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キヤノンMJが「2022-2025中期経営計画」を発表、長期経営構想と同じく2025年度に売上高6500億円を目指す

 キヤノンマーケティングジャパン株式会社(以下、キヤノンMJ)は26日、2025年度を最終年度とする「2022-2025中期経営計画」を発表した。

 基本方針として、「利益を伴ったITS事業の拡大」、「既存事業のさらなる収益性強化」、「専門領域の強化・新たな事業の創出」、「持続的成長に向けたグループ経営」の4点に取り組むことを示した。また、今後4年間で2000億円以上の成長投資を計画していることも明らかにしている。

 キヤノンMJでは、2025年度を最終年度とする長期経営構想「2025年ビジョン」を、2021年4月に発表しており、「社会・お客さまの課題をICTと人の力で解決するプロフェッショナルな企業グループ」を掲げながら、2025年度に売上高6500億円、営業利益500億円のほか、ITS(ITソリューション)の売上高3000億円、ROE8.0%を目指している。

 同社は、ローリング方式で毎年3カ年の中期経営計画を策定してきたが、今回の「2022-2025中期経営計画」では4カ年の計画とし、最終年度となる2025年度の経営指標は長期経営構想とあわせたものにしている。

 キヤノンMJの足立正親社長は、「労働人口の減少やデジタル化の加速の影響を受け、ITへの投資が積極的に行われる一方で、コロナ禍により出社を前提としない働き方が浸透し、ペーパーレス化が加速。それによって、キヤノン製品市場の成熟が進んでいくと見ている。この流れは不可逆的であり、一層加速する。こうした市場環境の認識のもとに、中期経営計画を策定した」と前置き。

 「キヤノンMJグループは、ITS事業を中核とした企業へと事業ポートフォリオを転換し、成長エンジンであるITSの利益を伴った拡大を重要な方針に位置づけることになる。2025年の数値は、確実に達成させる目標として取り組む。期待される、愛される、魅力のある会社になる」などと述べた。

キヤノンMJの足立正親社長
2022-2025中期経営計画 基本方針

 また、今後4カ年の2000億円の投資については、「DXビジネスの推進やエッジソリューション、データセンタービジネスの拡大に向けた投資を行う。データセンターについては2号棟が順調であり、新たに3号棟の設置に向けた土地の取得をしていくことになる。2025年には3号棟への投資は行っているが、売り上げや利益の計画には入れていない。また、ITソリューションを成長させるためのM&Aや出資にも取り組んでいく。さらに、社内システムへの投資、人材への投資も進めていく」と説明。

 さらに、「筋肉質な体質となり、キャッシュを生み出せる体質になってきている。成長を加速したいと考えており、もっと稼げればもっと投資をしていく。中期経営計画の達成とともに、2025年以降の持続的な成長に向けた投資をしていくことになる」と語った。

 データセンタービジネスについては、「1号棟は損益分岐点に到達するまでに時間がかかったが、2号棟は、どの程度の価値をつけてどう利益を確保するのかというアプローチの仕方が理解できている。2号棟は近いタイミングで損益分岐点を迎えることができるだろう。今後は、IT管理者が不在な中堅中小企業に向けて、セキュリティを担保しながら、ハウジングや運用を含めた提案していきたい。中小企業に強いキヤノンMJの強みを生かして、ほかのSIerとは違うデータセンターでの利益確保していきたい」などと述べた。

ITS事業における注力領域を中心にビジネスを拡大

 基本方針のうち1つ目の「利益を伴ったITS事業の拡大」では、ITS事業における注力領域を中心にビジネスを拡大し、サービス型事業モデルを確立することで、利益を伴った事業成長を実現。サービス型事業モデルによる価値貢献を目指す。

 映像ソリューションやデジタルドキュメントサービス、ローコード開発などのEdgeSOL(エッジソリューション)では、2021年度に230億円だった売上高を、2025年度には450億円に拡大する。

 さらに、セキュリティでは325億円から485億円に、ITO・BPOでは215億円を320億円に拡大する。いずれも年平均成長率は2桁増となる。また、中小オフィス向けIT支援サービスのHOMEやIT保守・運用サービスの契約件数を、2021年度の約13万5000件から、2025年度には約22万件に拡大する。

利益を伴ったITS事業拡大

 EdgeSOLでは、さまざまなソリューションの強みを磨き、得意とする領域の拡大とともに、顧客基盤を生かした横展開を行い、サービス型事業モデルを確立していく。

 HOMEおよびIT保守・運用サービスでは、独自性の高い製品と付加価値の高いサポートにより、中小企業とつながり続け、課題やニーズ、環境変化をとらえた付加価値提案を加速。最適なITの選定、導入から運用、保守対応までをフルサポートすることで、保守・運用サービスおよびアウトソーシングを着実に拡大させる。

