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日立・德永新社長が入社式であいさつ、「真のOne HITACHI実現」に向けて意気込みを示す

 株式会社日立製作所(以下、日立)は1日、入社式にあたる「Career Kickoff Session 2025」を、東京・新宿の京王プラザホテルで開催。この日、社長兼CEOに就任したばかりの德永俊昭氏が合同取材に応じ、「真のOne HITACHIを実現したい」と宣言した。

合同取材に応じた日立 執行役社長兼CEOの德永俊昭氏

 「これまでの日立は、それぞれの事業が独立して利益を創出するフェーズだったが、これからは、いよいよデジタルを活用して、それぞれの事業をつなぎ、日立にしか出せないバリューを創出するフェーズに入る。リーダーシップチームでは、その議論が深まっており、One HITACHIの縮図といえるものができている。これを日立グループ28万人に広げていく。日立しか解決できない社会課題やお客さま課題を解決することが、日立が世界一の企業になるために重要な道筋だと考えている」。

 「真のOne HITACHI」の達成を評価する基準のひとつとして挙げたのが、Lumadaである。「Lumadaが成長し、売上構成比の50%を超えるまでに拡大することがひとつの指標になる。Lumadaの価値は、日立ならではの価値である」と力強く述べた。

 また、「日立は、IT、OT、プロダクトをひとつの会社で有している稀有な存在である。サイバーも、フィジカルも理解できるからこそ、課題を上手に解くことができる。日立が貢献できる領域はまだまだ多い」とし、「例えば、AIはLLMにフォーカスが当たりがちだが、お客さまに本当の価値を提供できるのはアプリケーションである。これによって社会課題を解決できる。また、エネルギーを、データセンターに届けたり、データセンターの中を整備したりといったインフラ領域でも、日立は強みを発揮できる。AIにおいては、アプリケーションによる最上位レイヤーと、インフラによるベースレイヤーを担うプレイヤーとして日立は成長していきたい。この両方をできるプレイヤーはほかにはいない。ここに勝ち筋がある」と語った。

 One HITACHIの実現に向けては、「サイロのマインドセットを取り除きたい」と述べ、「長年、事業単位で運営してきたため、事業の中での最適化を図る仕事のやり方が浸透している。役員から一人ひとりの社員に至るまで、日立グループ全体の視座で仕事をしていくことが大切である」と述べた。

 また、「保守的な考え方を壊したい」とも発言。2024年12月の新社長発表会見でも使用した「社員一人ひとりのOSを入れ替える」という表現を用いながら、「保守的な目標をクリアすることを評価するのではなく、高い目標を掲げ、それに向けて自分たちのやり方を変えていくという新たな日立の姿を描きたい」とした。

 社員一人ひとりのOSが入れ替わったことを評価する指標は、「ひとつではない」としながらも、「4月末に詳細を発表する『サステナビリティ指標』を伸ばすことで、OSが入れ替わっていることを見てもらえるだろう。日立の社員のOSを入れ替えるためには、私自身のOSが入れ替わり、私自身がトランスフォームしなくてはならない」とも語った。

 一方、社長就任初日を迎えた德永社長兼CEOは、「正直なことを言うと、昨日の夜は寝つきが悪く、夜中に何度か起きてしまった」と明かしながら、「これは不安であるということではなく、今日から全速力で走るという気持ちが強かったためである。これから何が起きるのだろうか、というワクワク感がある。遠足の前の日の小学生のような気持ちだった」と述べ、「今日になって、さらにワクワクしている。800人以上の新たな仲間が増え、『同期』として、一緒になって日立を新たなステージに持っていける。今日のワクワク感を忘れずに仕事をしていきたい。日立のトランスフォームを加速したい」と述べた。

 日立では、2021年度から入社式の呼称をやめ、Career Kickoff Sessionの名称で開催しているが、その理由として、「従来のメンバーシップ型雇用を背景とした入社式ではなく、それぞれが遂行する仕事を通じて社会課題を解決するという目標の共有の場にする観点から、Career Kickoff Sessionとした」と説明している。

