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横河ソリューションサービスとNTT Com、運転員の操作を学習したAIがプラントを自動運転する「オートパイロット」機能を提供

 横河ソリューションサービス株式会社とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は30日、日本初となる、運転員の操作を学習したAIを用いてプラントの自動運転を実現する「オートパイロット」機能を、「AIプラント運転支援ソリューション」の新機能として2月から提供開始すると発表した。

 同日には、「オートパイロット」の機能概要や実際の導入事例、今後の展開について説明会が行われた。

模倣学習で運転員の操作を学び、AIがプラントを自動運転

 「オートパイロット」は、プラントの各種センサーから取得した温度や圧力などのデータと運転員の過去の操作履歴から模倣学習で運転員の操作を学び、AIがプラントを自動運転する機能。プラントを運営する多くの企業が抱える、運転員の確保や技能伝承に関する問題を解決するために、横河ソリューションサービスとNTT Comが、2017年から足掛け6年をかけて共創を進めてきたという。2月から「AIプラント運転支援ソリューション」の新機能として提供が開始される。

「オートパイロット」の概要

 NTT Com ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートファクトリー推進室 室長の田原剛氏は、「オートパイロット」の開発背景について、「化学業界では現在、海外メーカーが安価な原材料で大規模設備を活用した汎用品を大量に生産している。このため、国内メーカーは、高い付加価値を持つ高機能製品を、市場のニーズに合わせて変種変量生産せざるを得ない状況であり、手動運転を余儀なくされている。しかし、手動運転では、運転員ごとに運転品質にばらつきが生じ、原材料や燃料の無駄につながる可能性がある。また、労働人口の減少により手動運転を担う運転員の確保が困難、ベテラン運転員の下で長期間経験を積み、手動運転技術を習得することが困難など技能伝承の難しさも課題となっている。そこで、こうした課題を解決するべく、NTT Comが持つAI技術と横河ソリューションサービスが持つプラントの運転に関する知見を組み合わせ、『オートパイロット』の開発に取り組んだ」と説明した。

 「オートパイロット」は、プラントの運転データと操作履歴をもとに、AIが運転員の操作を学習することで、従来技術では難しかった場所の自動運転が可能となる機能。AIが未経験の状況になった場合は、実行を停止し、運転員の技能を追加で学ぶ。またAIの動作保証範囲から外れたことを検知した場合には、運転員に即時通知するとともに、手動運転に切り替えることができる。その後、動作保証範囲に復帰した場合、運転員の判断のもとオートパイロットに戻すことが可能。AIと人との連携により、安全性と継続性を担保した操業を実現する。

高い安全性と継続性

 さらに、蓄積された運転データの中から現状に近い状況の操作履歴などを抽出し、高頻度に自動再学習する機能を備えた。これにより、新たな環境に沿ったルールをAIが導き出し、生産量や設備の経年変化などの状況に応じた、最適な自動運転を実現できる点も特長となっている。

状況変化への対応

 NTT Com ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 担当部長の伊藤浩二氏は、「オートパイロット」の導入メリットについて、「プラントの運転に『オートパイロット』機能が加わることで、手動運転を削減し大幅な運転の効率化が可能となる。また、人の感覚に適合した自動運転を実現でき、運転の属人性を排除することができる。これにより、運転員の確保や技術伝承などプラントを運営する企業が抱える課題の解決を支援する」と述べた。

 2月の提供開始に先立ち、昨年12月にJNC石油化学市原製造所で「オートパイロット」の実用性評価実験を行っており、「実験では『オートパイロット』を用いた自動運転時と、運転員操作時における『目標達成度』(指標値と目標値の差の平均:目標値との一致度)および『ばらつき』(運転中の安定度合い:指標値のばらつき)を比較した。この結果、自動運転時は、運転員操作時に比べて、指標値が目標値の近くで安定しており、運転員を超える精度を確認した」という。

実用性評価実験の結果

 両社では今後、運転員の確保や技能伝承、操業の効率化に課題を抱える企業を中心に、「オートパイロット」を提供していく。横河ソリューションサービスは、現在展開中のPIDチューニング、高度制御導入などプラントの安全性や生産性を改善するソリューションに、さらに同機能を加え、顧客の操業の効率化に向けた課題解決の幅を広げていく。また、NTT Comでは、「オートパイロット」の機能を応用し、化学プラントと課題が類似している、漁業や農業の工程の自動化を実現するユースケース創出に取り組み、製造業に加え、あらゆる産業のスマート化を目指していく。

他産業への展開の可能性(農業への適用イメージ)