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リコーが2022年度連結業績を発表、すべての四半期で増収増益を達成

 株式会社リコーは8日、2022年度(2022年4月~2023年3月)連結業績を発表した。それによると、売上高が前年比21.4%増の2兆1341億円、営業利益が同96.6%増の787億円、税引前利益は同83.2%増の813億円、当期純利益は同79.0%増の543億円となった。

2022年度通期決算:連結損益計算書

 リコー コーポレート執行役員兼CFOの川口俊氏は、「すべての四半期で増収増益となった。特に、第4四半期の営業利益は391億円となり、大きく伸ばすことができた。オフィスサービスは成長軌道に回帰し、スクラムパッケージは9月以降に勢いが復活した。一方で、オフィスプリンティングは注残の完全解消ができず、翌期に持ち越している。ただし、注残は12月に比べると半分以上解消している。第2の柱としている商用印刷も需要が回復し、第4四半期で利益を大きく伸ばした」と総括した。

リコー コーポレート執行役員兼CFOの川口俊氏

 なお、営業利益に対して、原価増加がマイナス191億円、部品不足などでマイナス43億円、海上輸送費の増加でマイナス35億円の影響があった。

 2022年度は第20次中期経営計画の最終年度となり、計画当初は売上高2兆円、営業利益1000億円、営業利益率5%、ROE9%以上を掲げていたが、2022年5月に目標を修正したあと、さらに2022年11月には、売上高2兆1000億円、営業利益850億円、営業利益率は4%、ROEは6%に、計画を再修正していた。

 今回の決算では、最重視していた営業利益で計画未達となり、ROEでは5.9%とわずかに下回った。

 リコー 代表取締役執行役員社長・CEOの大山晃氏は、「第20次中期経営計画が未達となった結果は重く受け止めている。外部要因の影響が大きく、コロナ禍でプリントボリュームが大きく減少したことは、相当なネガティブインパクトがあった。だが、それを相殺するさまざまな施策を実行し、利益は回復してきた。組織の柔軟性についても評価してもらえる状況にある」と、経営体質の改善が進んでいることに手応えをみせた。

リコー 代表取締役執行役員社長・CEOの大山晃氏

 セグメント別では、リコーデジタルサービスは、売上高が前年比15.6%増の1兆6504億円、営業利益は同74.5%増の282億円。リコーの川口CFOは、「オフィスプリンティングではハードウェア製品の供給およびロジスティクスの改善により、受注残の解消が進んだほか、オフィスサービスでは第4四半期にはICT商材の不足がほぼ解消し、日本でのスクラムシリーズの販売に関しても、これから弾みがつくことになる」とコメントした。

リコーデジタルサービス

 2022年度のスクラムパッケージの売上高は前年比2%増の494億円、スクラムアセットは同84%増の577億円、スクラムシリーズ合計では同34%増の1071億円となり、通期売上高で初めて1000億円を突破した。

 「中小企業がターゲットとなるスクラムパッケージは、第4四半期には過去最高の販売本数となり、特に3月単月では1万本を超える新記録を達成した。継続しているセールス教育が効果を発揮したほか、電帳法対応に加えて、BCP対策支援などのバックオフィス系やセキュリティ関連が好調だった。さらに、中堅企業ターゲットを対象にしたスクラムアセットは、第4四半期の売上高が前年比106%増と大幅に伸長。Windows展開サポートやセキュリティ関連を中心に引き続き好調に推移している。RICOH kintone plusも、セールス育成プログラムの効果もあり、獲得契約数が伸長している」とした。

 スクラムシリーズの既存顧客への浸透率は約3ポイント増の16%となり、1社あたり0.35本増加の2.55本を導入しているという。「パッケージはいよいよ復調したと判断できる」と述べた。

 オフィスサービスのうち、欧州では買収効果やシナジー効果の刈り取りによって、売上高は前年比27%増の2040億円、米州はオンサイト、オフサイトの双方で売り上げが伸長し、前年比28%増の1377億円となった。

オフィスサービス

 リコーデジタルプロダクツは、売上高が前年比16.7%増の4403億円、営業利益は同24.0%減の315億円。第4四半期にはA4 MFPなどの受注残の改善はあったものの、通期では計画していた生産台数に届かなかったという。だが、フレキシブル生産やマルチリプレイスメント設計などの生産施策を年間通じて展開し、リスク対応力を強化したことを強調した。

リコーデジタルプロダクツ

 リコーグラフィックコミュニケーションズは、売上高が前年比25.5%増の2348億円、営業利益は前年度の4億円の赤字から145億円の黒字に転換。「商用印刷では、第4四半期にハードウェアの販売が大きく改善した。2023年度には新たな製品を投入する予定であり、パイプラインを積み上げ、この流れを継続したい」とした。

 リコーインダストリアルソリューションズは、売上高が前年比14.1%増の1135億円、営業利益は109.4%増の31億円となった。「欧米での市場在庫調整や中国経済活動の停滞により、目標を達成できなかった」という。

 買収したPFUを含むその他は、売上高が前年比461.5%増の1086億円、営業損失は122億円改善したもののマイナス32億円の赤字となった。

リコーグラフィックコミュニケーションズ
リコーインダストリアルソリューションズ
その他

2023年度通期業績は増収減益の見通し

 一方、2023年度(2023年4月~2024年3月)通期業績見通しは、売上高が前年比5.4%増の2兆2500億円、営業利益が11.1%減の700億円、税引前利益が8.7%減の742億円、当期純利益が8.0%減の500億円と、増収減益の計画とした。

