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セールスフォースがSalesforce Industry Cloudの最新状況を解説、共通コンポーネントにより価値の迅速な提供を推進
2022年9月13日 06:15
株式会社セールスフォース・ジャパンは12日、Salesforce Industry Cloudの最新状況について説明。Industry Cloudの特徴のひとつである業界共通のベストプラクティス機能などを提供する「コモン・コンポーネント」が32種類となり、同社が提唱している、製品を導入してからビジネスの価値を提供するまでの時間を短縮する「Time to Value」の実現に貢献していることを示した。
セールスフォース・ジャパン マーケティング本部プロダクトマーケティングマネージャーの前野秀彰氏は、コモン・コンポーネントを活用することで、Financial Services Cloudで提供していた保険業界向けのライフイベント機能を、ヘルスケア業界向けのHealth Cloudに転用して、患者の重要なヘルスケアイベントを管理できるようにした例などを挙げ、「特定の業界向けに作った機能でも、別の業界で必要となる機能になることが多い。業界共通で利用できるベストプラクティス機能をコモン・コンポーネントとして提供することで、より速く、確実に価値を提供していくことができる」などとした。
また「コモン・コンポーネント」では、CRM Analyticsの技術を活用して大量データ集計を実現するData Processing Engineも提供。Financial Services Cloudでは、保有する複数の金融口座の情報を集計し、顧客ごとに残高の合計を集計したり、Loyalty Managementでは、メンバーごとの取引記録レコードを集計し、付与されるポイントを計算したりといった用途に利用。CRM上のさまざまなレコードを高速に抽出、集計し、インサイトを提供したり、アクションにつなげたりできる。ここでは、Hyperforceを利用したリアルタイムでのデータ処理も可能になるという。
さらに、Salesforce Flowによる自動化を実現し、複雑な業界特有のユースケースにも対応するFlow for Industriesを提供。「さまざまな業界のプロセスを自動化するためのコンポーネントを掛け合わせてパッケージ化したものであり、セールスフォースが買収したVlocityの技術を活用している」という。
保険業界向けには、保険契約者の契約種別に応じた動的な顧客ポータルサイトを実現したり、製造業界向けには、納入製品の状況に応じた動的なアフターサポートポータルの構築を実現したり、といった活用が可能だ。またFlow Libraryにより、業界の複雑なビジネスプロセスを自動化するための標準テンプレート集も提供している。
一方、MuleSoftのMuleSoft Acceleratorを利用することで、業界固有の基幹システムと容易にインテグレーションを行うことができる点も強調。「医療分野では電子カルテシステムとの連携が可能になったり、製造業では製造データを扱う基幹システムとの連携が可能になったりする。インテグレーションを高速化できる」と述べた。
Acceleratorは、金融機関向け、小売・消費財企業向け、ヘルスケア・ライフサイエンス企業向け、製造業向けのほか、SAP、Work.com、Commerce & Service Cloudとの連携も可能にしている。
また、TableauやEinsteinとの連携により、業界固有のAIモデルや分析機能も提供しているほか、Slackによって、業界固有のコラボレーションを加速していることにも触れた。
なお、セールスフォース・ジャパンが提供するSalesforce Industry Cloudは、業界向けクラウドソリューションであり、業界ごとの特性やニーズをとらえ、それらを標準機能として提供するのが特徴だ。700以上の業界固有の業務プロセスに対応し、各業界に適したデータモデルを標準機能として用意している。
セールスフォース・ジャパンの前野氏は、「業界特有のUIやロジック、データモデルを標準機能として実装するとともに、業界の変化を見据えた未来志向のソリューションも、バージョンアップを通じて提供し、それぞれの業界に最適な最新機能を利用して、Customer 360の考え方を実現できる。従来の仕組みでは、業界固有のカスタマイズ部分はバージョンアップの対象にならなかったが、Industry Cloudは、業界固有の部分を標準機能として用意して、プラットフォームやSales Cloud、Service Cloudとともにワンストップで提供。これらのすべてが年3回のバージョンアップの対象としている」と語る。
日本では、2016年からIndustry Cloudの第1号製品として、Financial Service Cloudを提供しており、開発期間を25%短縮したり、Time to Valueを実現するまでの時間を50%高速化したり、ROIが188%に達したりといった効果が出ているという。
「昨今では市場環境の変化により、Time to Valueに対する投資意欲が高まっており、Industry Cloudに関心が集まっている」とする。
現在、金融機関向けのFinancial Services Cloudのほかに、製造業向けのManufacturing Cloud、消費財メーカー向けのConsumer Goods Cloud、教育分野向けのEducation Cloud、医療・ヘルスケア向けのHealth Cloudなど、12種類の製品を日本で展開している。
また、2022年3月からは、温室効果ガス排出量削減につなげるNet Zero Cloud 2.0を投入。2023年からは、消費財メーカーによる卸売業者や小売事業者への販売促進活動のプロセス全体を管理するTrade Promotion Managementを国内市場に投入する計画を明らかにした。なおTrade Promotion Managementは、Consumer Goods Cloudのアドオン商品になるという。
セールスフォース・ジャパンの前野氏は、「Industry Cloudの豊富な実績と、業界横断で効果的にイノベーションを加速する仕組みを提供できる。また、業界向けソリューションを標準提供するカバレッジの広さも特徴である。2022年9月に開催される年次イベントのDreamforceでは、Industry Cloudにおいても革新的なイノベーションが発表されることになる」と述べた。
一方、Industry Cloudの国内の導入事例についても紹介した。
東京海上日動あんしん生命では、インターネット申し込みシステム基盤として、Financial Service Cloud Insuranceを採用。保険業界に特化したシステム構築プロセスを利用することで、開発期間を3分の1程度に短縮。タイムリーな商品提供を実現したという。
また東京きらぼしフィナンシャルグループでは、対面と非対面が一体となった顧客本位の業務運営の実現に、Salesforce Financial Service CloudとMuleSoftを採用。Industry Cloudの標準機能を活用して、スピード感を持った業務変革を推進した。
ヒロセ電機では、グローバルビジネスにおける販売計画の可視化とコラボレーションにManufacturing Cloudを導入。標準機能を活用してリピートオーダー管理を実現するとともに、ERPの実績データとの連携も実現している。
このほか海外では、住宅ローンの米Rocket Companiesが、住宅ローン組成技術をSalesforce Financial Services Cloudを通じて、全米の銀行や信用組合などの金融機関に提供するといった新たなビジネスを開始している例も紹介した。
Salesforceでは、インダストリー特化の戦略を強化。業種フォーカスのビジネスを拡大してきた経緯がある。
米国では、2014年にIndustry Cloudを担当する組織が立ち上がり、製品、組織に投資を進めている。日本では2016年から製品提供を開始。Industry Cloudを担当するインダストリーズトランスフォーメーション事業部では、事業会社の戦略部門やビジネスコンサルタントの経験者など、業界知識を持った専門家による「ソートリーダーシップの推進」のほか、インダストリーごとの戦略を策定したり、グローバルの知見を提案したりといった活動を通じて営業部門との連携を行う「営業支援」、業種特化型クラウドの日本での浸透を図る「Industry Cloudの活用支援」に取り組んでいる。
セールスフォース・ジャパン 常務執行役員 インダストリーズトランスフォーメーション事業本部長の石井敏雄氏は、「業種固有の業務プロセスや、業種に適したデータモデルを標準機能として持つ強みを生かすことで、各業種のDX推進とTime to Valueの実現に、セールスフォース・ジャパンが貢献できる」などとした。