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シスコの新社長・濱田義之氏が会見、「シスコでないとできないことに挑戦していく」

シスコ 代表執行役員社長の濱田義之氏

 シスコシステムズ合同会社(以下、シスコ)の代表執行役員社長に2024年1月1日付で就任した濱田義之氏は24日、報道向けの会見を行い、事業戦略などについて説明した。

 「私はシスコに入社以来、テクノロジーイノベーションによるお客さまや社会への価値提供を追い求めており、その姿勢はいまも変わらない。ソフトウェアサービスを通じたサブスクリプションビジネスへの変革や、シスコのテクノロジーを活用した変革を進め、お客さまビジネスの成功と、日本の持続的成長および社会変革に対して、シスコでないとできないことに挑戦していく」と抱負を述べた。

テクノロジーイノベーションで日本の未来価値を創造

 またシスコでは、セキュリティ、ハイブリッドワーク、オブザーバビリティ、サステナビリティ、ハイブリッドクラウド、AIの6つを、グローバルでの注力領域に掲げているが、日本においては、特に、セキュリティ、サステナビリティ、AIに注力する考えを示した。

 「深刻化する脅威に対応するサイバーセキュリティ、生産性を高めるためのAI基盤の整備、GXによるサステナビリティへの取り組みを同時に進めていく必要がある。課題に対してピンポイントソリューションで対応するのではなく、お客さまのビジネスに貢献するソリューションをプラットフォームとして提供する」と語った。

グローバルの注力領域

 濱田社長は、日本大学理工学部電気工学科を卒業後、住友電工通信エンジニアリングに入社し、光伝送システム開発のエンジニアとしてキャリアをスタート。Coltテクノロジーサービス(旧KVH)を経て、2016年にシスコに入社。執行役員 最高技術責任者として、IoTソリューションの共同開発やスマートシティプロジェクトなどを担当。シスコセキュリティトラスト組織のメンバーの1人として、日本のサイバーセキュリティへの取り組みを支援した。

 2019年には情報通信産業事業に異動し、NTTグループを担当。2021年には専務執行役員 情報通信産業事業統括として、通信事業者やモバイル事業者、放送事業者、クラウド事業者、メディア事業者向けのビジネスを統括。日本における5G化や放送IP化などを促進した。2022年からは、アジアパシフィックジャパン&チャイナ地域(日本、韓国、中国、ASEAN、インド、オーストラリア、ニュージーランドなど)において、セキュリティセールス事業を担当するマネージングディレクターに就いていた。

 同社では、1月末に2024年度上期締めを迎えるため、現時点ではこれまでの職務も兼務。そのため、今回の社長就任会見は、拠点があるシンガポールからオンラインで行った。

 「海外から日本を見るのはいい機会であった。シスコジャパンは、パートナーやお客さまとの強固な関係が強みであることを実感した。一方で、グローバル組織としての連携強化、アジアのお客さまと日本のお客さまの考え方に差異を感じた部分もある。その経験をシスコジャパンのなかで生かしたい」と語った。

 日本における3つの重点領域のうちのセキュリティに関しては、「大企業で考えているセキュリティ対策と、それ以外の企業のセキュリティ対策が異なる点、セキュリティそのものが複雑化している点が課題である。セキュリティ対策が不十分なお客さまも多い。セキュリティが不十分であるにも関わらずDXを推進すると、あとから大きな問題が発生することになる。日本の企業においては、お客さまそれぞれに適した提案を、シンプルに提案していく必要がある」などと述べた。

 同社では、Cisco Security Cloudを発表。AIを活用して、効果的で拡張性に優れた保護を提供することができる点にも言及した。

 AIについては、「AI基盤をネットワークでつなげていく領域は大きなビジネスになる。Cisco Silicon Oneにより、拡張性を持ち合わせたネットワークを構築し、AI基盤の負荷を最小化し、消費電力を低減し、ジョブを加速させることを目指す」とした。

