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JBCCホールディングスが新中計を発表、2026年度に売上高720億円以上、営業利益率10%以上を目指す
2023年度連結業績は増収増益、ただし上方修正値に対しては利益で未達
2024年5月13日 06:00
JBCCホールディングス株式会社は10日、新たな中期経営計画「CHALLENGE 2026」を発表した。
最終年度となる2026年度の売上高が720億円以上、営業利益率10%以上、ROE17%以上を目指すほか、クラウドの売上高で180億円、セキュリティの売上高で120億円、SIにおける超高速開発の比率を75%に高める計画を明らかにした。
JBCCホールディングスの東上征司社長は、「注力事業の進化と深化、経営基盤の強化と高度化に挑戦する3年間になる」と位置づけ、「毎年、増収増益が着実に繰り返され、過去最高の営業利益を更新する体制を継続する。会社としての質を向上させていく」と、成長戦略に意欲をみせた。
また「JBCCグループは、SIとしては、早い段階にクラウドファーストに移行し、マルチクラウドを徹底的に推進してきた。だが、これまでの延長線上では、次の3年間で目指す目標を達成できない。クラウド、セキュリティ、超高速といった注力分野に、さらにリソースを集中する必要がある。人材を採用し、処遇をよくすることも大切であり、大きなチャレンジになる。中期経営計画の名称を、CHALLENGE 2026としたのは、挑戦をしつづけることが、事業構造変革をさらに推進することになると考えたためである」と説明した。
同社では、中期経営計画の名称を、「Innovate 2016」、「Transform 2020」、「HARMONIZE 2023」としてきた経緯がある。
売上高720億円以上を目指す継続的成長に向けては、クラウド、セキュリティを中心に、ストックビジネスの比率を現在の40%から、2026年度には60%に拡大。事業構造変革をさらに加速させ、継続的な成長を実現する。
「利益率が低い従来型ビジネスが残っているが、これを緩やかに失いながら、クラウド、セキュリティを成長させる」という。
クラウドは、2023年度実績で72億円の売上高を、2026年度には180億円に拡大する。年平均成長率は36%増という高い伸びを想定している。マルチクラウドへの移行支援や運用サービスの拡大、SaaSの運用サービス拡大による粗利率の改善、データおよびAIを活用した新規ビジネスの創出、Qanat Universeによるクラウドデータ連携基盤の活用、戦略的なパートナーシップの推進、ウェブマーケティングの推進による新規顧客の開拓を進める。
セキュリティは、2023年度実績の55億円を、2026年度には120億円に拡大。3年間の年平均成長率は30%増となる。包括的なセキュリティサービスの提供や、ゼロトラストセキュリティを中心とした高付加価値サービスの拡充、マルチクラウド環境下における特定のセキュリティメーカーからの依存脱却、販売チャネルの拡大、AIの活用などを進める。
営業利益率10%以上を目指す収益性の向上では、独自の開発手法である超高速開発において、マイクロアセットサービスの推進と、アセット適用率の向上、ストックビジネスにおける高付加価値サービスの提供を進める。
「システム開発における売上総利益率を10ポイント改善させ、これをドライバーにして、営業利益率10%以上を達成する」とした。
ここでは、独自のアジャイル型開発とローコード開発を組み合わせた超高速開発により、高品質、短納期、高付加価値を実現することで、SI全体の超高速開発比率を60%から75%に引き上げる目標も掲げている。
また、構想策定や要件定義といった上流工程において、マイクロアセットサービスによる提案を加速することで、超高速開発における利益率改善にも取り組む。注力業種である学習塾の基幹システム開発事例ではアセット適用率が当初予定では10%だったものが、最終的には35%に拡大。同じく注力業種の食品卸業の事例では5%から30%に拡大しているケースがあるという。また、注力業種外となる金属加工業の事例では、基幹システム開発当初は5%だった適用率が、完了時には20%にまで拡大する例も示した。
「マイクロアセットサービスは、これまでの経験で得られたものをベースにしている。現状分析を行い、要件を絞り込むとアセットの適用率が高まる。ノウハウが蓄積されている注力業種だけでなく、注力業種外でもアセットの適用率を高めることが確認できている。お客さまにとってはコストが下がり、バグや障害が少ないというメリットも提供できる」といしている。
さらに、経営基盤の強化および高度化を進め、人材への投資やガバナンスの強化、DXの加速、リスクマネジメント体制の高度化を通じて、柔軟で強固な経営基盤を構築。経営品質の向上を推進する。
「これまで以上に経営基盤を強化する必要がある。キャリア採用を積極化し、人材や技術力への投資を継続する」としたほか、「これまでの知見を生かして、短期間に、質の高い開発を行い、基幹再構築を支援していくことになる。今後はAIを活用したサービスを提供していくことも考えている」とした。AIの活用については、その多くが、顧客とともにトライ&エラーを行う案件であるというが、「お客さまのシステムに、AIをきめ細かく適用することで、顧客に対する付加価値が出せると考えている」とも述べた。
人財戦略では、今後3年間で25億円の戦略投資予算を計上。過去3年間の1.5倍の規模の投資を行う。内訳では、高度人材確保で8億円、処遇改善やキャパシティ維持に13億円などを予定している。
同社では、「Style J」と呼ぶ独自の取り組みを通じて、定年退職の廃止や副業の推奨、新入社員以外への成果主義の採用を進め、働き方を大きく変革。2024年4月からは、重要顧客戦略の策定や大型案件開発に特化した高度営業専門職や、技術部門におけるスキル特化型高度技術専門職を導入し、役員待遇を行っているという。また、これらの専門職を活用して、社外向けの「JBCCアカデミー」の提供を行っていく考えも示した。
