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コンカーが自動不正検知サービス「Verify」など、AI関連機能を複数発表

 株式会社コンカーは17日、経費精算サービス「SAP Concur」において、AIによる自動不正検知サービス「Verify」など、AIとビッグデータを活用した新サービスや新機能を複数発表した。

 コンカー 代表取締役社長の橋本祥生氏は、「コンカーは、経費精算のない世界の実現を使命としている。経費精算業務は、ビジネスパーソンにとって付加価値のない業務。その業務をなくしてしまいたい」と述べ、今回発表するサービスがその世界を実現するとした。

コンカー 代表取締役社長 橋本祥生氏

自動不正検知サービス「Verify」

 コンカーでは「キャッシュレス」「入力レス」「ペーパーレス」「承認レス」「運用レス」の5つの「レス」をテーマにさまざまなサービスを提供してきたが、承認レスの部分で欠けていたAIによる自動不正検知サービス「Verify」を、2025年春に日本市場でリリースするという。これにより、「経費精算のない世界が実現可能となる」と橋本氏は述べている。

経費精算のない世界をつくる

 Verifyは、経費精算の申請後、AIが申請内容を自動チェックするサービスだ。例えば、申請内容と領収書の内容に整合性が取れているか、領収書の画像に使い回しがないか、社内の規定に違反した経費がないかなどをAIがチェックする。「コンカーでは年間30億件の経費明細を取り扱っているため、大量の学習データがある。このデータを基に、従来膨大な工数をかけて行っていたチェック作業を、ワークフロー上でAIが自動チェックする。これによって工数が削減できるだけでなく、人の目では見抜けない不正が検知できるようになる」と、コンカー ソリューション統括本部 ソリューションマーケティング部 部長の舟本憲政氏は説明する。

 AIで判断できない項目は、コンカーが運用するチェック担当者のAuditorが人の目でもチェックを加え、精度の高い監査を実現するという。

Verify全体像

 現在米国ですでにリリースされているVerifyでは、監査項目が30種類以上にのぼっており、市場平均価格との差分検知や、不適切な加盟店の洗い出し、重複した領収書の検知、領収書突合による整合性確認などが可能となっている。舟本氏によると、日本でのチェック項目は現在検討中だという。

 Verifyを導入する価値について舟本氏は、「提出されたレポートをVerifyがチェックするため、ガバナンスが強化されるほか、チェック作業をVerifyが代行するため生産性が向上する。また、経費の不正による被害コストも削減できる」としている。

Verify導入の価値
Verifyで可能なチェック
コンカー ソリューション統括本部 ソリューションマーケティング部 部長 舟本憲政氏

SAP ConcurにさまざまなAI新機能が登場

 Verifyのほかにも、SAP ConcurにはAIを活用したさまざまな新機能が登場する予定だ。

 まずSAP Concur全体では、管理者が利用するサポートポータルに生成AIが搭載される。「これまでは、ある手順を検索すると対象の記事が表示されるだけだったが、生成AIが実際の解決手順をリアルタイムに作成するようになる」と舟本氏。すでに英語版では対応しており、日本語版は2024年冬に対応する予定だという。

 「Concur Expense」の機能のひとつである「Request Assistant」は、2025年にアップデートが予定されている。これにより、出張事前申請時の概算金額見積もりをAIが自動で算出できるようになるという。今後は「会社の規定や過去の履歴を反映した見積もりを出すなど、さらなる精度の向上を図る予定だ」と舟本氏は話す。

 また、Concur Expenseの「ホテル領収書明細化機能」も2025年にアップデートされる予定で、SAP Concurにホテルの領収書をインポートすると、領収書の情報が自動入力されるようになる。日付ごとの明細なども瞬時に入力されるため、「これまでの手動による入力の手間が大幅に削減できる」と舟本氏は述べている。

 「Concur Travel」では、SAPの対話型AI「Co-Pilot Joule」を活用した出張手配機能が2025年にリリースされる。これまでは、自ら出張のフライトを手配する際に、会社の規定に合ったフライトを表示するなどの機能が備わっていたが、Co-Pilot JouleによってAIと対話するようにフライトの手配を進められるという。

 JouleがSAP Concurに搭載されるのは、Concur Travelが最初となるが、「今後コンカーのすべてのサービスにJouleが搭載される予定だ」(舟本氏)という。

 「Concur Invoice」では、年内にAI-OCR機能が拡充される予定だ。これまでにもパートナーとの連携によって実現していた機能だが、Concur Invoiceの標準機能となる。これにより、請求書を指定されたメールアドレスに送付するだけで、請求書の内容をAI-OCRが読み取り、支払先などの情報がすべて自動入力されるようになる。

今回発表したAI関連機能・サービス

 SAP Concur プロダクトマーケティング最高責任者のクリストファー・ジュノー(Christopher Juneau)氏は、「過去10年間、当社は経費精算管理の分野にAIを取り入れてきた。今後もAIとビッグデータを活用したサービスの展開を目指し、進化していく」と話す。また、日本がSAP Concurにとって世界で2番目に大きな市場であることを強調し、「先週も日本の公共機関分野に向けたデータセンターを稼働開始したばかり。特定分野向けのデータセンターに投資したのは、米国以外では初のことだ。今後も日本向けの製品やサービスを強化していく」と述べた。

左から、コンカー 代表取締役社長 橋本祥生氏、SAP Concur プロダクトマーケティング最高責任者 クリストファー・ジュノー氏、コンカー ソリューション統括本部 ソリューションマーケティング部 部長 舟本憲政氏