「Career Kickoff Session 2025」の会場入り口

 德永社長兼CEOも、「皆さんの可能性に満ちたキャリアをスタートする特別な日であるという思いを込めて、あえて入社式とは呼んでいない。これからどのようなキャリアを築いていきたいか。そのヒントを少しでもつかんでほしい」と新入社員に呼び掛けた。またドレスコードについても、“安全上問題がないもので、他者へ不快感を与えない”という基本ルールのもと、参加者各自に委ねている。

 今回のCareer Kickoff Sessionでは、テーマに「Leading X!」を掲げており、Xには、トランスフォーメーションの意味を込めたという。

テーマは「Leading X!」

 午前9時45分から開始したCareer Kickoff Session 2025には、約830人の新入社員が参加。そのうち新卒者は約800人、2024年度のキャリア採用者が約30人参加した。

Career Kickoff Session 2025の会場の様子。約830人が参加した

 あいさつに立った德永社長兼CEOは、自らが35年前に日立製作所に入社した日のことを振り返りながら、「この会社であれば、たくさんの仲間たちと、間違いなく社会の役に立てる、スケールの大きな仕事ができるに違いないと考え、日立に入社した。いまでもその選択は正しかったと思っている」と振り返り、「多くの皆さんも、社会のために役立つ仕事がしたいという思いを持って日立への入社を決めたのではないか。日立の幅広い事業フィールドは、皆さんのその思いに応えられる場所であることを、社長として約束する」と公約した。

Career Kickoff Session 2025の会場に入る德永社長兼CEO

 また、日立が創業以来、一度も変えていないこととして、創業者である小平浪平氏が掲げた「優れた自主技術、製品の開発を通じて、社会に貢献する」という企業理念を挙げ、当時の新入社員に対する訓示で、小平氏が「決して唯単なる金儲けばかりやっているのではない」と述べたことを紹介。「この言葉だけで、創業時から、社会に貢献する、という強い信念があったことがよく分かってもらえるだろう」と指摘した。

創業者の小平浪平氏は、新入社員に向けて「決して唯単なる金儲けばかりやっているのではない」と訓示したという

 一方で、日立は2008年度に経営危機に直面したものの、抜本的な経営改革に取り組んだ結果、メディアでは日立の改革が成功事例として取り上げられていることに触れ、「ひょっとすると、『日立のように好調な会社に入れば、この先も安心だ』と思っているかもしれない。だが、日立の変革はこれからが本番である」と手綱を締め、「日立グループが持つさまざまな事業を掛け合わせて、日立独自の価値を提供することができれば、大きな成長余地がある。幅広い事業をデジタルでつなぎ、グループ一体で新たな価値を提供する『真のOne Hitachi』のために、私たち自身をトランスフォームしていく必要がある。これは、コングロマリット(複合企業)として100年以上にわたって歩んできた日立にとって大きな挑戦である。皆さん全員が、今日から変革をリードする大切な仲間であり、日立のトランスフォーメーションジャーニーの一員である」と位置づけた。

デジタルをコアにした「真のOne HITACHI」を目指す
「和」、「誠」、「開拓者精神」という日立の3つの創業の精神についても説明した

 德永社長兼CEOは、3つの大切にしてほしいこととして、「一人称で動くこと」、「アジリティを実践すること」、「トランスペアレンシーを持つこと」の3点を挙げた。参加した新入社員にとっては、社会人になって初めて上司から示された言葉ともいえる。

「一人称で動くこと」、「アジリティを実践すること」、「トランスペアレンシーを持つこと」を大切にしてほしいと述べた

 「一人称で動くこと」では、「日々成長することを目指し、自分から行動を起こしてほしい」と述べて、「昨日より早く起きる」、「面白いと思ったニュースをちょっと調べてみる」といったささいなことから、小さな変化を根気強く重ねることで、自分自身が変わり、チームが変わり、そして社会が変わっていくことを示唆。「変化を生み出すために、自ら動いてみることが、自身を成長させることにつながる。すべてのトランスフォーメーションの起点は自分であるという意識で仕事に取り組んでほしい」と述べた。

