ニュース

東京大学とNEC、「Beyond 5G」共同研究技術の社会実装に向けてキャンパステストベッドを活用した取り組みを開始

 国立大学法人東京大学大学院工学系研究科と日本電気株式会社(以下、NEC)は5日、高周波の利活用を目指したBeyond 5G共同研究技術の社会実装に向けて、「キャンパステストベッドへの共同研究技術の導入」と「未来社会創造に向けた共創活動」を開始したと発表した。

 両者は、第5世代移動通信システム(5G)の次世代となるBeyond 5Gに向けて、2021年12月に「Beyond 5G価値共創社会連携講座」を開設し、両者の知見を融合した研究開発、および人材育成についての取り組みを開始している。キャンパステストベッドでは、その研究開発成果を活用し、社会課題を解決するユースケースの実証を通じて、社会実装を目指す取り組みを行う。

 背景としては、5Gの社会実装により、時間・空間といった物理的制約から解放され、新たなコミュニケーション体験、および生活者の求める多様な価値観に寄り添った働き方や暮らしが実現できるものと考えられているとが、一方で、サイバーセキュリティの観点では、電波の漏れなどによって起こる情報漏えいやハッキングといった、社会問題の解決が求められていると説明。解決策としては、従来のように時間的・空間的な要素を考慮しない画一の無線通信を提供するのではなく、空間的にきめこまかく限られた領域で、通信の可否や通信品質を制御することが考えられるとしている。

 東京大学とNECでは、多様なアプリケーションがその場所で必要な通信品質や安全性を確保できるように、Sub6、ミリ波やサブテラヘルツなどの高周波の特性も生かしながら、安全・安心に情報通信を産業や生命維持に利活用するために、無線品質や安全性を要求に合わせて動的に提供可能な新たな情報通信の世界を創造するとしている。

 東京大学とNECが連携して目指す、「今だけ・ここだけ・あなただけ、安心安全堅牢な通信」を実現していくためには、柔軟かつ繊細な通信を提供できる可能性を持つ、高周波を利用していくことが必要になると説明。高周波は、高速・大容量な通信が提供できる一方で、その周波数特性が要因で、遮蔽物に弱く、通信エリアの構築が困難となる。こうした限られた通信エリアにおける通信の利用効率の向上のためには、利用者のアプリケーション品質要求を正確に捉え、優先的に高周波を利用することや、時にはSub6の利用に限定するといった、動的な通信制御が必須となる。

 取り組みでは、時間的・空間的な分解能を高め、周波数利用効率を向上させる「ダイナミック時空間スライシング技術」と、体感品質(Quality of Experience:QoE)や通信品質の変動を予測し、QoE要件を満たすよう通信リソースを制御する「End-to-End QoE制御技術」を、東京大学本郷キャンパスに構築しているキャンパステストベッドに導入し、連携させることで、高周波の活用も考えた新たな通信制御を可能とし、社会実装に向けたさまざまな実証やユースケースの創出を目指す。

共同研究技術の利活用をキャンパステストベッドで推進

 また、5Gは新たな社会システムであるSociety 5.0実現のための中核的な機能を担うことが期待されており、2030年代には、Beyond 5Gは時間・空間といった物理的制約を解放し、生活者の求める多様な価値観に寄り添った働き方や暮らしを可能とする、新たな社会基盤への進化が求められていると説明。そこで求められるBeyond 5Gの機能要件には、これまでの5Gの特徴的機能である「高速・大容量」「低遅延」「多数同時接続」のさらなる高度化に加え、新たに「自律性」「拡張性」「超安全・信頼性」「超低消費電力」といった機能が挙げられるという。

 このBeyond 5Gを用いた未来社会創造の一つとして、キャンパスやその周辺をベースとした未来シーンの検討を両者で実施。未来のキャンパスでは、敷地内を行き交う個人を認識し、それぞれに適した移動手段や食事の提供、ホログラムを活用したコミュニケーションなど、個人に寄り添ったサービスが生まれてくるとして、こうしたサービスを実現するために、時間・場所・人に応じてQoS(Quality of Service:QoS)を動的に制御しながら、最適な通信を提供していくことが求められるとしている。

 東京大学とNECは、Beyond 5G共同研究技術の技術有用性と社会受容性の両面をキャンパステストベッドで実証し、社会実装を目指す。キャンパステストベッドを苗床として、共同研究技術以外の東京大学・NECの技術(Local 5Gシステム、生体認証システムなど)やパートナーの技術を活用しながら、Beyond 5Gの新たな価値創出に向けて共創活動を推進していくとしている。