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日立、グループのグローバルリーダーなど約360人が参加し「Global Leaders Kickoff」を開催
「真のOne Hitachi」の実現に向け、必要とされるリーダーシップなどについて説明
2025年5月13日 06:15
株式会社日立製作所(以下、日立)は12日、東京・大手町のパレスホテル東京において、「Hitachi Global Leaders Kickoff 2025」を開催した。
日立グループのグローバルリーダーなど、約360人が参加した社内イベントで、約4割が海外から参加している。今回初めて開催したものであり、冒頭、同イベントの趣旨説明を行った日立の徳永俊昭社長兼CEOは、そのなかで、「ここから見る景色は、過去の日立のCEOたちが、いつか見たいと願ってきたもの」と発言したのが印象的だった。
日立では、今回のHitachi Global Leaders Kickoff 2025の開催の狙いについて、「デジタルを軸に、国や事業の垣根を越えて連携することで、『真のOne Hitachi』を実現し、さらなるグローバル成長を目指すために、まずは、リーダー層がつながり、各人が目標達成に向けて、何をコミットするか議論し、気運を高めることを目的にしている」と位置づけている。
同イベントでは、2025年4月に社長に就任したばかりの徳永俊昭氏が基調講演を行ったほか、参加者から寄せられた質問への回答や、新たなリーダーシップチームの紹介を行い、新経営計画である「Inspire 2027」の狙いや、計画推進の中心的な考え方となる「真のOne Hitachi」の実現に向け、必要とされるリーダーシップなどについて説明した。基調講演や質疑応答などはすべて英語で行われた。
日立の徳永俊昭社長兼CEOは、「今日は、私たち全員にとって、特別で、重要な日である。すべてが動きはじめる日であり、2027年のその先に進んでいく日である。そして、『真のOne Hitachi』になるための第一歩を踏み出す日であり、新しいビジネスプロジェクトのきっかけを作り、共通の目的を持つ新しいチームの形成につなげることができる」と切り出した。
また、新経営計画「Inspire 2027」について言及。「長期的な視点で持続的に成長し、デジタルセントリックな企業に変革することが私たちの約束である。目標が高すぎると驚いた人もいる。だが、大きな成功は、しばしば、そのようにして始まる。リーダーとして、不可能を可能にすることが私たちの使命である」と発言した上で、「設定した目標を達成するために、魔法の力は必要ない。なぜなら日立には、すでにそれを達成する力が備わっているからである」と断言した。
また、ドメインナレッジとAIによってLumadaを強化し、次の成長ステージに引き上げた「Lumada3.0」への取り組みを加速することを強調。長期的視点では、Lumada事業を売上高構成比で80%以上、利益率では20%以上とする「Lumada80-20」を「目指す水準」に掲げたことにも触れ、これに関しては、「非常に野心的な高い目標を設定したことを自覚している」と述べた。
また、新組織の戦略SIB(Social Innovation Business)ビジネスユニットでは、最大5000億円を投下する計画を示し、「新しいビジネスを生み出す組織であり、そのためには、グループ全体のサポートが必要である」と訴えた。
Inspire 2027で掲げた「真のOne Hitachi」についても触れた。
德永社長兼CEOは、「フェイクなOne Hitachiがあるわけではない」とジョークを飛ばしながら、「日立グループが、コングロマリット企業として、本来生み出せるはずの価値は、まだまだ道半ばである。One Hitachiという言葉は長年使用してきたが、これまでは、個々の事業の成長に焦点を強く当てていたものだった。2009年の経営危機から回復し、グローバルな存在になることが最優先であった時期においては、これは正しい方向であった。だが、各事業が力強く伸びたいまは、それだけでは不十分である。真のOne Hitachiを達成した暁には、各事業がコラボレーションし、シームレスに融合し、社内での境界や競争をまったく感じなくなる。そして、社会が直面しているより複雑な課題を解決できるようになる」と語り、「真の One Hitachi」で目指す未来を説明した。
また、德永社長兼CEOは、3つの重要な「信条」として、「アジリティ」、「レスポンシビリティ」、「トランスペアレンシー」を挙げた。
アジリティでは、「常に先を見越すこと」と定義。「社内外の変化を先取りし、競合他社よりも早く行動することである。だがこれは、自分自身が迅速に行動することではなく、チームをより速く動かすことであり、リーダーである私たちは迅速に決断し、昨日よりも速く、明日は今日よりも速く動くことが大切である」とした。
「レスポンシビリティ」は、「基本を守り、正しい道を選び、築いた信頼を守り、日立のビジネスに関わるすべての人の安全を確保することがリーダーの責務である。これは、私たちが決して忘れてはならないものである。また、創業者である小平浪平さんが示した『社会への貢献』というビジョンは、全員で共有するゴールであり、日立の存在意義である。私たちがどんな決定をする際にも、必ず立ち戻るべき場所である」とした。