 「アジリティを実践すること」では、「変化に素早く対応して、機敏に行動する力を磨いてほしい」と切り出し、「失敗することに不安を感じることもあるだろう。だが、失敗しても、素早く出発点に戻って、もう一回やり直せばいい。変化に素早く対応するために、多少のリスクを取って動くことは、称賛されるべきことだと思っている。皆さんは、新型コロナウイルスの中で学生時代を過ごし、生成AIを生活にうまく取り込んできた。変化に強い世代だと言える。生成AIの次や、10年後の社会を考え、目の前で起きている変化を敏感にとらえ、次なる変化への対応を始めるといったアジリティを、日々の仕事の中で実践してほしい」と要望した。

 「トランスペアレンシーを持つこと」では、透明性を持ってオープンマインドで周りに接することを挙げ、「社内であっても、部署や立場によって、日々の仕事への考え方は違う。壁を越えて一致団結していくためには、相手に対して自分をオープンにすることが重要であり、その上で、相手はどう思うかという想像力を働かせて行動することが大切になる」と述べた。

 最後に、德永社長兼CEOは、「実は私自身も、今日、社長に就任した、いわば『同期』である。皆さんと心と力を合わせ、日立の新たなトランスフォーメーションジャーニーを歩み始めたい」と呼び掛けた。

 また、「Career Kickoff Session 2025」の中では、新入社員が、德永社長兼CEOに直接質問する機会も用意した。

 德永社長兼CEOが参加した35年前の入社式の様子に関する質問では、「学生時代には一生懸命勉強したわけではなかったので、反省の気持ちを抱えて入社式に臨んだ。のんびり過ごしてきたので、入社したら一生懸命やろう、ここに集まっている人の中で、一番がんばったと思える何かを作ろうと思っていた」と回答。

 若手のころの失敗については、「失敗は数限りなくあるが、失敗から学びを得ることができれば、それは美しい思い出に変わる。金融システムのSEをやっていた入社3年目のときに、コマンドを打ち間違え、お客さまが購入したソフトウェアを含めて、すべての環境を消してしまったことがある。お客さまからは、二度とこういうことが起こらないために、何に注意したらいいのかを整理し、それを周りに伝えてほしいと言われた。失敗はつらいことだが、失敗したときに何を学ぶかが重要である。学びを通じて成長してほしい」と答えた。

 また、新社長に就任した感想を問われた德永社長兼CEOは、「前に出てきて、『おい、社長、どういう気分なんだ』と聞くことができる勇気を称賛したい。この勇気を忘れないでほしい」と、ジョークを交えて、エールを送りながら、「ワクワク感と、不安感がある。日立はまだ成長の余力があり、日立の変革はこれからが本番である。変革の初期フェーズを乗り越えることができたにすぎない。日立をもっと素晴らしい会社にしたい。日立を世界で一番素晴らしい会社することを考えている。それに向けて今日から実行していきたい」と、新社長としての抱負を語った。

新入社員の質問に答える德永社長兼CEO
新入社員とともにポーズを取る德永社長兼CEO

 Career Kickoff Session 2025の終了後、参加した新入社員が取材に応じた。

 原子力事業部門に配属予定の河前みすづさんは、「環境課題の解決に興味を持っており、社会課題の解決のために仕事ができる日立に惹かれて入社した。Career Kickoff Session 2025では、これからが変革の本番であるという德永社長兼CEOの言葉が印象的だった。開拓者精神を自ら実践していることを感じた。新入社員全員が、すでに日立の代表であることを意識してほしいという言葉に、期待してもらっていることを感じた」とコメント。

 先端AI・データサイエンス分野の研究開発部門に配属予定のグレゴリー・アドリアンさんは、「私が得意とする映像技術を活用して、社会課題の解決に貢献したい。德永社長兼CEO が、35年間に渡って日立に在籍し、仕事をしていることを知って感動した。私も、長期間に渡って日立で働きたい」と語った。

新入社員の河前みすづさん(左)とグレゴリー・アドリアンさん(右)