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NRI、設定した役割や性格に基づいてAIがデータを解説する「多視点分析システム」を開発
2025年9月5日 11:00
株式会社野村総合研究所(以下、NRI)は4日、利用者が設定した役割や性格に基づき、AIが多様な視点からデータを解説する「データ分析におけるAIを活用した多視点分析システム」を開発したと発表した。今後、企業のニーズに合わせて、各種システムに組み込む形での提供を予定する。
開発したシステムは、企業内に蓄積されたデータを分析する際に、画一的なAIの応答ではなく、経営者やアナリストといった異なる立場からの洞察を提供し、特定の視点からの意見を求める利用者に対して、より適切な示唆やアドバイスを行う点を特長とする。これにより、データ活用の高度化と迅速な意思決定を支援する。
NRIでは、近年、多くの企業でデータ活用が進み、AIによる分析支援も一般的になりつつあるが、従来のAIによる分析コメントは「誰の視点からの意見か」が不明確なため、利用者が自身の立場や目的に照らして解釈しにくいという課題があったと説明する。
例えば、同じ売り上げデータでも、経営層が求める中長期的な示唆と、現場担当者が必要とする短期的な対策とでは、求める回答は異なる。NRIは、このAIからの応答における「視点の不明確さ」という課題を解決するため、AIに「役割(ペルソナ)」と「性格」を持たせ、利用者が必要とする視点からの分析コメントを生成するシステムを開発した。これにより、利用者は優秀なアドバイザーと対話しているかのように、自身が求める視点から深い洞察を得られる。
開発したシステムは、NRIの独自技術により、「役割(ペルソナ)の選択機能」「性格のチューニング機能」「自然言語による対話型の深掘り分析」という3つの特長的な機能を実現している。
役割(ペルソナ)の選択機能は、利用者が「経営層」「経営アナリスト」「ステークホルダー」といった役割を選択するだけで、AIがその立場になりきってデータを分析する。これは、各役割の思考様式を模倣するプロンプト技術と、それぞれの役割に応じた補足情報データベースを組み合わせることで実現しており、通常の生成AIに対するプロンプト(指示文)と比較して、より一貫した回答を得られる。この補足情報には、公開情報だけでなく、企業の社内文書や議事録などを取り込むこともできる。
性格のチューニング機能は、各役割が持つ性格について、例えばペルソナのポジティブさとネガティブさの比率などを、利用者が自由に調整できる。「より慎重なアナリスト」や「より楽観的な経営者」など、組織の文化や個人の思考スタイルに合わせた柔軟なカスタマイズができる。
自然言語による対話型の深掘り分析は、AIの解説に対して、利用者が「この数値が変動した背景を詳しく教えて」「関連するデータをグラフで示して」といったように自然言語で問いかけると、AIが追加のグラフを自動で生成する。これにより、分析のサイクルを高速化し、利用者は思考を中断することなくデータの深掘りができる。
システムは、分析ダッシュボード型の独立したアプリケーションとして提供できるほか、既存の情報分析システムにモジュールとして追加導入できるよう設計されている。
NRIは今後も、AIをはじめとする先端技術の研究開発と社会実装を通じて、データに基づいた業務プロセスの高度化と企業価値向上に貢献していくとしている。