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日本触媒とNTT Com、状態が複雑に変化する化学品製造工程の自動運転に成功
プラントの自動運転ソリューションに熟練運転員の操作を学習したAIを組み込み
2025年2月19日 10:00
株式会社日本触媒とNTTコミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)は18日、プラントの自動運転を実現するNTT Comのソリューション「AI Autopilot System」を活用し、これまで困難とされてきた、状態が複雑に変化する化学品製造工程の自動運転に成功したと発表した。
温度・圧力・濃度など状態が絶えず変化する化学品の製造を行うプラントを運転するには、一般に、豊富な知識と経験が必要で、自動運転は困難とされてきた。
今回、自動運転に成功した化学品製造工程においても、化学品の純度を高めるための連続蒸留工程で、流入する反応液の組成が、流出する留出液の再利用量や組成によって変化するうえ、天候などの外部影響も受けるため、常時、熟練の運転員が高い集中力をもって手動で操作する必要があったという。そしてそのため、安定稼働を継続するための技術継承が重要な課題となっており、運転員の育成には多大な時間がかかっているとのこと。
そこで両社は、連続蒸留工程の運転データと運転員の操作履歴、運転員が蓄積してきた運転ノウハウを学習させたAIモデルを構築した。従来の「AI Autopilot System」は、状態があまり変化しない化学プラントの自動運転のみ実現できていたが、こうして学習済みAIモデルを組み込むことで、状態が複雑に変化する連続蒸留工程でも自動運転を実現した。
こうした連続蒸留工程では温度制御が重要となるが、温度制御が正しく行われているかどうかの評価には、連続蒸留工程から留出する単位時間あたりの流出液量を用いている。留出液は、連続蒸留工程から流出するだけでなく、断続的に一部再利用されるため、液面計で計測する理想的な留出液面の高さ(以下、理想液面)は時々刻々と変化するが、学習済みAIモデルを組み込むことで、各時間における液面計の実測値と理想液面の誤差が、手動操作と同等以上の運転品質を実現できることが確認できた。
具体的には、手動操作時は平均2.38%であったものが、AIによる運転時は平均2.06%となり、熟練運転員による手動操作時と比較すると13.5%の改善を達成。新システムの活用により、運転員が液面計を監視し、理想液面になるように温度を制御する負荷を軽減できたほか、作業が標準化され、技能継承にかかる時間の削減も期待できるとしている。
今回の成果を受けて、日本触媒は今後、こうした取り組みを工場内のほかのプラントへ水平展開することで、運転員の負荷軽減と技能継承プロセスの最適化を図る。一方NTT Comは、バッチプラントや少量多品種生産を行うプラントなど、手動操作が残っているプラントの自動運転の実現に向け、「AI Autopilot System」の機能拡張を進めるとともに、この技術を、化学工場のみならず幅広い産業分野に展開したい考えだ。