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HPEの望月社長が2026年度事業方針を発表――Juniper統合でネットワークの「新たなリーダー」へ

 日本ヒューレット・パッカード合同会社(以下、HPE)は15日、同社2026年度(2025年11月~2026年10月)の事業方針について説明。同社の望月弘一社長は、「HPEは、2024年度に『Leading edge-to-cloud company』を方針に掲げてから3年目に入る。Leadingというところを、より明確に差別化していく年にしたい」との考えを示した。

日本ヒューレット・パッカード 代表執行役員社長の望月弘一氏

 注力領域として、「ネットワーク市場における新しいリーダーとしての活動を本格展開」、「HPE GreenLakeを通じてソフトウェアおよびサービスでの成長を加速」、「最新テクノロジーと独自IPの価値訴求によるプラットフォーム市場シェア獲得」、「ソブリンおよびエンタープライズ市場におけるAIインフラストラクチャの成長にフォーカス」の4点を挙げた。

 「Juniper Networksとの統合を背景に、ネットワーク業界における新たなリーダーとしてのポジションを明確にするとともに、HPE GreenLakeをさらに進化させていく。オンプレミスでも、クラウドとして活用してもらえるHPE GreenLakeを、第三極のクラウドプラットフォームとして提供し、お客さまのビジネス変革と、持続可能な社会に貢献する。さらに、インフラストラクチャ領域における国内でのシェア拡大を図る」などと語った。

HPE Japan 注力領域

 ひとつめの「ネットワーク市場における新しいリーダーとしての活動を本格展開」では、2025年11月にJuniper Networksが新たに合流したことで、HPE Aruba Networkingとの組み合わせによる高度化した提案が可能になったことを強調。2つめの「HPE GreenLakeを通じてソフトウェアおよびサービスでの成長を加速」では、OpsRamp、Morpheus Data、Zertoなどの買収を通じて、HPE GreenLakeの運用環境が高度化していることを示し、HPE CloudOps Software suiteによる運用インテリジェンスの統合を進めることで、「付加価値の提供にこだわり、真のベンダーニュートラル、クラウドニュートラルによる貢献を果たす」と述べた。

 3つめの「最新テクノロジーと独自IPの価値訴求によるプラットフォーム市場シェア獲得」では、サーバーにおいて、HPE ProLiant Compute Gen12への移行を促進するほか、ストレージでは、HPE AlletraStorage MPを通じた非構造化データ活用の推進を通じて、シェア拡大につなげるという。「AlletraStorage MPは、データファブリックを実現するには最適なストレージであり、過去1年間にわたり、全世界で大きく成長している。日本の多くのお客さまに紹介する1年にしたい」と語った。

HPE AlletraStorage MP

 そして、「ソブリンおよびエンタープライズ市場におけるAIインフラストラクチャの成長にフォーカス」という点では、「AIの活用の広がりとともに、機密性の高いデータを活用したいという要求が高まっている。データ保護やデータセキュリティの観点から、プライベート環境でのAI基盤構築が求められており、ここにしっかりとした提案を行っていきたい」と語った。

 また望月社長は、「2015年にHewlett-Packardが、HPEとHP Inc.に分社してから10年が経過した。2026年度は10周年の節目にあたる年になる。10年前に提供してきたテクノロジーやソリューションと今を比べると、大幅に変化し進歩している。お客さまの要望に耳を傾け、応えてきた活動の結果である」などと述べた。

 今回の事業戦略説明では、「ネットワーキング」、「クラウド」、「AI」の3つの観点から、具体的な取り組みについて言及した。

 望月社長は、「HPEは、ここ数年にわたり、Leading edge-to-cloud companyへの取り組みを通じて、ネットワーキング、ハイブリッドクラウド、AIに注力してきた。これらの領域において、HPEはユニークなポジションにいる。また、この3つの領域は、2028年に向けて大きな成長を遂げると予測されており、日本でも同様のトレンドにある。日本の企業は、デジタル競争力を高めたいと考えており、そのためにITモダナイゼーションが不可欠であり、ネットワーキング、ハイブリッドクラウド、AIは、ITモダナイゼーションを構成する重要な要素になる」と位置づけた。

