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NTT、IOWN APNの新たな接続形態としてオンデマンドで光パスを提供する技術を世界で初めて実証

 日本電信電話株式会社(以下、NTT)は25日、IOWN APNにおいて、オンデマンドで光パスを提供する技術を世界で初めて実証した。将来のAPNで実現する新たな接続形態と位置付けづけており、任意の場所から、必要な時に、必要な時間だけ、機器をAPNに接続すれば、大容量・低遅延の光パスを利用できる。2028年度以降のサービス提供を目指すという。

 具体的な用途として、スポーツの試合の映像を放送局に送り、放送局で編集する場合、試合の場所が本拠地と遠征地で変わっても、それぞれの開催地に作業者を派遣し、通信環境の開通作業や確認作業を行うことなく、カメラやマイクなどの撮影機材をAPNに接続するだけで、編集拠点へのデータ送信が可能になる。屋外のエンターテインメント施設やイベント会場などと、映像編集オフィスなどを結んだ活用なども可能だという。

APNを実現する通信基盤システム

 NTTネットワークサービスシステム研究所 ネットワーク基盤技術研究プロジェクト 主任研究員の関剛志氏は、「APNの将来のユーザー拡大時には、現地の作業員による作業工程の削減が必要になると考えられる。オンデマンドでの光パス提供技術の確立によって、パス設定予約を実施でき、ユーザー自身が、光送受信装置を現地に配備するだけで済み、作業員による現地作業が不要になる。また、接続を外すだけでリソースを開放できる」と説明した。

NTTネットワークサービスシステム研究所 ネットワーク基盤技術研究プロジェクト 主任研究員の関 剛志氏

 実現に向けては、NTTのネットワークサービスシステム研究所、アクセスサービスシステム研究所、未来ねっと研究所、先端集積デバイス研究所が持つそれぞれの技術を活用しているという。

 今回の実証では、APNに機材を接続するだけで自動的に接続できるプラグ&プレイ機能と、既存設備をそのまま使用し、新たなサービスを提供するための波長帯変換機能を開発し、評価した。プラグ&プレイ機能では、フォトニックゲートウェイがAPNデータ送受信機を接続したことを検知すると、APNコントローラがAPNデータ送受信機の情報を認識。自動的にエンドトゥエンド光パスの設定までを行う。

 実証では、APNデータ送受信機に光ファイバーを接続するだけで、撮影拠点から編集拠点までの光パスをオンデマンドで設定し、データを流通することに成功した。「6台のAPN機器で構成されるネットワークに対して、光ファイバーの接続を検知してから、対向側のAPNデータ送受信機で信号を受信するまでに、約210秒という短時間での接続を実現した」という。

実証内容

 また波長帯変換機能は、伝送波長帯を一括で変換するもので、NTTが研究開発を進めている光デバイスのPPLN(周期分極反転ニオブ酸リチウム)を利用して実現している。

 APN内の波長を効率的に収容するためにC帯で伝送していた光信号の全波長を、一括でL帯に変換させることにより、フォトニックエクスチェンジを実現した。「より広範囲に光パスを提供するためには、既存ネットワークに敷設されているさまざまな種類の光ファイバーを使う必要がある。光ファイバーの種類により、光パスに使われる最適な波長帯が異なるため、波長帯変換機能では、最適な波長帯に光パスの波長に変換し、提供できるようにした」という。

波長帯変換技術実証

 さらに、APNコントローラは、フォトニックゲートウェイやフォトニックエクスチェンジに対応するために、オープンなインターフェイス規格をベースに拡張したNBI(North Bound Interface)の仕様を採用。ネットワーク全体を監視・制御することができる。

 なお、今回の技術開発の対象となるIOWN APNは、電気変換を介さずにエンドエンドを光直結する環境の実現を目指し、通信システムや制御システムの研究開発を進めている。

 2023年3月には、NTT東日本およびNTT西日本が、APN IOWN1.0のサービスを開始。その後、大容量、低遅延の特長を生かしたさまざまな実証実験を行っている。

 また、APN step1、 step 2として、大容量、低遅延を特徴としたサービス展開を進めており、IOWN APN step1、2 for Enterpriseでは、日本と台湾の約3000kmをAPNで接続した低遅延通信を実現したほか、IOWN APN step1、2 for DCX(Data Center eXchange)では、海外におけるデータセンター間のAPN接続に取り組んでいる。

 今回の実証は、APN step3で目指しているAPNの高度化に向けた要素技術に位置付けており、今回の結果を踏まえて、APN step3の実現に向けた商用化開発を進めていくことになる。

APN Step3に適用する技術概要

 また、IOWN Global Forumを活用して、Open APN Functional Architectureへの提案や機能実証を行っていくことで、APNのグローバルへの普及展開を推進する考えも示した。なお同技術の一部は、現在開催中の大阪・関西万博のNTTパビリオン内で展示している。