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プライベートカンパニーになったSUSEをCEOが日本向けに紹介、国内でもパートナーエコシステム確立を図る

 独SUSEの日本法人であるSUSEソフトウエアソリューションズジャパン株式会社は、ビジネス事業戦略説明会を4月4日に開催し、SUSEのグローバルおよび日本でのビジネスについて解説した。

 SUSEは、商用Linuxディストリビューション「SUSE Linux Enterprise」を中心に、長くオープンソースでビジネスしている企業。近年では、コンテナプラットフォーム「Rancher」や、コンテナのゼロトラストセキュリティプラットフォーム「NeuVector」、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)/CentOS向けのサードパーティのエンタープライズサポート「SUSE Liberty Linux」なども展開している。

 説明会には、SUSEのCEOであるDirk-Peter van Leeuwen氏と、SUSEソフトウエアソリューションズジャパン株式会社のカントリーマネージャーである村上督氏が出席した。

SUSEのCEOであるDirk-Peter van Leeuwen氏
SUSEソフトウエアソリューションズジャパン株式会社のカントリーマネージャーである村上督氏

 Leeuwen氏は、2023年5月にCEOに就任した。それ以前はRed Hatに18年勤務し、2010~2021年にはRed Hat のアジア太平洋地域および日本のゼネラルマネージャーを務めている。2020年には、Red Hat法人の社長が空席になったのに際し、暫定社長を兼務してもいる。

 村上氏も、2023年10月にカントリーマネージャーに就任した。それ以前は、GitLabの日本カントリーマネージャーや、シトリックス・システムズ・ジャパンのリージョナルバイスプレジデントなどを務めている。

 今回の説明会は、20223年に就任した2人、さらに同じく2023年の8月に株式非公開のプライベートカンパニーになったSUSEについての、お披露目と現状紹介といえる内容となった。

ビルドサービスや管理ツール、RHEL/CentOSサポートなどを紹介

 Leeuwen氏がまず説明したのは、SUSEの歴史だ。SUSEは1992年から30年以上の歴史を持ち、オープンソースソフトウェア(OSS)で最も老舗の企業の1社といえる。

 SUSEはその間に、Novellによる買収や、Attachmateによる買収、AttachmateとMicro Focusの合併、EQTによる買収と、何度か経営が変わってきた。「それによって企業のオーナーシップが長く安定していなかったが、現在はプライベートカンパニーになり、安定して独立した運営ができる」とLeeuwen氏は説明した。

 歴代のプロダクトの中で、Leeuwen氏が重要なプロダクトの1つとしてまず紹介したのが、インターネット経由でソフトウェアをビルド(コンパイルやパッケージ化)できる「Open Build Service(OBS)」(2008年リリース)だ。これにより、OSSのプロダクトを作る人が誰でも利用してソフトウェアを作り、リリースサイクルを守れるようになったという。Kubernetesの公式パッケージのビルドでも、OBSを使っていることが発表されている。

 また、2014年にはLinuxシステムの管理ツール「SUSE Manager」をリリースした。これについてLeeuwen氏は、さまざまなLinuxディストリビューションに対応していることを強調した。

 2022年には、コンテナのゼロトラストセキュリティプラットフォーム「NeuVector」を買収した。それにともない、それまでOSSではなかったNeuVectorをOSS化した。

 さらに「本日説明する中で最も重要と考えていること」とLeeuwen氏が紹介したのは、2023年に「OpenELA」を、Rocky LinuxやOracleとともに結成したことだ。これは、RHELのダウンストリームディストリビューションとしてのCentOSのEOL(終了)と、RHELのソースコード公開を制限する新ポリシーに対抗して、RHEL互換ソースコードを公開するものだ。「多くの企業が、自社のシステムで使われているOSが終了となることによる潜在的なリスクを心配していた。そこで、RHELやCentOSのソースコードをフォークし、長期的にサポートできるようにした」(Leeuwen氏)。

 そして最後に紹介したのが、同じ2023年のSUSEのプライベートカンパニー化だ。「これによって、成長に向けたビジネスに投資できるようになり、顧客に還元できるようになった」とLeeuwen氏は語った。

SUSEの歴史

Liberty Linuxを含むLinux、Kubernetes、AIにフォーカス

 SUSEの立ち位置について、Leeuwen氏はSUSEのLinuxを開発しつつ同時にSUSE ManagerでさまざまなLinuxを管理できるようにすることを挙げた。

 また、KubernetesについてはRancherを開発し、これについてもさまざまなKubernetesを管理できるようにすると強調した。

 さらに、OSやコンテナにおいて、ゼロトラストセキュリティをデフォルトにすると語った。

 2024年にフォーカスする領域として、まずLinuxの分野では、「SUSEはユニークなポジションにある」とLeeuwen氏。「例えば最近、BroadcomによるVMwareの買収により、自社のインフラが単一のベンダーに依存するのは危険だと気付いた。顧客は代替となりうるものを真剣に模索している」(Leeuwen氏)。そして、Liberty Linuxによって、顧客のシステムを変更することなく、中断なしでライフサイクルを長くすると語った。

 2つ目の領域は、Kubernetesだ。これについてもLeeuwen氏は、SUSEは、クラウドネイティブや、エッジ、セキュリティにおいて強みを持っていると説明した。その中で、軽量Kubernetes製品「K3s」を紹介し、エッジなどで高く評価されていると語った。

 3つ目の領域は、AIだ。これについては、SUSE Enterprise LinuxにおけるHPCの技術や、各種の管理技術などをLeeuwen氏は挙げた。

SUSEの立ち位置
2024年にフォーカスする領域

日本でのパートナーエコシステム確立へ

 村上氏は、日本市場について説明した。

 まず、日本のエンジニア不足や低いデジタル競争力といった課題を挙げて、自動化やDXなどを見据えて事業を展開していきたいと語った。

 その中で、パートナーとの連携が不可欠であり、SIerやリセラーなどのパートナーのエコシステムを確立していきたいと村上氏は説明した。

 フォーカスしたい業界としては、スマートファクトリー化に向かう製造業や、デジタルでさまざまなイノベーションが起こっているリテール(小売業)、5Gによって変わってきているテレコム(通信事業)、クラウドに一部ワークロードを移しつつある金融業の4つを村上氏は挙げた。

パートナーエコシステムの確立にフォーカス
フォーカスしたい業界

 顧客事例についても、SUSEソフトウエアソリューションズジャパン株式会社 Head of Solution Architect Team, Japanの志方公一氏が紹介した。

 自動車部品メーカーでは、機械制御をコンテナ化して、アプリケーションを簡単にデプロイ(配備)できるようにした。入れかえるときも、1箇所から全体にデプロイできる。さらに、アプリケーションが落ちたときにもKubernetesの自己修復機能で復旧できることにより、オペレーターが現場に行って再起動することが少なくなった。

 また、大手銀行では、複数のコンポーネントから新しいサービスを構成するようなシステムを実現するために、メイフレーム上のSUSE Linuxで運用しているという。

SUSEソフトウエアソリューションズジャパン株式会社 Head of Solution Architect Team, Japanの志方公一氏
自動車部品メーカーの事例
大手銀行の事例