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JR西日本カスタマーリレーションズとELYZA、生成AIを活用した顧客の声分析パッケージを開発
2024年12月4日 08:00
JR西日本の顧客センターを運営する株式会社JR西日本カスタマーリレーションズ(以下、JWCR)と、大規模言語モデル(LLM)の社会実装を進める株式会社ELYZAは3日、JWCRのコンタクトセンターにおいて、生成AIを活用したVoC分析パッケージの実運用を開始したと発表した。
これにより、これまでは実現困難だった、顧客の声全件に対して、一律のルールを用いて効率的に集計された結果を、ダッシュボードで可視化できるようになった。また、分析結果をサービス改善や新たな施策の探索につなげるため、発生した事象の真因分析や改善施策の仮説出しのサポートを行うVoC分析AIアプリも提供予定としている。
JWCRとELYZAでは、顧客対応業務の品質向上・業務負担軽減を目指し、システムおよび業務フローのあり方を、生成AI起点で一から見直すDXのプロジェクトを共同で2022年から実施している。2023年3月には、メールでの問い合わせの内容要約業務において生成AIの活用を開始し、2023年9月には電話での問い合わせの内容要約業務にも生成AIを導入している。
今回のVoC分析パッケージもこのプロジェクトの一環となり、生成AIによる均質化された要約データを前提に、これまで以上に効果的、効率的に顧客の声を分析し、サービス改善や新たな施策の探索につなげていくものだとしている。
JWCRの顧客センターでは、月間で約7万件の電話やメールでの問い合わせを受け付けており、その応対履歴を全て要約・テキスト化して保存している。これは、VoC(Voice of Customer、顧客の声)と呼ばれるデータに該当し、これら顧客の声を可視化・分析することで、事業運営上の顧客応対の品質向上やサービス改善に向けた示唆を得る活動になるとしている。
VoC分析パッケージの導入以前は、入電や問い合わせの応対履歴1週間分に対し、Excelマクロを用いて定型項目を集計し、その結果を踏まえて集計担当者がトピックを選び、集計をしてした。導入後は、ダッシュボードを開くと、直近2週間分の応対履歴が既に可視化された状態で、応対履歴の概況から注目すべきトピックにあたりを付け、報告内容をまとめられため、30分程度で週報を作成できるようになったという。
また、非常時は通常時の約5〜7倍の入電や問い合わせがある中で、件数集計や内容把握を行うため業務負担が大きくなっていたが、VoC分析パッケージを使うことで、入電や問い合わせの応対履歴を自動的に集計・可視化でき、集計作業の業務負担が軽減できた。グラフなどで可視化されるため、視覚的特徴を捉えやすく、深掘りすべきトピックにあたりを付けやすくなり、さらに、トピックごとに深掘りできるため、対策・対応・情報発信の工夫に生かしやすくなったとしている。
VoC分析は担当業務領域により、分析したい観点が異なる点も課題となるが、今回のVoC分析パッケージは、立場の異なる三者がそれぞれ評価をしていると説明。経営層は、顧客起点の経営を実現するためには、「顧客の気持ちを理解すること」と「組織全体で課題解決に挑戦する姿勢」が社内全体に浸透することが必要だとして、今回の取り組みを通じて、1日6000件の声を網羅し、必要な視点から分析できる仕組みを整備したことで、新入社員から部門長までが、顧客の声により簡単に向き合えるようになるとしている。
VoC分析担当者は、問い合わせ内容がダッシュボードで分かりやすく可視化されているため、サービス改善のためのアイデアに素早くたどり着け、「日々の問い合わせ件数がどんな要素によって増減するのか?」「定期券に関する問い合わせはどんな内容が多いか?」「新たな観光列車に対する顧客の不明点はどこにあるのか?」といった要素を効率的にキャッチアップできるとしている。
顧客対応担当者は、これまでは季節波動による問い合わせ傾向の変化など、「肌感覚」を基に集計・報告していたが、客観的に捉えられるようになり、集計・報告だけでなくオペレーターにも「この問い合わせが増えている」「このプレスの反響は大きい」と周知できるようになり、オペレーターが事前に資料を確認しておくなど、顧客対応に備えられるようになったとしている。
JWCRとELYZAでは、分析結果をサービス改善や新たな施策の探索につなげるためのVoC分析AIアプリも準備中で、従来のBIツールでは対応しきれなかった、発生した事象の真因分析や改善施策の仮説出しのサポートを生成AIの技術を用いて実現していくとしている。