HPEはモダンITを構築するためのすべての要素を完備

 「ネットワーキング」においては、「ITモダナイゼーションを語るときの出発点であり、中核になる」と位置づけ、複雑化するネットワーク環境をAIによって最適化し、将来的には自律化する「AI for Networking ops」と、AIワークロードに最適化したネットワークを提供する「Networking for AI workloads」に注力する考えを示した。

The secure AI-native network

 また、Juniper Networksの統合により、同社が保有していたAIネイティブネットワークテクノロジーを組み合わせて、ハイブリッドクラウド環境の実現を強化。AI時代に最適化したネットワークの提供が可能になることを強調した。「すべてのお客さまに対して、すべてのワークロードに対応したネットワークを提供できるようになった。また、ArubaとJuniperの研究開発がひとつになることで、イノベーションが加速することは間違いない」と断言した。

 Juniper Networksを統合したことで、HPEのネットワーク事業の規模は2倍に拡大。約110億ドルに達し、ネットワーク事業を担当する社員数も2倍になったという。また、全社売上高の3分の1を占める事業規模となり、「中核事業のひとつとして成長を遂げていく。今後も構成比は高まっていくことになる」との見方を示した。日本においても、ネットワーク事業の規模は、統合前の2倍になるという。

 また、日本におけるネットワーキング市場は、2028年までに1.2倍になると予測。「データセンター内だけでなく、データセンター間の帯域確保も重要になる。今後5年間で、帯域に対する要件は6倍になると言われている。AIデータセンターに関する知見を持つHPEにJuniper Networksの実績が加わり、ネットワークの提案が広がることになる」としている。

HPE Networkingの取り組み

 HPE Networkingの取り組みについては、日本ヒューレット・パッカード 執行役員 HPE Networking事業統括本部長の本田昌和氏が説明した。

日本ヒューレット・パッカード 執行役員 HPE Networking事業統括本部長の本田昌和氏

 HPE Networkingは、Aruba NetworkingとJuniper Networksを統合したブランドであり、2025年11月からは旧Juniper Networksの社員がHPEの社員となり、2026年1月からは営業組織をひとつにして、新たな体制で事業を開始する。

 HPEの本田執行役員は、「長年にわたり、シスコによる1社独占だったネットワーク市場において、トップを狙える新たな事業をスタートできる。技術や製品だけでなく、顧客基盤の広さでもトップを追撃できる立場にある。社員一同、ワクワクしている。2026年度を、ネットワーク事業の成長の礎になる1年にし、HPE Networkingが目指す自律型ネットワークの実現につなげていきたい」と抱負を述べた。

 すでに自律型ネットワークを実現している事例として、大手SaaS企業を紹介。Juniper MistのエンジンであるMarvisにより、社内ネットワークのインシデントデータを収集および学習し、トラブル対応を自動化。月間約100件の無線LANのトラブルチケット数を、90%削減し、月間数件にとどめることができているという。

大手SaaS企業の事例

 また、サイバーエージェントではGPU間の通信をイーサネット化。Juniper Networksがトップシェアを持つ800GbEスイッチを活用して、AIの進化に必要な性能と機能、将来性を確保するとともに、50%の消費電力の改善を図ることができたとした。

サイバーエージェントの事例

 さらに、2025年7月の統合発表から5カ月間で、Juniper MistとAruba Central間で、双方の機能を相互移植していること、2026年夏にはJuniper MistおよびAruba Centralの両方からマネージできる共通プラットフォームアクセスポイントを投入する計画を発表するなど、統合に向けた成果が生まれていることも示した。

 国内においては、2026年1月から、サービスプロバイダ、エンタープライズ、パブリックセクター、コマーシャルの4つの市場向け営業体制を構築する計画を明らかにした。

 「AI時代においては、従来のネットワークのままでは最適なパフォーマンスが得られず、企業のDXが足止めされることになる。それぞれの市場セグメントに対応したソリューションやパートナーとの協業を通じて、日本市場での成長とお客さまへの貢献を図る」と語った。