 セキュリティにおいては、顧客層ごとに異なるニーズに対して、キヤノンの光学技術を生かした物理セキュリティと、ESETをはじめとした豊富な製品ラインアップを生かしたサイバーセキュリティの両面からの、トータルセキュリティを展開。「物理とサイバーのセキュリティをワンストップで提供できる強みを生かして、『セキュリティのキヤノン』としてのプレゼンスを向上させる」と述べた。

 ITO・BPOでは、データセンター事業の付加価値の高いソリューション展開に加えて、アナログ業務の受託も含めた顧客業務全般の効率化に寄与し、ITストック拡大に向けた中核事業として、飛躍的に成長させる方針を示した。

 ITS事業は2025年度に売上高3000億円を目指しているが、そのなかでも、保守・運用サービス、アウトソーシングは、年平均成長率18%で事業を拡大。2025年度には売上高750億円を目標とし、ITS事業全体の25%を占めることになる。

ITS事業 領域別売上推移

顧客層ごとのニーズを的確にとらえ、それぞれに向けた戦略を展開

 2つめの「既存事業のさらなる収益性強化」においては、顧客起点の組織体制を生かし、顧客層ごとのニーズを的確にとらえることで、顧客層に応じた戦略をスピーディーに展開していくという。

 具体的には、エンタープライズでは、顧客基盤を活用した業種別・業務連携案件の獲得、コロナ禍におけるオフィスの多様化によって生まれた課題解決に向けた新たなドキュメントニーズの獲得を目指す。また、準大手・中堅顧客層のビジネス拡大に向けて、専門販売組織による営業体制の強化を図るという。

 エリアでは、エリアマーケティングの強化および徹底、ビジネスプロセスの見直しによる生産性の向上を図る。

顧客層に応じた戦略展開

 製品分野別では、プリンティングにおいて、働き方改革に伴う集中、分散出力など、業種や業務ニーズに適した製品やサービスを提供。ITソリューションとの連携によるワークフロー全体に対するサポートを実現する。

 カメラでは、顧客ニーズに応える製品ラインアップと、トータルサービスの充実によるリレーション強化を推進。特に、ミドルクラスの製品にフォーカスすることで、さらなる高収益化を目指すという。

 「オフィスでのペーパーレス化は進むが、業種や業務に必要な専門領域に関わる出力は依然として残る。それらの出力を獲得するために、メーカーであるキヤノンと連携をしていく。特定業務でのシェアを高めることで、さらなる高収益化を目指したい。またSNSの普及により、写真や動画をライフスタイルの楽しみとするミドル層の人口が増加しており、EOS Rシステムの提供とともに、フォトサークルの活動などを通じて、顧客との関係を強固なものにし、カメラの分野でも高い収益性維持を目指す」と述べた。

新たな事業に挑戦しやすい企業風土にしていく

 3つめの「専門領域の強化・新たな事業の創出」では、産業機器事業のさらなる成長と、新たな事業の創出、発掘に向けた体制を構築。グループ横断でのイノベーション人材の育成や活用に向けた取り組み、風土醸成を行う。社内起業プログラム「Canon i Program」を通じて、社会課題解決につながるアイデアを事業化する取り組みも行っていく。

 「これまでにも市場や顧客の多様なニーズに応えるため、国内外のさまざまな商品の発掘や、事業化を進めてきた。キヤノンMJは、高い技術力を生かして設置、保守までをサポートする高収益ビジネスモデルを確立できる稀有な存在であり、先方から声をかけてもらう機会も増えている。新規ビジネスの拡大に取り組むだけでなく、新たな事業に挑戦しやすい企業風土にしていく」と述べた。

新たな事業の創出

 そして、「持続的成長に向けたグループ経営」では、プロフェッショナルな企業グループの実現に向けて、人材の高度化に向けた育成に注力。これにより、顧客への提供価値向上に取り組むという。ここでは、顧客満足につながり、従業員の働きがいが向上し、成長意欲が高まり、専門成果さらに高まるという好循環を生むことができる「エンゲージメント向上ループ」を確立することで、2025年ビジョンを体現する企業グループを目指すと述べた。

 なお、2025年度のセグメント別業績目標は、「エンタープライズ」の売上高が2490億円、営業利益が200億円。エリアの売上高が2450億円、営業利益は175億円。「コンスーマ」の売上高が1275億円、105億円。「プロフェッショナル」の売上高は460億円、営業利益は50億円としている。

セグメント別売上・営業利益の目標

2021年度の連結業績

 一方、2021年度(2021年1~12月)の連結業績は、売上高は前年比1.3%増の5520億円、営業利益は同26.8%増の396億円、経常利益は同16.6%増の410億円、当期純利益は同33.7%増の294億円となった。また第4四半期(2021年10月~12月)は、売上高が前年同期比1%増の1539億円、営業利益は同19%増の130億円、当期純利益は同20%増の91億円となった。

