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富士通、自然言語で指示するだけで顧客業務に特化したAIを自動生成する技術を開発

 富士通株式会社は11日、先端AI技術を素早く試せるAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi(code name)- Fujitsu AI Platform」上で提供しているAIイノベーションコンポーネントについて、顧客が業務課題を自然言語で入力するだけでAIが課題の意図をくみ取り、適切な数式表現に自動変換し、顧客業務に特化したAIイノベーションコンポーネントを自動生成する技術を開発したと発表した。富士通は同技術を、Fujitsu Kozuchi(code name)- Fujitsu AI Platformに、2023年12月末までに搭載していく。

 富士通では、近年、ビジネス環境や社会情勢は変化が激しく、将来の見通しが不確かな状況になっており、それに伴って、変化に追従した最適なAIを人手で適用し続けることが難しくなってきていると説明。こうした課題に対応するため、富士通では2023年4月にFujitsu Kozuchi(code name)- Fujitsu AI Platformを公開し、独自技術であるAIコアエンジンとAIコアエンジンに他社サービスやOSSなどを組み合わせ、顧客が迅速にAI技術を活用できるようにしたAIイノベーションコンポーネントを提供している。

 一方で、顧客要件に合致するAIイノベーションコンポーネントが存在しない場合、AIエンジニアが顧客から課題を聞き取り、その課題をAIが解釈可能な数学表現へと時間をかけて人手で変換し、学習させる必要があったと説明。また、試作後も、その性能を顧客が確認しながら、要件と異なるところや、新たに判明した追加要件などの反映作業を繰り返し行う必要があり、最終的なAIイノベーションコンポーネントを提供し、顧客と実証実験を開始するまでに多くの時間を要することが課題となっていたという。

 こうした課題に対し、今回開発した要件学習技術は、大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)が標準的に変換するプログラムや数学表現を解釈し、顧客の要件を満たす解の集合をグラフ形式に変換することで、顧客の課題を専門家が作成する際と同じレベルの情報をAIに渡すことを可能にした。このグラフデータを学習することで、予測や最適化、異常検知といった、顧客が必要としするさまざまなAIモデルを自動生成することに成功した。

 また、グラフデータ上に過去の学習経緯をナレッジとして保存することで、新しい条件を追加した場合でも、過去に学習した情報を用いて効率的に再学習できるようにしている。これにより、顧客要件や環境の変化に対して、AIモデルを迅速に適応させていくことも可能にしている。

 今回開発した技術をLLMと組み合わせることで、試作と性能確認を迅速かつ容易に繰り返せるため、必要な情報をインタラクティブにユーザーに問い合わせることができ、現場の暗黙知や取り込んでいなかった要件などを考慮した、AIイノベーションコンポーネントの迅速な提供が可能になると説明。また、自動生成されたAIモデルや既存のAIモデルを複数組み合わせることによって、より複雑な顧客課題を解決するAIイノベーションコンポーネントを提供することも可能になるとしている。

開発した技術の特長

 富士通では、同技術を製造業の生産スケジューリングの最適化問題に適用したところ、従来約1カ月要していたAIモデル作成における工数を、1日に短縮できることを確認したと説明。同技術をもとに、最適化や予測、異常検知などを行うAIイノベーションコンポーネントの迅速な自動生成を目指すとしている。

 また、例えば、需要予測と生産スケジューリングのAIイノベーションコンポーネント同士を組み合わせ、需要に応じて生産スケジューリングを最適化するなど、より複雑な課題解決を実現するAIイノベーションコンポーネントを自動生成するフレームワークであるFujitsu Composite AIについて、2023年度末までに「Fujitsu Kozuchi(code name)- Fujitsu AI Platform」上だけでなく、Palantir Technologiesなどと連携し、外部プラットフォーム上にも実装することを目指し、これらの取り組みを通じて、AIが変化の激しい環境に対応可能にすることで、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。