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「後発でも追い付く自信あり」、NEC総力結集の新クラウドサービス「NEC Cloud IaaS」
(2013/9/13 06:00)
NECは12日、新たな企業向けクラウド基盤サービス「NEC Cloud IaaS」の販売を開始、2014年4月から提供すると発表した。同サービスは神奈川県内に建設中の新データセンター(NEC神奈川データセンター)を拠点として提供される予定。NEC 執行役員 中江靖之氏は「NEC Cloud IaaSは、全社横断でNECの社内勢力を結集して取り組んだクラウド事業。“海底から宇宙まで”を掲げるNECのICT技術でもって、お客さまのクラウドの課題を解決したい」と語る。
NEC Cloud IaaSは、サーバーやストレージといったITリソースをユーザーのニーズに応じて提供できるクラウドサービス。一般的なパブリッククラウドサービスとは異なり、NECと顧客企業が個別に契約を締結する形式を取っているため、クレジット決済などで開始することはできない。NECはすでに同社のクラウドサービスとして「RIACUBE-V」「RIACUBE」「BIGLOBEクラウドホスティング」といったラインアップをそろえているが、NEC Cloud IaaSはRIACUBE-VおよびRIACUBEの後継サービスという位置づけになる。「RIACUBE/RIACUBE-Vはすでに多くのお客さまに利用していただいているので、サービスとして継続して提供していく。ただし、RIACUBEからNEC Cloud IaaSへの移行を望むお客さまに対しては積極的に支援していく」(中江氏)。
NEC Cloud IaaSのサービスプランは、「携帯電話料金より安い、国内トップクラスの低価格」(中江氏)というスタンダードサービス(STD)と、従来のRIACUBEを置き換える基幹業務向けのハイアベイラビリティサービス(HA)の2種類が用意されている。
「STD」は、 コストパフォーマンス重視で、ピーク時の負荷変動が大きいフロントのWebサーバーなどに適したサービス。処理量に応じてサーバー台数を増減でき、時間課金を利用したコストの最適化を図れる。最小構成(1CPU×4GBメモリ×100GBシステムディスク)で月額6700円から。
「HA」は、サーバー単体の高性能/高信頼を要求される基幹業務向けで、バックエンドのデータベース管理などに適したサービス。処理量に応じてCPUコア数やメモリを増減できる。最小構成(2CPU×2GBメモリ×100GBシステムディスク)で月額1万900円から。
いずれも2014年1月にオープンするNEC神奈川データセンター内で互いに密に連携しながら提供される。「同一のデータセンター内で両方のサービスが提供されるので、例えば1つのシステム内で、顧客のリクエストを受け付けるフロントのWebサーバーはSTDで、商品データベースや顧客データベースなどを管理するバックオフィス機能はHAで、という構成を取ることも可能」(中江氏)だとしている。
もうひとつの大きな特徴は、他社のクラウドサービス基盤を含む複数の基盤システムを統合的に管理できるセルフサービスポータル機能だ。
STDとHAという2種類のIaaSのリソースを統一インターフェイスで調達/管理(プロビジョニング)できる「セルフサービスポータル」により、ユーザー自身が自由に必要なリソースをそれぞれのサービスから選択することができる。例えば前述のような“WebフロントはSTDで、バックエンドはHAで”というケースでも同一の画面でサービス切り出しが可能になる。「ユーザー自身が必要なサービスを適宜切り出すのはRIACUBEではできなかったこと」(中江氏)という。
このセルフポータルを利用することで、NEC Cloud IaaSに加え、他社のクラウド基盤サービスや、プライベートクラウド、オンプレミス/ハウジング環境などをユーザーのIT環境全体を統合的に運用することが可能になる。具体的には、監視設定やリモートコマンド実行、リソース利用状況の参照などが行えるという。オプションとして、NECがユーザー企業に代わってシステム全体を統合運用するサービスも提供される。
新クラウドサービスは全社横断で、最新技術を投入したデータセンターも新設
NEC Cloud IaaSの最大のポイントはやはりその低価格性にあるといえる。特にSTDは既存のRIACUBEでも実現しなかった価格体系であり、むしろNECはこの価格でサービスを提供するために、NEC 執行役員副社長の新野隆氏をリーダーにした「全社横断で、各部門からエースを集結させたビジネスイノベーション統括ユニット」を新設してまで、NEC Cloud IaaSの基盤開発に臨んだともいえる。
この価格体系が実現できた理由として、中江氏は「STDではソフトウェア基盤にOpenStackなど標準的なオープンソースを採用し、ハードウェア基盤にはNECデータ専用の省電力高集積サーバーを新たに開発した。このサーバーには最新の低消費電力プロセッサを搭載しているほか、新データセンターでは水冷式とは異なる相変化冷却方式(液体が気化する際に熱を奪う原理を活用した、動力を不要とする冷却技術)をベースにした独自冷却技術を実装している。徹底的なコスト削減と省電力製品/技術の活用がこの価格体系を実現した」と同社の技術力による実績を強調する。
この独自サーバーが配置されるのが、2014年1月に開設するNEC神奈川データセンターだ。中江氏は「NEC最大のデータセンターでありながら、新宿から1時間程度と都心にも近く、また活断層や海岸からも離れている。もちろんセキュリティに関しても24時間365日の有人警備と監視カメラによる監視を行うなど万全の体制を整える。物理サーバーのボリュームは最大3000ラックを予定している」と説明。電気設備に関しても、特別高圧の2回線(本線と予備線)だけでなく、冗長構成を取った自家発電機やUPSも用意しているという。
NEC Cloud IaaSをあえて「パブリッククラウド」という言葉は使わず、「プライベートサービス」と説明した中江氏だが、「IaaSサービスとしては後発に当たるが(ほかのIaaSベンダに)追い付くことは可能なのか」という質問に対し、「たしかに後発ではあるが、クラウドはこれからが勝負であり、まだ十分に追い付る自信がある。むしろ後発だから有利なこともある」と強気の姿勢を見せている。2017年度にはNEC Cloud IaaSを含むクラウド基盤事業で1200億円の売り上げを目指すとしているNECだが、その目標を達成するにはNEC Cloud IaaSが成功することが絶対条件となる。特に低価格を売りにしたSTDがより多くのユーザーに受け入れられることが重要になる。まずは1月の新データセンター開設、そして4月の正式サービスインを予定通りに進めることが、その道のりの第一歩となるだろう。