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弥生、クラウド版弥生シリーズでのAI活用を拡大へ
2025年1月15日 06:00
弥生株式会社は14日、報道関係者向け懇談会を開催。2024年9月10日付けで代表取締役社長執行役員 兼 代行経営責任者に就任した武藤健一郎氏、代表取締役 副社長執行役員に就任した前山貴弘氏が登壇し、2025年に取り組む新たなトピックなどを紹介した。
武藤氏は今後の成長のポイントとしてAIを挙げ、「ルール化されている会計分野は、AI活用に適した分野でもある。積極的にAI活用することを考えている。AI活用が遅れている日本の中小企業市場を変えていきたい。現行の技術ではAI活用にはクラウド環境が必須となるため、デスクトップは現行の機能拡充、クラウド版にはAIを活用した機能強化を行う」とクラウド版にAIを積極的に取り込んでいく方針をアピールした。
懇談会の冒頭、前社長で現在は代表取締役 副社長執行役員である前山貴弘氏が、「現行の体制変更を行うことになったのは、正解のセオリーもなく、複雑なものが同時に動いていく時代の中で、より良いビジネスをしていくためには、製品・サービスをもっとスピーディーに、もっと確実に、より良いものを開発していきたいという思いが日々募っていったことが要因のひとつ」と前置き。
その上で、「これは当社がやることを何か大きく変える、やめるということではなく、むしろ強い問題意識のもと、今まで以上にスピードアップし、今まで以上により強い、より良い会社になっていくために、リーダーを新しく迎え、新しいリーダーシップのもと、チームを強化していこうという意図だ。私自身も後ろに下がるつもりは全然ない。むしろ、新しくリーダーとなった武藤と一緒に、代表取締役としてこの会社をリードしていきたいと思っている」と、新体制に移行した狙いを説明した。
新たに社長に就任した武藤氏は1972年、ブラジルのサンパウロ生まれ。1994年アンダーセンコンサルティング(現・アクセンチュア)に入社したのを皮切りに、マッキンゼー&カンパニー、サービスソースインターナショナル・ジャパン、Googleなどで勤務してきた。
「Google時代、AIをうまく使っているお客さまと、そうではないお客さまとの成果が大きく分かれていくことを目の当たりにした。いろいろな国を見比べたところ、日本とドイツはともに大都市にある企業がAIを活用しているものの、地方ではうまくAIを使っていない似たもの同士だったが、コロナ禍で大きく差が出た。ドイツはコロナ禍で大都市以外に拠点をもつ中小企業もAIを活用し、伸長したのに対し、日本企業には大きな変化がなかった。日本は大きなチャンスを逃したと感じた。そんな結果を見て、日本でも中小企業がAIを活用することに寄与する企業で仕事をしたいと考えた。日本企業の約6割がChatGPTもGeminiも利用していない。中小企業が本格的にAIを使うためには、ソフトにAIを埋め込むことが重要。そう考えてソフトの会社で働きたいと考えた」と弥生を選んだ理由を話した。
弥生が手掛ける会計はAIと相性が良いと考え、「究極的にはAIによってすべて自動化していくことも不可能ではないと考えている」と述べ、会計にAIを積極的に取り込んでいく方針を示している。
ただし、デスクトップ版の弥生に関しては、「今の技術だとAIはクラウドが前提となっている。AIを活用したクラウド版だけでなく、依然として多くのお客さまがいるデスクトップ版は、これまで通り、最新税制に対応し提供していく。どちらを利用するのかを、お客さま自身に選択してもらえるようになれば」とし、現行製品を踏襲していく意向も強調している。
なお、弥生という企業のイメージが「会計ソフト」に集中していることから、「実は現在でも販売管理、給与など複数の製品があり、弥生Nextシリーズのような製品もある。会計ソフトウェアについても、利用者の意向にあったものをチョイスできるようなことも考えたい。弥生をマルチプロダクトのソフトウェア会社として認知してもらえることができれば」と、幅広い製品を提供する計画もあることを明らかにした。
こうした意向のもと、2025年のトピックとして次の4つを挙げる。
1)Mission Vision Valuesの刷新
2)弥生Nextシリーズのリリースとアップデート
3)FinTechとして新サービスの提供
4)会計事務所支援強化
1)のMission Vision Valueについては、現行の業務コンシェルジュから、もう少し積極的に、顧客とともに成長するものへと更新するとのことで、1月中旬に発表予定となっている。
2)の弥生Nextシリーズは、既にリリースしている「弥生給与Next」を大幅にアップデートし、春には「弥生会計Next」を正式にリリースする予定。
3)のFinTechについては、2024年に請求書即日払い、弥生請求書カード払いという2つのサービスの提供を開始したが、2025年にはさらに新しいサービスの提供を予定している。
最後の4)の会計事務所支援の強化については、1万2000事務所が会員となっている弥生PAPの会員向けに、新しいサービスを2025年中にリリースする計画だ。