ニュース

弥生の前山貴弘新社長が会見、“スピーディに新ビジネスを行える体制を目指す”

「中小企業ユーザーの困りごとを解決していく姿勢は、時代が変わっても変わらない」

 弥生株式会社は5日、4月1日にスタートした新しい経営陣を報道関係者にお披露目する懇談会を開催した。

 代表取締役 社長執行役員に就任した前山貴弘氏、代表取締役 社長執行役員から顧問に就任した岡本浩一郎氏が登壇。“新生弥生”が目指す方向を前山社長は、「ここ数年を振り返ると、新しいものを生み出すためにパワーをきちんと使っていなかったのではないか。結果としてスピード感も足りなかった。そういった反省があり、今回経営体制を変更し、新たな経営チームを編成した。元日本マイクロソフトの平野拓也を非常勤の会長に迎え、私の元新たな執行役員体制で新生弥生をスタートする」と新経営体制で新しい取り組みを進めるとした。

 新しい製品として、「これまでの業務ソフトの延長ではあるが、新しいクラウドネイティブなサービスの提供準備を進めている。詳細はあらためて発表していく」(前山社長)としている。

 また、岡本氏は顧問として勤務しながら、「しばらく休んで新しいことにチャレンジしたい。去年からAIの研究をしているが、AIをもっと真剣に学びたいと考えている」と話した。

弥生 代表取締役 社長執行役員の前山貴弘氏(左)、顧問で前社長の岡本浩一郎氏(右)

 新社長に就任した前山氏は公認会計士の資格を持ち、「私自身も弥生のユーザーであり、弥生のファンでもある。会計ソフトが大好きで、実は会計だけでなく、販売管理、給与も大好き」と、業務ソフト愛を訴える。

 弥生に入社したのは2007年だが、実は一度2011年に退社している。退社の理由は、「英語圏で仕事をしてみたいという強い思いがあり、思い切って退職し、2年間海外で働いた」と述べたように、英語圏での経験を積むことが目的だったという。

 退職後も岡本氏とは定期的に会っていた。その中で、「そろそろ帰ってきたら?と勧められたことで、2020年に戻ることになった」とした。

弥生 代表取締役 社長執行役員の前山貴弘氏

 退職した2011年と再入社した2020年、弥生を取り巻く環境は大きく変化した。freee、マネーフォワードなどクラウドの会計サービスが競合として登場したことをはじめ、業務アプリケーションとの連携サービスを提供する企業が次々に登場。デスクトップの会計アプリケーションとは異なる、新しい業務ソリューションの世界が生まれている。

 前山社長もこうした環境変化について、強く感じているようだ。「新しいものを生み出すパワーをきちんと使っていなかったのではないか。その結果としてスピード感が足りなかったのではないか」と、現状の反省点を指摘する。

 これを打破するために、元日本マイクロソフト社長の平野拓也氏を、非常勤ではあるが会長に招聘し、新たな経営チームを編成した。「われわれ自身が認識している課題に対処していく。具体的には、社会とテクノロジーがこれだけ変化していることをふまえ、スピード感を持ち、執行役員がそれぞれの職務を責任持って進めていく体制を作っていく。新生弥生では、お客さまにより早く良質なサービスをお届けしていくことを目指したい。それを実現する、社長としての責務を考えると、気持ちが引き締まる思い」とし、スピーディにサービス開発を進める経営体制とすると強調した。

 ただし、「freee、マネーフォワードもユーザー数を増やしているが、弥生は全国の中小企業の皆さんに一番多く使ってもらっている。それだけに日本の中小企業ユーザーの困りごとを一番知っている会社で、中小企業ユーザーがどんなところでつまずくのか、どんなところに困っているのかを理解している。そうした困りごとを解決していくという姿勢は、時代が変わっても変わらない、変えてはいけない部分だと考える」と以前からの弥生としての強みを継続していくことも強調した。

 新たな取り組みとして、「クラウドネイティブのサービスの開発を進めている」ことも明らかにした。これまでの業務ソフトの延長ではあるが、全く新しいサービスとなり、「詳細については、今後明らかにしていきたい」と前山社長は話した。

社長の賞味期限についてはずっと考えてきた

 一方、顧問に就任した岡本浩一郎氏は、「社長に就任した2008年、当時の株主から声がかかり就任したが、『3年は続けてほしい』ということだった。自分では、『5年は続けたい』と思っていたが、気がついたら15年経っていた」と就任時の気持ちを明らかにした。

 15年間を振り返り、「就任当時はリーマンショックが進行中で、厳しい局面もあったものの、社員の頑張りもあってお客さまの数、従業員数、パートナー数は就任時から大きく上回っている。売り上げについてもそれと共に拡大することができた」という。

 このタイミングで退任を決めたのは、「社長の賞味期限についてはずっと考えてきた。できれば、山がない、比較的平坦なタイミングでバトンタッチしたいと考えていたが、2023年は10月にインボイス制度が始まる年。大変な1年ではあるが、やることをやれば確実に成果があがる年でもある」とバトンを渡すのに適切なタイミングだと考えたとした。

顧問で前社長の岡本浩一郎氏

 岡本氏はインボイス制度に関しては、電子インボイス推進協議会を主導。電子インボイスは、税制度の変化であると同時に、テクノロジーと業務ソフトで蓄積したデータを活用した新たなビジネス開始のつながるものとなりそうだが、「新たなビジネスを創出することができなければ、業務ソフトメーカーとして将来がない時代が来る可能性もある」と、ビジネスの転換期に差し掛かっていると指摘する。

 こうした変化と共に自身の今後について、「昨年あたりから、AIの勉強を始めたが、社長を退いたことで、もっと本格的にAIの勉強をしたいと考えている」と話した。