HPE Networking 国内Go-to-Market戦略

 「クラウド」では、2019年に、HPEが持つすべてのインフラをas a Serviceで提供する体制を構築し、それ以降、積極的な買収により、ソフトウェアテクノロジーを追加することで、HPE GreenLake cloudを進化させてきたことを振り返る一方、2020年にプライベートクラウドへの回帰を計画している企業が43%であったものの、2024年には83%にまで増加していることを指摘。

 HPEの望月社長は、「プライベートクラウドへの回帰が進んでいる。機密性が高いデータを外部に出すことを懸念する動きがある。また、コストの最適化の流れも、このトレンドを後押ししている」と分析。「ハイブリッドクラウド化はますます進行することになる」と予測した。

プライベートクラウドへの回帰トレンド

 また、すべてのクラウドベンダーのサービスおよびワークロードを対象にした「HPE CloudOps Software suite」を提供。ITやアプリケーションのプロビジョニングおよびオーケストレーションを行うMorpheus Enterprise Software、AIを活用して観測性を高めるOpsRamp Software、継続的にバックアップを行い、自動的にリカバリーを行うZerto Softwareで構成しており、効果的な運用管理を実現できるという。「マルチクラウド、マルチベンダーに対応したサービスであり、唯一無二のサービスになる」とした。

HPE CloudOps Software suite

 さらに、新たに発表した「GreenLake Intelligence」についても説明。「AIエージェントを活用した本格的な運用フレームワークであり、業界に先駆けて、HPEが初めて提供するものになる。ネットワーキング、ストレージ、サーバー、アプリケーション、セキュリティといった領域において、それぞれ独立したAIエージェントが用意され、相互に連携し、運用の質を高め、効率性も高めることができる。障害の発生頻度を劇的に減らし、障害が発生した際のリカバリー時間を短縮できる」という。

GreenLake Intelligence

 説明会では、HPE GreenLakeの導入事例として、東京ガスグループが、緊急保安業務支援システム「EAGLE24」において、オンプレミスとAzureによるハイブリッドクラウド環境を構築。HPE Managed Servicesを通じた高い観測性により、24時間365日の無停止運用と災害対策の強化、効率化を実現したという。

 「AI」については、2028年までに国内AI市場が約2倍に成長することを示したほか、AI環境での機密データの取り扱いの増加により、オンプレミス回帰が進展していることを示し、「AIデータセンターにおける知見を蓄積していること、NVIDIAとの戦略的協業により、AIプラットフォームの提供が容易になることなどが、HPEの強みになる。しかも、これをHPE GreenLakeとして提供できる」と述べた。

 NVIDIAとの協業により、プライベートAIインフラストラクチャ「Leader」を提供。さまざまな規模やニーズに対応した形でインフラを提供できるという。また、KDDIが2025年度内に稼働する大阪府堺市のAIデータセンターに、HPEのラックシステムを採用することも発表している。

 HPEの技術は、スパコンランキングの上位3機種を独占。さらに、オークリッジ国立研究所のスパコン「Discovery」と、AIクラスター「Lux」を構築するなど、AIとHPCが融合する時代における技術的ブレークスルーを実現しており、ここで培ったノウハウをエンタープライズ企業に還元することに力を注ぐことも強調した。

 なお、同社2025年度(2024年11月~2025年10月)の業績については、グローバル全体の売上高が前年比14%増の343億ドルとなり、ネットワーキング、サーバー、ハイブリッドクラウドの主要3事業セグメントがすべて堅調な業績を達成。非GAAPベース潜在株式調整後1株当たり当期純利益(EPS)は1.94ドルとなり、ガイダンスの1.88~1.92ドルを上回った。また、フリーキャッシュフローは9億8600万ドルとなり、ガイダンスの約7億ドルを上回ったことを報告した。