「専門職では、自分の経験をJBCCグループで生かしたいと思っている人たちに、集まってもらいやすい処遇を実現した。JBCCアカデミーや専門職を生かして、JBCCグループの知名度を業界内にもっと高めるといった狙いもある。また、新卒およびキャリア採用も半分は女性にしたい。2024年4月の新卒採用は44%が女性だった」と述べた。今後3年間は、毎年50人の新卒採用、毎年50人のキャリア採用を計画している。
2023年度連結業績は増収増益
一方、JBCCホールディングスが発表した2023年度(2023年4月~2024年3月)連結業績は、売上高は前年比12.1%増の651億9400万円、営業利益は17.5%増の44億2200万円、経常利益は18.2%増の45億4900万円、当期純利益は19.0%増の31億8700万円となった。売上総利益率は29.7%、営業利益率は6.8%、ROEは15.5%となっている。
「営業利益は2年連続で過去最高を更新した。売上高、利益ともに前年比2桁増の力強い成長を実現している」と総括した。
だが、2023年10月の上方修正値に対しては、利益では目標に対して未達となっていることに触れ、「その大きな理由は、複数の大規模システム開発プロジェクトにおいて、監査法人の協力を得て、厳しい目で評価し、追加の引き当てを行ったのが理由である」とした。
この点については、さらに詳しく説明。「従来は年商100億円~200億円規模のお客さまが中心であったが、ここ数年で年商1000億円~2000億円のお客さまが増えている。クラウド、セキュリティの1件あたりの受注高が拡大し、プロジェクト規模が従来の10倍程度に拡大し、20億円や30億円規模になっている。求められる品質が高まっており、これまでの経験では対処できない部分もある。より厳しい目で見る必要があると考えた」とした。
そして「例えば、業態や業務の理解は当たり前の話であるが、現状分析の際には、プロジェクトメンバー全員が現場を回り、さらに、メンバーの理解度がどこまで高っているのかをお客さまとともに確認するといった作業も開始している。現状分析や要件定義に時間がかかっている。大切なのは品質をあげていくことであり、プロジェクトを正常に動かすことを重視している」と説明している。
2023年度のセグメント別業績は、情報ソリューション分野の売上高が前年比12.6%増の632億2100万円、売上総利益は同8.2%増の180億9600万円。
そのうち、SIの売上高が前年比7.5%増の179億2100万円、売上総利益が同2.1%増の58億7600万円。サービスの売上高が同18.3%増の327億1900万円、売上総利益が同14.5%増の96億700万円。システムの売上高が同6.4%増の125億8100万円、売上総利益が同1.7%増の26億1200万円となった。
「SIの注力領域である超高速開発に従事している社内400人、パートナー160人のSEはフル稼働状態となっており、新規商談のプロジェクトはすべて今年秋以降になる。また、サービスでは注力領域としているクラウドとセキュリティが牽引し、大幅な成長を遂げた。システム分野は、失うビジネスと位置づけ前年割れを想定していたが、国産メーカーのメインフレームの製造中止に伴い、脱メインフレームの大型案件があった。期待値以上の成果が出ている」と振り返った。
超高速開発の売上高は前年比6.3%増の77億8400万円。また、クラウドの売上高は前年比48.3%増の72億7500万円、セキュリティの売上高は42.2%増の55億1100万円となり、クラウドおよびセキュリティは、市場全体の成長を大きく上回る実績になっている。
製品開発製造分野の売上高は前年比1.6%減の19億7300万円、売上総利益は0.7%減の12億8400万円となった。クラウドデータ連携の販売本数は、前年比97.4%増の4582本になっている。
2023年度は、3カ年の中期経営計画「HARMONIZE 2023」の最終年度となったが、「事業構造を変え、失うビジネス(システム)から、得られるビジネス(クラウド)へのシフトを進めた。売り上げが底を打ち、継続的に増収増益を繰り返し、過去最高営業利益を毎年繰り返す土台ができた」と総括。売上高600億円、営業利益33億円、当期純利益22億円という中期経営計画の目標はすべて達成した。
「過去3年間、クラウドやセキュリティの月間売上高にこだわってきた。新規受注では50%増を目標にしており、その売上高の12カ月分が次年度の売上高に加わることになる。クラウドでは必ずマルチクラウドを提案し、セキュリティも複数のクラウドを対象にしたものを実装した。これがお客さまにとっての価値になり、当社にとっての価値になる」と述べた。
なお、2024年度(2024年4月~2025年3月)の連結業績見通しは、売上高は前年比2.0%増の665億円、営業利益は同15.3%増の51億円、経常利益は同14.3%増の52億円、当期純利益は同12.6%増の35億9000万円とした。
セグメント別業績見通しは、情報ソリューション分野の売上高が前年比1.8%増の643億5000万円、売上総利益は4.4%増の189億円。そのうち、SIの売上高が0.4%増の180億円、売上総利益は7.2%増の63億円。サービスの売上高が7.3%増の351億円、売上総利益は7.7%増の103億5000万円。システムの売上高が10.6%減の112億5000万円、売上総利益は13.9%減の22億5000万円とした。
また、製品開発製造の売上高は前年比9.0%増の21億5000万円、売上総利益は9.0%増の14億円を見込む。
- JBCCの決算短信に誤りが見つかったため、連結業績見通しについて、初出時から数字を変更しております。なお、「2025年3月期 業績予想・配当予想」のスライドは初出時から正しい数字が記載されております。