ニュース

日本オラクル、グローバル分散DB「Globally Distributed Autonomous Database」を提供

 日本オラクル株式会社は5日、「Oracle Globally Distributed Autonomous Database」の提供を開始すると発表した。

Globally Distributed Autonomous Database

 オラクルが持つミッションクリティカルアプリケーション向けシャーディング技術を基盤に構築。Oracle Autonomous Databaseの利点を提供すると同時に、データ分散および配置ポリシーに沿って、ユーザーによる制御を可能にする。これにより、分散されたアーキテクチャの開発やデプロイを、より簡素化でき、データの分散ポリシーをユーザーが制御できる環境を、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)のフルマネージドサービスとして提供する。

 また、Autonomous DatabaseのAIと機械学習による自動化を、データ分散とシャード管理の自動化にまで拡大し、分散データベースの導入と管理の複雑さを解消。管理者は、分散データベースを1つの論理データベースとして管理し、自動化されたプロビジョニング、チューニング、スケーリング、パッチ適用、セキュリティ機能を活用することで、時間がかかる手作業や潜在的なエラーを回避することができる。

 企業はアプリケーションに対して、世界中のさまざまな場所に、データを自動的に分散して格納でき、個々のシャードごとにデータベースのスケーリングを自動化。需要に応じてリソースを増減し、高いレベルでのスケーラビリティと可用性を実現できるほか、データ主権要件への対応が可能になり、自律型運用や大幅なコスト削減といったメリットを享受できるという。また、既存のSQLアプリケーションを書き換えることなく、分散データベースを使用できるとした。

 米Oracle ハイアベイラビリティテクノロジー担当シニアバイスプレジデントのウェイ・フー(Wei Hu)氏は、「Oracleがデータ分散システムとして機能するDistributed Databaseの提供を開始したのは2017年からであり、モバイルメッセージの管理やクレジットカードの不正使用検知、パーソナライズ化したマーケティング、スマート電力メーターでの活用など、多くの顧客が多くの用途で利用している」と、これまでの流れを説明。

 「Globally Distributed Autonomous Databaseでは、自律化によって、ミッションクリティカルなアプリケーション向けの分散データベースの開発と利用を簡素化し、複雑性を取り除くことができる。あらゆるデータ形式やワークロード、プログラミング形式を大規模にサポートし、複数のデータセンターに分散したデータも自律的に管理できる点が特徴であり、豊富な機能を持ち、ミッションクリティカルな用途に活用できるクラウドネイティブなデータベースといえる。さまざまな選択肢を提供でき、妥協がないDistributed Autonomous Databaseとして、その恩恵を享受してもらえる」とコメントした。

 さらに、「最も多くの機能性を持った完全なDistributed Databaseとなる。ハイパースケールやフォールトトレランスの実現により、スケーラビリティとサバイバビリティを提供し、国内にデータを置きたいといった用途でも、データ主権も有した利用が可能になる。今後規制が厳しくなるデータ主権にもしっかり対応できる」と位置づけた。

米Oracle ハイアベイラビリティテクノロジー担当シニアバイスプレジデントのウェイ・フー(Wei Hu)氏

 また、「シャードによる複数の物理的データベースにデータを分散し、それを単一のデータベースとして稼働させ、分散している状況はアプリケーションからは見えないようになっている。データが必要な時には、リクエストするだけで透過的に処理される。シャードはレプリケートされているため、ひとつのシャードがダウンしても、ほかのシャードが利用できるアクティブ-アクティブの構成を実現する。シャードを追加しても自動分散が可能になる。新たにAutonomousとなったことで、マネージドサービスとして提供できる点も特徴である」とも述べた。

 さらに、ほかの分散データベースと比較し、各アプリケーションのニーズを満たすために、多くのデータ分散、レプリケーション、およびデプロイの方法をサポートしているのも特徴に挙げた。

 「Oracle Globally Distributed Autonomous Databaseはコンバージドアーキテクチャの仕組みを採用しており、データのスマートフォンのようなものだと考えてもらいたい。使える機能が登場したら、それを製品として提供するのではなく、新たなデータテクノロジーとして機能を追加していくことになる」とする。

 一方、「Oracle Real Applications Clusters(RAC)のテクノロジーが活用でき、SQLおよびNoSQLエンジンが利用できるようにしている。他社の同様の製品がSQLを利用できるようになるまでには時間がかかるだろう。NoSQLでは、レポーティングやアナリティクスには使えないという課題があるが、そうした点でもOracleには優位性がある。レプリケーションにおいても、同じデータセンター、同じリージョン、あるいはそれらをまたいだ柔軟な使い方が可能であり、遅延や帯域などのネットワーク特性に応じたレプリケーションも可能になっている」とした。

 また、Oracle Globally Distributed Autonomous Databaseでは、生成AIの統合により、Autonomous Database Select AI(Select AI)などの新しいツールを利用できる点も挙げた。

 Select AIによって、アプリケーションへのAIおよびMLの統合をサポート。大規模言語モデルを使用することで、自然言語による質問をSQLクエリに変換。適切な国や必要なシャードに自動的にルーティングされ、回答が生成される。

 Oracle Globally Distributed Databaseに関して、2つの事例を紹介した。

 米国の大手金融機関では、すべてのデータを米国内に置いていたが、インドでの取引データはインド国内に設置する必要があるため、シャードをインド内に設定し、ここでデータを管理。単一のデータベースとして運用しながらも、インドでの取引を分散させた。アプリケーションサーバーは変更せずに運用できたため、多くのアプリケーションの移行といった複雑な作業を回避できた点は、大きなメリットになったという。なお、ほかの国や地域で同様の規制が発生した場合にも、同様の対策を行うことになるとのこと。

米国とインドにおける、米国の大手金融機関の事例

 もうひとつが、Oracle Globally Distributed Databaseにおいて、Oracle BlueKaiを活用したハイパースケールの事例だ。104のコモディティサーバー、5408個のCPUコア、77.4TBのメモリの環境で、AerospikeおよびCassandraによる複雑化した状況で運用していたものを簡素化。SQL対応も可能とし、3つのデータセンターを連携した活用を行えるようになったという。

Oracle BlueKaiを活用したハイパースケールの事例

 なお、Oracle Database 23cについても言及。Raft Quorumベースのコンセンサスレプリケーションを備えており、データ損失ゼロ、3秒以下の自動アプリケーションフェイルオーバーを提供する。また、Oracle Globally Distributed Database 23c RAGを統合した「AI Vector Search」を今後提供するという。

Oracle Database 23cでは、データ損失ゼロ、3秒以下の自動アプリケーションフェイルオーバーを提供