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SAPジャパン、倉庫ロボット連携ソリューション「SAP Warehouse Robotics」を発表

次世代物流倉庫とスマートファクトリーの実現を支援

 SAPジャパン株式会社は28日、倉庫ロボット連携ソリューション「SAP Warehouse Robotics」の提供を開始したと発表した。同日には、新ソリューションの概要に加え、一昨年大手町ビル内に開設した「Industry4.Now HUB Tokyo」の活動状況など、スマートファクトリーを支援する同社の最新の取り組みを説明した。

 「SAP Warehouse Robotics」は、能力と役割の異なる複数の異機種ロボットの稼働について、それぞれのロボットの集約管理、指示連携を行い、1社のロボットベンダーに依存することのない柔軟な倉庫オペレーションの構築を実現するクラウドソリューション。これまでは数カ月を要していたロボットとの連携開発が、数週間で実現可能となり、また1台のロボット接続からスタートできるため、業務の拡大に合わせて新しいロボットを容易に追加していくことができる。

「SAP Warehouse Robotics」によるロボット連携

 新ソリューションの発表にあたり、SAPジャパン SAP Labs Japan Head of Digital Supply Chainの鈴木章二氏は、企業のインダストリー4.0化戦略の具現化を支援する「Industry4.Now HUB Tokyo」の現況について、「『Industry4.Now HUB Tokyo』では現在、日本の製造業のDXを本質的に加速させることを目的に、工場だけでなくサプライチェーンにもスコープを広げ、DX推進の取り組みを続けている。具体的には、サプライチェーンプロセスを横断した設計から計画、製造、物流、保守サービスまでショーケースを拡充した。また、次世代サプライチェーンへのデジタル活用を体験するカスタマーワークショップエンゲージメントを90社に実施してきた。さらに、今年1月からは、サプライチェーンDXを現場で推進するリーダーシップコミュニティ『Industry4.Now塾』を開設。さまざまな業種から20名のリーダーが参加している」と述べた。

SAPジャパン SAP Labs Japan Head of Digital Supply Chainの鈴木章二氏

 今回リリースする「SAP Warehouse Robotics」は、倉庫現場でのロボット連携にフォーカスしたソリューションとなるが、SAP Product Management-Extended Warehouse ManagementのChristian Ries氏は、その狙いについて、「ロボットは倉庫内を自由に動き回ることができ、複数の作業に使用したり、さまざまな場所で稼働させることができるなど、大きなメリットがある。しかし、導入・運用にあたっては克服すべき課題も多い。ロボット自体の費用に加え、実際のシステムやプロセスの統合にかなりの費用が発生し、特定のロボットに対するインターフェイスを構築するのにも大変な労力が必要だ。そのため、新たなオペレーションが発生した際に、他社製ロボットを利用することを望まず、結果的にベンダーロックインにつながっている。こうした課題を解決するために、『SAP Warehouse Robotics』を開発した。特に日本はロボットを使ったオペレーションに積極的に取り組んでおり、早期に採用が進むと考えている」とビデオメッセージでコメントした。

SAP Product Management-Extended Warehouse ManagementのChristian Ries氏

 「SAP Warehouse Robotics」の主な機能として、さまざまな特性を持った、異なるベンダーの倉庫業務ロボットを素早く簡単に指示連携し、1台から制御することができる。これにより、従来のベンダーロックインの倉庫ロボティクスから脱却し、ダイナミックに変化する倉庫現場に必要な、柔軟で自由な倉庫オペレーションを構築することが可能となる。

「SAP Warehouse Robotics」のアーキテクチャ概要

 また、在庫管理や商品の処理・移動をサポートする倉庫管理システムである「SAP Extended Warehouse Management」と連携することで、さまざまな倉庫タスクを処理することができる。例えば、軽量物を搬送する際は「ロボットA」に指示を行い、重量物を搬送する際は「ロボットB」に指示を行うといった、タスクに応じた振り分けを自動処理する。この指示連携により、異機種混在のロボットを活用した複雑な業務を実現できる。

 SAPジャパン SAP Labs Japan シニア・プロダクト・スペシャリストの前川純氏は、「『SAP Warehouse Robotics』では、倉庫現場と製造現場を連携させることにより、次世代物流倉庫とスマートファクトリーの実現を目指している。まずは、製品物流において、『SAP Extended Warehouse Management』と連携し、倉庫指図による荷役単位ごとの倉庫タスク処理を実現する。2023年には、工場物流機能を拡張し、製造業向け管理システムである『SAP Digital Manufacturing Cloud』との連携により、製造現場における荷役単位ごとの仕掛品搬送指図への対応を予定している。将来的には、外部倉庫管理システムによる、構内物流業務連携にも対応していく」と、今後の機能拡張計画を明らかにした。

SAPジャパン SAP Labs Japan シニア・プロダクト・スペシャリストの前川純氏

 同社では、迅速で簡単な現場業務のスケール拡大を実現する「SAP Warehouse Robotics」のリリースおよび機能拡張を通じて、カスタム製品など商品種別の増加や生産労働人口減少化に向かう日本市場でのロボティクスニーズに対応するとともに、複雑なマテリアルハンドリングやキッティングタスクの自動化による現場業務の省人化を支援していく考え。

「SAP Warehouse Robotics」の機能拡張計画