていく考えだ」と述べた。