「トランスペアレンシー」では、「組織内のあらゆる障壁を乗り越え、メンバー全員の潜在能力を引き出す必要がある」とし、「Inspire 2027の策定で私が意識したのは、オープンにコミュニケーションを取り、常に耳を傾け、各チームメンバーが自分の強みを発揮できるようにするという点である。これは、南極点到達を初めて成し遂げたアール・アムンゼン氏のリーダーシップに学んだものである。100年以上前に未知の領域で成功を収めたアムンゼンから学べることはたくさんある」と述べた。
そして、德永社長兼CEOが掲げる3つの信条の頭文字を取ると「ART」になることを示しながら、「毎日無数の決断を下さなくてはならないが、そのひとつひとつにおいて、どんなに忙しくても、自分自身の信条に立ち返るべきだ」と語った。
基調講演の最後に、「多様なリーダーシップスタイルを持つリーダーが、『真のOne Hitachi』をできるだけ早く実現するという同じ目的地に向かっている。だからこそ、インスパイアされ、ほかの人をインスパイアし、その上で、日立が目指す次のステージにどんな貢献ができるかを考えてほしい。ひとつのチームとして、共に働き、共に世界をインスパイアできることを誇りに思い、楽しみにしている」と締めくくった。
基調講演の後に、德永社長兼CEOは、参加者から寄せられた7つの質問に丁寧に回答した。
理想的なコングロマリット経営の姿としては、28万人の社員による「真のOne Hitachi」を挙げ、「日立には、力強く、才能があるリーダーがいる。チームメンバーを励まし、能力を団結させることで実現できるだろう」とコメント。仮に、日立が「人」であった場合のペルソナを尋ねる質問には、「日立で働く人は、創業の精神である『和』、『誠』、『開拓者精神』の3つを持っていることが大切である。これを発揮することで強いチームになれる。創業の精神に立ち戻って取り組んでほしい」と述べた。
グローバル企業として重要な文化的シフトとしては、「アジリティ、レスポンシビリティ、トランスペアレンシーの3つの信条が鍵になる。中でもアジリティが重要である。不安定で、予測が難しい状況において、スピードが大切になる。アジリティを実践する文化を定着させることが重要だ」と述べ、「日立を持続可能な企業にしたい。最終的にはグローバルリーダーとして、日立が社会イノベーションを率いる企業になりたい。そうなれば、世界で最も重要な企業の1社になれる。IT、OT、プロダクトを統合できるのは日立の特徴である。私たちのパートナーであるMicrosoftやNVIDIA、Googleのようなテックジャイアンツは、私たちが持っているテクノロジーやデータを欲しがっており、私たちと協業したがっている。OTの知識を持ち、プロダクトを持ち、ITも深く理解している日立のような企業はほかにない。最重要な会社となり、社会課題を解決したい」と語った。
さらに、「最近では、開拓者精神があまり発揮されていないことが残念である。少し保守的な部分があるのかもしれない。予算策定の際に、低めのターゲットを設定し、これを超過することでボーナスをもらえるという考え方がある。これではいけない。日立のすべての従業員がOSを再インストールし、開拓者精神を思い出すことが大切である」と提言した。
Hitachi Global Leaders Kickoff 2025の会場では、参加したリーダーのひとりに話を聞くことができた。
日立アメリカ社および日立デジタル社のCMO(Chief Marketing Officer)であるArya Barirani(アリヤ・バリラニ)氏は、「今日は、日立が次の成長フェーズに入るためのキックオフの1日になった。これから、新しい道を拓くことになり、デジタルやAIによる会社になることを宣言した。
また、今日をきっかけにサイロを越えて横連携が強化され。新しいアイデアが生まれ、それが共有すれ、インスパイアされる瞬間を迎えた」と興奮気味にコメント。「これからは、真のOne Hitachiに向けて、垣根を越えて、日立の力を融合しなくてはならない。それによって、グローバルにおいて競争力を高めていくことができる。お客さまからは、One Hitachiによる包括的なソリューションが求められており、それを提供できるように連携していかなくてはならない」との決意を示した。
同氏は、2015年から2023年まで、GlobalLogicのCMOを務めた後、2024年に日立アメリカ社および日立デジタル社のCMOに就任。デジタル事業を中心とした北米地域のマーケティングを統括している。
「日立は日本で長い歴史を持つ企業であるのに対して、GlobalLogicは、グローバル企業であり、デジタルエンジニアリングの企業であるという点で、最初はアプローチの仕方や組織風土、文化に大きな違いを感じた。だが、日立グループの前向きな企業風土を感じ、デジタルの企業になりたいという姿勢に共感した。日立デジタル社では、全社への貢献とともに、AIを日立のすべてのソリューションのなかに組み込んでいく役割を担うことになる」とも語った。
なお、Hitachi Global Leaders Kickoff 2025の会場は、「旅」をコンセプトにしたデザインを採用していたのも特徴的だった。
「共に旅・冒険をする仲間」をコンセプトに掲げ、グローバルな人財が一体となって新経営計画に基づいたアクションを起こしていくことを「旅」になぞらえて、飛行機の搭乗などをイメージ。参加者には、旅のしおりやパスポート風のノートなどを配布していた。