2023年度見通し:主要指標

 「前年度の資産売却益や構造改革費用などを除くと、実質は約150億円の増益になる。最大の減益要因は構造改革であり、リコーグラフィックコミュニケーションズで工場の再編を行っている。また、リコーデジタルプロダクツではハードウェアの生産調整と、アフターサービスの減少が影響する。一方で、オフィスプリンティングでは、プライシングコントロールを継続して収益力を確保する。これまでの方向性や戦略を引き継ぎ、オフィスサービスを増やし、商用印刷もブーストしていく」(川口CFO)などと述べた。

 セグメント別業績見通しは、リコーデジタルサービスは、売上高が前年比3%増の1兆7000億円、営業利益は31.2%増の370億円。リコーデジタルプロダクツは、売上高が3.1%増の4540億円、営業利益は11.1%減の280億円。リコーグラフィックコミュニケーションズは、売上高が7.8%増の2530億円、営業利益は89.7%減の15億円。リコーインダストリアルソリューションズは、売上高が22.1%増の1420億円、営業利益は2.7倍の84億円。その他の売上高が35.5%増の1730億円、営業損失は2億円改善のマイナス30億円の赤字を見込んでいる。

 スクラムパッケージの売上高は23.7%増の611億円、スクラムアセットの売上高は17.7%増の679億円を計画している。

セグメント別 売上・営業利益の見通し

第21次中期経営戦略の追加説明を実施

 今回の会見では、リコーの大山社長・CEOが、2023年3月7日に発表した第21次中期経営戦略(2023~2025年度)について、追加説明を行った。

 第21次中期経営戦略では、営業利益で1300億円、ROEで9%超を経営指標に掲げており、2022年度実績で44%を占めるデジタルサービスの売上比率を、2025年度には60%超に高めることで、デジタルサービスの会社への変革を図る。

 「成熟しつつある領域から、成長分野にシフトし、デジタルサービスの売り上げを着実に増やしていく。また成熟領域においても、効率化により確実にキャッシュを創出する」との方針を繰り返し示した。

中長期目標:デジタルサービスの会社への変革

 2025年度の営業利益1300億円の計画に対しては、2023年度見通しの700億円を起点にした詳細な追加説明を行った。

 オフィスプリンティングの市場縮小が年平均4.5%減になり、220億円のマイナスを想定する一方、プラス要素として、オフィスプリンティングの利益改善で180億円、オフィスのデジタルサービスで350億円、商用印刷事業の拡大で165億円、新規事業やPFUなどのその他で125億円の効果を見込んでいることを明らかにした。

21次中経目標達成への道筋

 また、2025年度のデジタルサービスの売上高は1兆4700億円(2022年度実績が9416億円)としており、そのうち、現場のデジタル化が約2800億円(同1440億円)、オフィスのデジタルサービスが約1兆2000億円(同7976億円)とする計画を示しながら、「デジタルサービスでは、ストック収益の増加にこだわっていく。マネージドサービスを展開できるITサービス企業やAV SIerの買収、サポートサービスが継続できるスクラムシリーズの展開、DocuWareやRICOH kintone plusなどのSaaS型ソフトウェアの展開、商用印刷でのオフセット・トゥ・デジタルの展開、サーマル事業でのラベルレス製品のデジタル化などを推進しており、これを継続的に進めていく。ストックを地層のように積み上げて、収益額と収益率を改善していく」と語った。

 デジタルサービスのなかに含まれるオフィスサービス事業においては、2022年度の売上高6762億円を、2025年度には8500億円以上に拡大するという。そのうち、ストック売上高は2022年度の3000億円を、2025年度には3800億円以上に拡大し、年平均成長率は8%以上を目指す。また、営業利益は2022年度実績の510億円を、940億円以上に拡大する。

 「各地域における顧客基盤と、リコーグループの強みを生かした施策を進めるとともに、ストックにこだわることで、2桁の増収を目指す」と意気込んだ。

 日本ではスクラムシリーズおよびRICOH kintone plusの拡大を推進。欧州ではアニュイティ型サービスの開発および拡大、買収会社とのシナジー最大化を目指す。北米では重点3業種(金融、小売、ヘルスケア)を中心に、アウトソーシングビジネスをデジタル化して利益率を向上させる。また、グローバル共通のデジタル基盤であるRSI(RICOH Smart Integration)プラットフォームを強化することで、効率的にストック収益を生み出す環境を構築。ここで生まれたモジュールをグローバル展開していくほか、収益率が高い自社ソフトウェアのグローバル展開によって、収益性向上につなげる考えを示した。

オフィスサービス事業の成長

 一方、PBR1倍以上に向けた特別プロジェクトを2023年4月から開始したことにも触れた。リコーの大山社長・CEOは、「上場企業として、PBR1倍は最低限の通過点であるという認識がある。社長に就任して、まずは特別プロジェクトを立ち上げ、すでに活動に入っている。理論株式価値と、現在の評価のGAP分析などにより、PBR1倍割れの要因を洗い出し、企業価値向上に向けたアクションプランを策定し、実行していく。対象は事業ポートフォリオの見極めから資本政策まで幅広くカバーしていく」と語った。