2021年度(2021年1~12月)の連結業績

 キヤノンMJの大里剛上席執行役員は、「通期実績は、営業利益、経常利益、当期純利益は過去最高を更新した。第4四半期はエンタープライズ領域において高付加価値の製品、サービスの売上構成比が上昇し、粗利が増加。コンスーマでは、前年同期にデジタルカメラの高単価製品の売上構成比が高まっていたことの反動により、粗利率が悪化した。販管費では人件費の減少、ビジネス機器の出荷減に伴う費用が減少している」という。

キヤノンMJの大里剛上席執行役員

 キヤノンMJの足立社長も、「通期の売上高については、半導体不足やサプライチェーンの混乱に伴う製品供給不足などの影響があり、計画には届かなかった。だが、利益については、高付加価値製品やサービス型事業の構成比の高まり、筋肉質な体質への転換により、販管費の削減を着実に行い、計画を大きく上回ることができた。ROEも8%を超えている」と総括した。

 通期のセグメント別業績では、「エンタープライズ」の売上高が前年比3.3%増の1905億円、セグメント利益が46.9%増の138億円。主要ビジネス機器が製品の供給不足の影響を受け減少したものの、ITソリューションビジネスが好調に推移した。なお、同セグメントに含まれるキヤノンITソリューションズは、売上高は前年比7%増の976億円、営業利益は16億円増の94億円となっている。

 「エリア」の売上高は、前年比1.3%減の2208億円、セグメント利益が34.1%増の120億円。オフィスMFPやレーザープリンターなどの主要ビジネス機器が製品の供給不足の影響を受け大幅に減少したほか、ビジネスPCなども半導体不足の影響を受けたこと、在宅需要の一巡などで減収となったが、販管費の削減に努めた結果、増益となった。なお、連結子会社のキヤノンシステムアンドサポート(キヤノンS&S)の売上高は前年比1%減の974億円、営業利益は19億円増の39億円となった。

 また、グループITソリューションの売上高は、前年比6%増の2211億円となった。

 「ITソリューションでは、製造業向けSI案件や、組み込みシステム開発案件が回復基調にある。また、金融業向けSI案件、データセンター2号棟での複数の大型案件を受注するなど、売り上げが堅調に推移。大型BPO案件も獲得した。文教向けのデジタル化ニーズに対応した案件も順調に推移している。セキュリティソフトのESETも順調だ。ネットワークカメラは、一部製品で供給不足はあったが、遠隔監視や遠隔操作など、人との接触を避けた映像の利活用ニーズが旺盛である」(キヤノンMJの大里上席執行役員)と説明した。

 EdgeSOLの売上高は、前年比28%増の230億円、セキュリティの売上高は16%増の325億円、ITO・BPO関連の売上高は59%増の215億円となったほか、HOMEおよびIT保守・運用サービスの契約件数は23%増の13万5000件と、いずれも大幅に伸びている。

 また、「コンスーマ」は、売上高が前年比3.8%増の1294億円、セグメント利益が10.5%増の135億円。デジタルカメラ、インクジェットプリンターカートリッジ、ITプロダクトが減少した。「インクジェットプリンターは高付加価値製品の売上構成比が高まり、金額は前年を上回った。だが、インクジェットプリンターカートリッジは、カラープリントの減少などにより売り上げが減少した。ITプロダクトはゲーミングPCが増加したものの、在宅需要の落ち着きと、年末にかけてノートPCやディスプレイ本体の供給不足が影響し、売上は減少した」という。

 「プロフェッショナル」の売上高は前年比2.7%増の315億円、セグメント利益は30.8%増の24億円となった。プロダクションプリンティング、産業機器、ヘルスケアのすべてのサブセグメントで増収となった。

2021年度(2021年1~12月)のセグメント概要

2022年度は増収増益を見込む

 2022年度(2022年1月~12月)の業績見通しは、売上高が前年比5.1%増の5800億円、営業利益が2.0%増の405億円、経常利益が3.2%増の424億円、当期純利益が0.3%増の295億円を見込む。

2022年度(2022年1~12月)の業績見通し

 2022年度のセグメント別業績見通しは、「エンタープライズ」の売上高が前年比3%増の1960億円、営業利益が前年並の139億円。エリアの売上高が5%増の2325億円、営業利益は15億円増の135億円。「コンスーマ」の売上高が前年比1%増の1303億円、営業利益は16億円減の120億円。「プロフェッショナル」の売上高は26%増の398億円、営業利益は9億円増の83億円を見込んでいる。すべてのセグメントで増収を目指す。

 「新型コロナウイルス感染症の拡大や、サプライチェーンの混乱による供給制約の影響は2022年も不透明である。製品供給不足の影響についても継続する見通しだが、後半に向けて緩やかに改善に向かうことを想定している」と述べた。