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ServiceNow、2024年の事業方針は“5+1” 公共分野や中堅企業など新たな顧客の拡大を目指す

 ServiceNow Japan合同会社は28日、日本法人における2024年の事業戦略を発表した。

 2023年のビジネスについて、執行役員社長の鈴木正敏氏は、「具体的な数値は明らかにできないが、日本法人の売上は受注件数、大型案件数共に大幅に増加し、売上2桁成長をさらに加速することができた。導入部署も人事サービス、顧客サービスなど非IT領域に拡大している」と好調さをアピールした。

 これを受け2024年は、中央省庁や自治体など公共機関、製造業など伸長している業界向けビジネスの加速、CRM活用の進化、日本発のパートナーエコシステムの確立、中堅/成長企業市場での本格事業展開などを注力ポイントとしていく。

 鈴木氏は、「大変悔しいことだが、日本がデジタル後進国と言われ、企業の生産性が課題となる一方、日本市場が注目され、ゼロ金利の解消、賃金の上昇などにより経済反転に導かれ、さらに生成AIというディスラプティング・テクノロジーが世の中を激変し、さまざまな競争関係が大きく変わると言われている。日本経済にとって大きなチャンスとされ、私もそれを信じている」と述べ、テクノロジー活用で日本企業のビジネス環境が大きく変わるとアピールした。

執行役員社長の鈴木正敏氏

2024年の事業方針は“5+1”

 ServiceNow Japanでは2024年の事業方針として次の5つを挙げる。

1)従来から多くのユーザーを獲得してきた通信、サービスプロバイダー業界に加え、公共サービス、製造業、金融サービス業向けビジネスを加速
2)顧客管理や商談管理にフォーカスした時代を超え、“Beyond CRM”として深化した顧客体験の実現
3)グローバルパートナーに加え、ローカルパートナーとの戦略的パートナーシップを確立し、日本発のパートナーエコシステムの確立
4)中堅/成長企業市場での本格的事業展開
5)お客様ファーストの価値提案・支援

 1)の新たな業界向けビジネスの加速は、製造業、金融業、公共サービスのビジネスが予想以上に伸長していることから、予定を前倒しで投資をさらに強化する。特に公共向けビジネスは大幅に体制を強化した。

 「昨年、製造、金融、公共分野で大きな成功があった。貿易、電力、ガス、その他、流通、運輸、メディア、不動産、商社などナショナルブランドと言われているような、日本を代表する各業界の企業に採用を決めていただき、大規模に活用が進んでいる」(鈴木社長)。

業界向けビジネスの加速

 また公共分野に対しては、中央省庁、自治体など公共事業者向けビジネスを包括的に強化する。具体的には、公共向けスペシャリストの配置を拡大し、営業推進体制を強化するとともに、デジタル人材育成の支援および公共向けパートナーエコシステムを拡充する。また、ガバメントクラウド上でも円滑に稼働するソリューションを提供するとした。

 「中央省庁、自治体に対してのフォーカスを強めていく。営業体制を約2倍にするとともに、各種スペシャリストの採用と配置を進め、組織全体として公共向けケーパビリティを高めていく。さらに、公共ビジネスにガバメントクラウドは切っても切り離せない。技術的な検証も踏まえ、ガバメントクラウド上で円滑に稼働するサービスのソリューションの提供を開始する」(鈴木社長)。

 さらに鈴木社長は、「単純な製品販売だけではなく、パートナーと協業し、公共の複雑な業務プロセスに私どものソリューションを適用していくことが非常に重要。今回、この件でプレスリリースを出したが、デロイト、アクセンチュア、NTTデータ、NEC、日立という日本を代表するシステムインテグレーターにエンドースメントを頂き、パートナーと一緒に日本の中央省庁のお客さまに対してサポートを強化し、国民サービス、市民サービス向上に役立っていきたい」とも話している。

公共向けビジネスを包括的に強化

 2)のCRM向けには、「ここ10年・20年のITの歴史において、必ず話題になってきた領域であり、お客さま情報と、そこに関わる商談情報をを360°見る・管理することは大きく進んでいる。ただし、それでお客さまの満足度が向上しているかといえば必ずしもそうではない。マルチチャネル化しているお客さまとのインタラクション、それが頻繁に発生する中、タイムリーにお客さまの期待に応えられているか、高品質なサービスをさまざまなチャネルやさまざまなサービス、商品ごとに均一したレベルで提供できているかが問題だ。まだまだお客さまにとっては満足度の低い状況ではないか」と述べ、現状が十分ではないと指摘する。