 ネットワーク機器の設定の自動化、構成変更の簡素化、障がい発生の予測などにAIを活用。「製品が多様化、複雑化しているが、シスコでは、オンプレミスからクラウドまでを、統一したインターフェイスで管理、運用できる環境を提供する。さらに、AIを活用して、効率性の向上やROIの向上につなげていく」と述べた。

 サステナビリティについては、製品提案において、持続可能な製品を提案。Cisco Green Payでは、IT機器を保有し、償却し、廃棄するのではなく、ライセンスやサービス期間などと組み合わせて、最新の省電力機器を利用する環境への移行を進めており、顧客から多くの問い合わせがあるという。

 シスコシステムでは、2040年までに、製品仕様やオペレーション、サプライチェーンを含めたすべてのスコープで、温室効果ガス排出量のネットゼロ達成を公約している。また、2025年までに、すべての新製品の設計に、サーキュラーデザイン(循環型設計)の考え方を組み込むことを目標に掲げている。

 濱田社長は、「世界デジタル競争力ランキングを見ると、日本は、世界のスピードには追いついておらず、デジタル化には遅れがある。ネットワークはDXの中核を担うプラットフォームであり、大企業だけでなく、教育や医療、SMBに向けても、シスコは貢献をしていきたい。特にSMB向けの製品を強化していく。日本の企業、日本のビジネスにあったものはなにかということをそしゃくし、本社と連携を取りながら、プラットフォームによる提案を推し進めていく。日本は、エンジニアリングリソースやデリバリー体制が強いのが特徴であり、パートナーとともにソリューションを作り上げてられる点が他社にはない強みになる」と述べた。

 さらに、ハイブリッドワークやハイブリッドクラウドの領域に向けても、日本において継続的な投資を進めることを示し、「AIの活用によってWebexの強化し、会議の体験を変えたり、コールセンターの省力化につなげたりしたい」と述べた。

 シスコでは、「すべての人にインクルーシブな未来を実現する」をパーパスに掲げている。「インクルーシブな未来をデジタルやテクノロジーによって実現するのがシスコの役割である。また、パーパスは、ESGへのコミットメントでもあり、ダイバーシティやセキュリティ、サステナビリティ、CSRの活動をバリューチェーン全体で推進することで、世界によりよい影響をもたらすことができる。CEOのチャック・ロビンスは、2025年までに、世界10億人に対してプラスの影響をもたらすという目標を掲げたが、この目標を1年前倒しで達成した」と述べた。

 また、「シスコはビジネス変革を行っており、ハードウェア中心からソフトウェア中心にシフトし、それによって生まれる価値を提供するために、お客さまに伴走する形でサービスを提供していく」とし、総売上に占めるサブスクリプション収益の割合が、2022年度の43%から、2025年度には50%に拡大させる計画であるほか、ソフトウェア売上に占めるサブスクリプション収益の割合は、2022年度の81%から、2025年度には85%に拡大することを目指している。

 「サブスクリプションにおけるソフトウェア収益が大きく成長している。ソフトウェアのほとんどがサブスクリプションの対象になっている。マネージドサービスにより、所有から利用に移行する提案をパートナーとともに進めており、これらをサブスクリプションベースで利用できるようにしていく」という。

イノベーションをお届けするビジネス変革

 一方、シスコが目指すべき企業文化として、「自律分散型組織」を掲げた。

 「ピラミッド型やトップダウン型ではなく、社員一人ひとりが自ら考え、思考し、ステイクホルダーが有機的につながり、アジャイルに動いていく組織を目指す。不確実性が高まる社会において、これが競争に打ち勝つための強みになる。ビジョンを共有しながらも、個性あふれるメンバーが、異なる考え方、異なるアプローチを許容し、信頼し、認めあい、成長しあえる企業文化を作りたい」とした。

 シスコは、日本における「働きがいが会社」の大企業部門で1位を獲得しており、こうした企業文化を生かしながら、自らの変化、進化により、社会への貢献を目指すという。