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「NEC神奈川データセンター」公開~フラッグシップ施設として1月27日本格稼働

 日本電気株式会社(以下、NEC)は22日、神奈川県内に、同社のデータセンターとしては最大規模になる「NEC神奈川データセンター」を、2014年1月27日から稼働するのにあわせて、内部の様子を報道関係者に公開した。

 NEC神奈川データセンターは、NECが所有する既存建屋を、データセンター向けにリニューアルしたもの。NEC C&Cクラウド基盤戦略本部の畔田秀信本部長は、「NECの社会ソリューション事業の基盤を担うフラッグシップデータセンターであり、独自の省電力・高集積サーバーを活用するとともに、相変化冷却技術を活用した新しい冷却設備を備え、NECの技術の総力を活用したデータセンターになる」と語る。NEC神奈川データセンターの様子をレポートする。

データセンターの外観(CG)

新宿から1時間の便利、安全な立地

 NEC神奈川データセンターは、神奈川県内にNECが所有している施設の既存建屋を、データセンター向けにリニューアルして活用。新宿から約1時間という立地にある。

 活断層から9km以上、海岸から30km以上の距離であり、ハザードマップの被害想定区域外であるといった安全な立地も特徴だ。

 「災害の影響が少なく、システムを安全に守ることができ、安心、便利を両立した立地条件にある」と強調する。

 地上4階建ての建屋は、約1万㎡のサーバーエリアに、3000ラックを収容。耐震構造を備え、官庁施設の総合耐震計画基準Ⅰ類に準拠した建物構造。床荷重は1.5t/平方メートル、定格電力は20kVA/ラックと、最新機器の設置に適したハイスペック環境を実現し、耐震構造、免震床など地震への備えも万全としている。

 「地震の揺れの大きさに表現に用いる、加速度の単位であるgalにおいては、500Galの入力波を、200Galにまで低減できる。地震が発生した際には、水平方向に力がかかるとすべり支承部とスライドパネルの間にすべりを生じさせるともに、コイルバネによってすべり幅を制限し、オイルダンパーによって地震エネルギーを吸収するという仕組みになっている」と説明する。

免震床の仕組みを支えるすべり支承
すべり幅を制限するコイルバネ
地震エネルギーを吸収するオイルダンパー
NEC C&Cクラウド基盤戦略本部の畔田秀信本部長

クラウドとハウジングのハイブリッドデータセンター、最新設備を導入

 また、NEC神奈川データセンターは、2014年4月から開始するNEC Cloud IaaSを提供する拠点としての役割に加え、ユーザー企業が持つ固有のシステムを設置できるハウジングサービスも提供可能なハイブリッドデータセンターだ。クラウドとハウジングの一体運用を実現することで、システム全体での効率性や運用負荷の軽減といったメリットを提供できる。

 計画では3000ラックのうち、400ラックがクラウドサービス、2600ラックがハウジングサービスとなる。それぞれのサーバールームは、通路を挟んで左右に設置しており、物理的には別々の部屋に設置されている。またクラウドについては、スタンダードサービスとハイアベイラビリティ(HA)サービスの2つのサービスレベルを用意した。

 これらのスタンダードサービスとHAサービスは、同一センター内での密連携が可能になっており、負荷変動が大きいWebサービスなどはスタンダードサービス、高信頼性が求められる基幹業務データベースはHAサービスといったように、2つのサービスの使い分けも可能にしている。

サーバールームの様子
クラウドとハウジングを一体運用するハイブリッドデータセンターだ

 さらに、低消費電力CPUを採用したNECデータセンター専用の省電力高集積サーバーを開発。液体が気化する際に熱を奪う原理により、動力を不要とする冷却技術「相変化冷却方式」をもとにした独自冷却技術を実装することで、省電力に貢献しているという。相変化冷却方式により、ラック単位の空調消費電力は30%の削減が可能になる。熱伝導、吸熱の効率および冷却効果の向上などに関する特許を60件以上出願中だという。

