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IBM Cloudの最新状況を説明、3つの強みによって「DX第2章」で顧客を支援

CTCの「OneCUVIC」はIBM Cloudを利用してグローバル対応へ

 日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)は29日、IBM Cloudの現状と今後の戦略について説明する記者説明会をオンラインで開催した。

 説明会には、同日にハイブリッドクラウド支援サービス「OneCUVIC」をIBM Cloud上で提供するグローバル展開を発表した伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)も登場し、日本IBMとの協業について語った。

「DXは企業がリードする第2章に」

 日本アイ・ビー・エム株式会社の今野智宏氏(執行役員 クラウド・プラットフォーム事業部長/コンテナ共創センター所長)は、「DXは第2章に入った」と語った。GAFA主導のイノベーションから企業がリードするイノベーションが中心になり、業務の流れに組み込まれたデジタル・AI技術によって企業の中にあるデータを活用し、企業内のオンプレミスのワークロードも活用したオープンなハイブリッド・マルチクラウドになるとする。

 このように単純なクラウド化からハイブリッドクラウドを活用した変革へ時代が変わっていると今野氏は語り、そのポイントとして3点を挙げた。

日本アイ・ビー・エム株式会社 今野智宏氏(執行役員 クラウド・プラットフォーム事業部長/コンテナ共創センター所長)

 1つめは「共創」。DXは当然のものとして、そのDXの技術を使って企業や仕事の枠を超えた共創によって新たな価値を作っていくという。

 2つめは「新たな価値」。物価高・円安による利用の変化や、データ主権の問題のようなデータやワークロードに対するガバナンスなどが問われるようになっているという。

 3つめは「ミッションクリティカル」。IBM Cloudは当初から品質や保守性などミッションクリティカルにフォーカスしていること、一部はクラウドからオンプレミスに戻るなどハイブリッドクラウドの中で品質を強化することが求められていることを今野氏は述べた。

DXは第2章に
ハイブリッドクラウドを活用した変革のための3つのポイント

 「これらの中でIBM Cloudが掲げる3つのフォーカスポイントは変わりがなく、継続し強化していく」として、その内容を今野氏は説明した。

 「Enterprise Grade Cloud」においては、VMware、SAP、IBM Power、IBM Zなど、IBM Cloudらしいサービスを引き続き強化していく。加えて、説明責任のあるクラウドとして、ミッションクリティカルを支える保守性や品質を挙げた。さらに、金融サービスなど業界のクラウドを実践していくこともポイントだという。

 「Security Leadership」においては、今野氏は、暗号化技術「FIPS 140-2 Level 4」に唯一対応していることを紹介した。これは、データセンター事業者ですら顧客のデータを一切見られないものだという。

 「Open Hybrid Cloud Services」においては、クラウドベンダーロックインの排除や、データやワークロードのポータビリティなどを推進していくと語った。

 IBM Cloudの事例としては、流通業の顧客が他社クラウドからIBM Cloudに移行し、SAPとVMwareによる基幹業務システムをミッションクリティカルで支えている例を今野氏は紹介した。そのほか、製造業の顧客がコネクテッドカーのインフラをIBM Cloudで動かしているという例も紹介した。

IBM Cloudの3つのフォーカスポイント
IBM Cloudの事例

CTCの「OneCUVIC」がIBM Cloudでグローバル対応

 続いて伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(CTC)の東智之氏(ITサービス事業グループ エントラステッドクラウド技術事業部 事業部長)が、IBM Cloudとの協業について語った。

 CTCでは、企業のハイブリッドクラウド環境に対し、特定の製品やサービスに制限されずにオープンでシンプル、かつセキュアなDX基盤に変革する取り組みを、「OneCUVIC」ブランドで展開している。統合コントロールセンターである「CTC-OHCC」によるハイブリッドクラウド環境の一元管理や、クラウドネイティブサービス「CTC-CNS」によるマイクロサービスやコンテナなどのクラウドネイティブなワークロードの展開などを含む。

 説明会と同じ11月29日に、CTCがIBM Cloud上でOneCUVICを提供することでグローバル展開を開始すると発表された。

 東氏は、今野氏が挙げた「共創」「新たな価値」「ミッションクリティカル」の3つのビジョンがCTCと整合性が高いと考えたと説明。さらに、IBM Cloudの「Enterprise Grade Cloud」「Security Leadership」「Open Hybrid Cloud Services」の3つがOneCUBICと整合性が高いとして、「IBMの強みとCTCの知見でOneCUBICをグローバル展開する」と語った。

伊藤忠テクノソリューションズ株式会社の東智之氏(ITサービス事業グループ エントラステッドクラウド技術事業部 事業部長)
IBM CloudとCTCの新たなパートナーシップ

サステナビリティやデータ主権、業界の規制などへの対応状況

 続いて日本IBMの今野氏は、IBM Cloudの最新動向について説明した。

 1つめはサステナビリティ。環境問題においてデータセンターの熱や電気が課題になっているとして、IBM Cloudでは冷却効率や脱炭素について具体的な目標を掲げていると今野氏は語った。また、二酸化炭素排出量などを可視化できる「Carbon Calculator」を来年早々の提供に向けて準備中なことを紹介した。

 さらに、顧客企業との共創によるサステナビリティにも取り組んでいくとして、三菱重工や、三井化学、旭化成の3つのコンソーシアムの取り組みを紹介した。

IBM Cloudの環境問題への取り組み
環境問題に関する各社とのコンソーシアム

 2つめは業界向けクラウド。データ主権のためのソブリンクラウドについては、対応するIBM Cloudの主要サービスとして、所在のわかるクラウドとしてのベアメタルクラウドや、分散クラウドのCloud Satellite、IBMにも顧客のデータにアクセスできないHyper Protect Crypto Services、アクセス状況やコンプライアンスへの順守状況を監視できるSecurity and Compliance Centerなどを挙げた。

 また、金融業界の規制対応については「IBM Cloud for Financial Services」を提供していることも紹介。さらに、IBMの金融サービス向けデジタルサービスプラットフォームも紹介した。

ソブリンの要件に対するIBM Cloudのサービス
金融業界向けパブリッククラウド「IBM Cloud for Financial Services」
金融サービス向けデジタルサービスプラットフォーム

 3つめは、ミッションクリティカルを支える品質。これについては、IBM Cloudのサービス品質は、2022年は大幅な改善が見られると説明した。

IBM Cloudの品質改善状況

 4つめはマルチプラットフォーム。Intelアーキテクチャだけではく、IBM PowerやIBM Zのワークロードもサポートしてることを今野氏は挙げた。さらに、量子コンピューターのサービスがすでに利用できることや、オンプレミスでIBM Cloudのサービスが利用できる「IBM Cloud Satellite」を紹介した。

 IBM Cloud Satelliteの事例としては、東京電力グループの株式会社テプコシステムズ(TEPSYS)の例を今野氏は挙げた。データをオンプレミスに置きながら、クラウドの便利なサービスを利用しているという。

IBM Cloudのマルチアーキテクチャ対応
量子コンピューターも利用可能
TEPSYSのIBM Cloud Satellite導入事例