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米Oracle、「Oracle Database 23ai」クラウド版を提供開始 AIを意識して名称を変更

 米Oracle Corporation(以下、Oracle)は5月2日(米国時間)、データベース製品の最新版「Oracle Database 23ai」のクラウドサービス版の提供を開始した。オンプレミス版も後から提供される予定。

 Oracleのクラウド「Oracle Cloud Infrastructure(OCI)」上の「Oracle Exadata Database Service」、「Oracle Exadata Cloud@Customer」、「Oracle Base Database Service」と、MicrosoftのAzure上の「Oracle Database@Azure」で利用できる。

 Oracle Database 23aiは、19i以来のLTS(長期サポート)リリースにあたり、通常の5年サポートに加えて3年のエクステンデッドサポートが提供される。

Oracle Database 23ai

 Oracle Databaseはこれまで、「Oracle 8i」(「i」はインターネット)、「Oracle 10g」(「g」はグリッド)、「Oracle 12c」(「c」はクラウド)など、バージョン番号の後に接尾語を付けてきた。

 Oracle 23では今まで、OCI上にOracle Database「Base Database Service」での「Oracle 23c」と、開発者向けの「Oracle 23c Free」で先行提供されてきたが、正式提供開始にあたって「Oracle 23ai」と、AI(人工知能)にちなんだ接尾語が付けられた。なお、「23」は2023年リリースを意味する。

 Oracle Database 23aiの特徴について、日本オラクルは5月9日に記者説明会を開催。米Oracleのデータベース・プロダクト・マネージメント担当バイスプレジデント、ジェニー・ツァイ・スミス氏が、その機能について説明した。

米Oracle データベース・プロダクト・マネージメント担当バイスプレジデントのジェニー・ツァイ・スミス氏

Oracle Database 23aiの主な新機能

 スミス氏はOracle Database 23aiでは、300を超える新機能と、数千の拡張があると語った。特にAIを利用したアプリケーションをサポートするために、どのような機能が必要かを議論して追加したという。

 その中からスミス氏は、「アプリケーション開発でのデータの扱い」「ミッションクリティカルなデータ」「AIの機能」の3つのカテゴリーの新機能を紹介した。

アプリケーション開発の新機能:JSONとリレーショナルの統合など

 「アプリケーション開発でのデータの扱い」でまずスミス氏が紹介したのが、「JSONとリレーショナルの統合」だ。

 「アプリ開発者はデータをJSONで扱いたがるが、JSONはデータの一貫性や柔軟性、分析に課題がある」とスミス氏。「例えば自動車販売で何千人という顧客のデータをJSONで保持していると、1つの要素を全員にわたって変更するときに、一貫性を保つよう注意してコードを書く必要がある」。

 そこでOracle Database 23aiでは、データ自体はリレーショナルデータベースで保持しつつ、そこにJSONビューを重ねて、リレーショナルデータベースのデータをJSONとして見たり変更したりできるようになる。これによって、アプリケーションからJSONでアクセスしつつ、一貫性を保てるため、アプリケーション開発を効率化してデータ効率を上げる、とスミス氏は説明した。

 同様に「グラフとリレーショナルの統合」として、グラフデータベースのクエリとリレーショナルを統合した。

「アプリケーション開発でのデータの扱い」の新機能

ミッションクリティカルの新機能:RAFTレプリケーションなど

 「ミッションクリティカルなデータ」については、まず、コンセンサスベースのレプリケーション「RAFTレプリケーション」によるグローバル規模の分散データベースの機能がある。従来のOracleシャーディングに代わるもので、マルチマスターの分散データベースを単一のデータベースイメージとして提供する。ユースケースとしては、ハイパースケールやデータ主権などのを想定しているという。

 「Oracle True Cache」は、Oracle Databaseの中で透過的に動作する、インメモリの中間層キャッシュだ。一般に、クエリが多いユースケースではデータベースの外部にクエリ結果のキャッシュ機構を設けることがある。それに対してTrue Cacheは、データベースの中にあるためキャッシュの管理のためのコードが必要なく、一貫性も保たれるとスミス氏は長所として語った。

 「データベース内SQLファイアウォールは、Oracle Database 23ai内部に組み込まれたファイアウォールだ。これにより、SQLインジェクション攻撃を含む攻撃からデータベースを守る。これまで同様のケースでは、データベースの外部に『Oracle Audit Vault and Database Firewall』を置いていたが、複雑であり、パフォーマンスが高くなかった」とスミス氏は説明した。

「ミッションクリティカルなデータ」の新機能

AIの新機能:ベクトル検索など

 3つめの新機能のカテゴリーは、23aiの名の元にもなっているAIの機能だ。ここにおけるOracleのゴールとしてスミス氏は、あらゆるペルソナ、あらゆるアプリケーション、あらゆるワークロードにおいて、AIの便益を享受できるようになるものだと語った。

 Oracle Database 23aiのAI関連の新機能としては、まずベクトル検索の機能がある。ベクトル検索とは、文書や画像、動画などの内容を見て、意味的に近いものを探す技術だ。仕組みとしては、コンテンツをn個の数字の並び(ベクトル)として表現し、n次元空間で近い距離にあるものを探すようになっている。

 Oracle Database 23aiではベクトル検索のために、ベクトルのデータ型と、ベクトルデータのインデックス、ベクトル検索の演算子の3つが用意された。これにより、例えばカスタマーサポートが顧客からのイシューについて過去の類似事例を検索する場合や、生成AIのRAG(ベクトル検索の結果から生成AIが答える手法)などに使える、とスミス氏は語った。

 また、異種IT環境間でデータレプリケーションする「Oracle GoldenGate」も最新版の「GoldenGate 23ai」がリリースされ、異なるベクトルデータベースとのレプリケーションに対応した。

 そのほか、データベースアプライアンスExadataのソフトウェアも「Oracle Exadata System Software 24ai」となり、ベクトル検索に対応した。

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