 またマシンルーム全体に二層構造の天井を有した空調を採用。サーバーの後方から暖かい熱を天井に吸い上げ、二層構造として天井の下側にある暖気層で熱を輸送。水冷で冷却した空気を、上側の冷気層を通じて、ファンでサーバーの前方に供給。サーバーが冷気を吸い込んで冷却するという仕組みだ。

 こうした相変化冷却方式や二層構造の天井を採用することにより、PUEは1.26を目指す。

 また、スパコンで培った超高密度実装技術の採用によって、1Uあたりに44台、ラックあたり700台のサーバーを収容でき、設置スペースを4分の1に、消費電力も4分の1にするなどの効果があるという。

専用に開発した高集積サーバー
44台のサーバーが1Uに搭載される
3列目にサーバー冷却用のファンが設置されている
相変化冷却ラック

 Software-Defined Networking(SDN)の活用により、ネットワークの柔軟な構成変更も可能。さらにデータセンター間ネットワークにより、NECの他データセンターとの連携も実現している。「一連のプロビジョニング作業を自動化し、迅速な仮想ネットワークの構築、柔軟なデータセンターの移行などが可能になる」とした。

 これらの最新技術の採用は、原価低減にも寄与。「相変化冷却の導入、サーバーの省電力化、ネットワークの仮想化などにより、従来サービスと比較して仮想マシンあたりの原価を60%低減できる」(畔田本部長)としている。

 一方、電源トラブルによるシステム停止を防止するため、受電設備、UPSなどの電気設備をすべて冗長化しており、災害時に停電になっても、即座に非常用発電機による自家発電モードに切り替え、満床時の3000ラック状態で最大72時間の無給油連続運転が可能となっている。

大幅な原価低減を達成

監視・運用はオペレーションルームから一元管理

オペレーションルームの様子

 監視・統合運用サービスは、オペレーションルームで一元管理。「キャリアの膨大な資産管理でグローバルに実績があるNetCrackerの資産管理システムを採用。自動化により、構成管理コストを30%削減し、障害発生時の影響機器を早期に特定できる」という。

 このサービスは、ITILをベースに構築しており、さらに高い専門性を持った運用要員が対応している。「豊富な実績をベースにしたフレームワークに基づき、最適な運用設計と標準化、体系化を行うことで安定した運用品質を実現している」という。

 加えて、24時間365日の有人警備と機械警備、監視カメラ、生体認証などのフィジカルセキュリティに加え、セキュリティオペレーションセンターによる情報セキュリティ対策も実施。「NEC独自技術である顔認証も採用している」という。顔認証はIDカードと一対一で連動。カードのすり替えにより入室を規制したり、サークルゲートの採用により、共連れ入室も防止する。また、内部統制監査対応に役立つ内部統制保証報告書をオプションで提供する。今後、SOC1/SOC2レポートも提供する予定である。

NEC神奈川データセンターのエントランス
エントランスにある顔認証登録ブースでIDカードとの連携を図る
サークルゲートにより共連れやカードのすり替え入室も防止

 さらに、NEC神奈川データセンターでは、プロジェクトルームや会議室などを多数用意。休憩や簡単な打ち合わせに活用できるリフレッシュコーナーを整備し、プロジェクトのスムーズな推進をサポートする。

 「すでにハウジングサービスに関しては、多くの引き合いをいただいている。安心、安全という観点や、料金の観点から関心がある。3年以内に、約250社の契約を目標とし、ハウジングサービスのサーバールームを満床にしたい」(NEC ビジネスイノベーション統括ユニットの橋谷直樹理事)としている。

 今後、NECでは、NEC神奈川データセンターの構築で培ったノウハウを国内および海外にある59カ所の同社データセンターに活用。さらにデータセンターの早期立ち上げにも貢献し、より高効率のデータセンターの実現につなげる考えだ。

NEC ビジネスイノベーション統括ユニットの橋谷直樹理事

大河原 克行