 この現状を打破するために、鈴木社長は、「私たちはデジタルワークフローという名の下、さまざまなお客さま接点を同一化し、1つのプラットフォーム上にやり取りに関連する全プロセスを整形化する必要があると考える。この実現が大きなポイントではないか。私たちのサービス・アンド・プラットフォームで統一されたユーザーインターフェイス、デジタルワークフロー、そして可視化のためのダッシュボードなどを使い、業務プロセスを横断的にオーケストレーションしていく。これにより、お客さまの要求への対応迅速化、リードタイムの圧倒的な削減を実現する」と述べた。

 また、「途中経過をお客さまが理解できないがゆえにたまるフラストレーションも、カスタマーエクスペリエンスの世界ではよく聞く課題。対応状況が可視化され、さまざまな商品やサービスごとにやり取りのプロセスが違うとインターフェイスも違うということなく、統一された高い次元のカスタマーエクスペリエンスを提供することによってお客さまの満足度を飛躍的に向上する。これが、“Beyond CRM”として私たちが貢献できるポイント」ともアピールしている。

“Beyond CRM” 進化した顧客体験の実現

 3)の日本発パートナーエコシステムの確立は、製品販売だけでなく、ユーザーがServiceNow製品を有効活用するためのリソース、スキル拡充などを、パートナーと共に進めていく。「コミュニティをより活性化し、新しい情報提供、新しい体験が提供できるよう支援を進めていく」(鈴木社長)とした。

日本発のパートナーエコシステムの確立

 4)の中堅/成長企業市場向け展開は、従来、大手企業向けに直接提案を行うビジネスに加え、これまで蓄積したノウハウを中堅/成長企業に提供していく。新たに、コアソリューションであるITサービス管理、顧客サービス管理に特化した中小/成長企業向けシナリオアプローチを推進する。さらに、この市場に強みを持つパートバーとの協業を進める。

 具体的な協業例となるのが、昨年8月、株式会社パソナグループなどが出資し設立されたAoraNow株式会社に、ServiceNowがServiceNow Ecosystem Venturesを通じ、戦略的投資を実施したことだ。2024年3月から、日本法人が事業連携を開始する。AoraNowを中心に、DX人材育成も含め、包括的なServiceNowソリューションの提供を規模や業界も多種多様な日本の顧客向けにアピールしていく。

中堅/成長企業市場での本格的事業展開

 5)の「お客様ファーストの価値提案・支援」では、“正しい”変革ビジョン定義、“正しい”導入、“正しい”実現効果検証を支援し、顧客のビジネス効果最大化を共に推進する。

 「私たちのソリューションは、単発で使うだけではなく、複数の部門で全社横断的に使っていただくことが、大きな効果を資するポイント。その際に重要なのは、私たちがしっかりビジネスケースを算定し、複数年のロードマップをお客さまと一緒に描き、デジタルイノベーションプロトタイプを策定し、お客さまのエグゼクティブと合意し、進めていく。この王道的なアプローチをさらに推進していく」(鈴木社長)。

 そのために、お客さまのプロジェクトを一貫して支援するツール、サービス、サポートをパッケージ化した「ServiceNow Impact」を提供するとした。

お客様ファーストの価値提案・支援

 また、この5つの注力ポイントに加え、「+1」として、顧客のビジネス上での生成AIの価値創出を支援する。汎用型の生成AIと、その企業の領域に特化したAI構築をServiceNowが支援し、汎用と領域特化という2つのAIの両方を活用できる単独プラットフォームを提供する。ユースケースベースで、ServiceNow主要製品のワークフローに組み込まれ、ビジネス上での活用が既に可能になっているという。

 「当社が既に提供している生成AI単独プラットフォームは、さまざまな立場の方がメリットを享受することできる。お客さまや従業員から見ると、さまざまな情報検索や問い合わせ、チャットの自動回答含め、圧倒的に効率化、自動化が可能になる。それに加え、サービスの担当者は、それまでのさまざまな事案の対応履歴をサマリーとする、自動的にナレッジ化するといったことを実現することを、生成AIによって進めていく」(鈴木社長)。

お客様ビジネス上での生成AIの価値創出