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JBCC、オンプレのVMware環境を最適なクラウドへ移行する新サービスを提供

クラウド事業戦略も発表、2023年度までのクラウドストックはCAGR 46%を見込む

 JBCC株式会社は6日、クラウド事業戦略について発表。「JBCCは、日本全体におけるクラウド市場の成長率の、2倍以上の成長を目指す。2021年度まではSaaSの構成比が高いが、2022年度にはIaaSの構成比が半分を超える」(JBCC 取締役副社長の薮下真平氏)などとした。

 また今回は同時に、「VMware環境最適クラウド移行サービス」の提供開始も発表している。

JBCC 取締役副社長の薮下真平氏

 中期経営計画「HARMONIZE 2023」ではクラウド事業を成長分野に位置づけ、2023年度までのクラウドストック売上高の年平均成長率(CAGR)は46%と高い成長を見込んでおり、60億円を突破する計画だ。

 2021年度上期(2021年4月~9月)のクラウドストックの売上高は、前年同期比51%増の13億9600万円で、そのうち新規受注高は同86%増の6800万円。2021年度通期では同48%増の28億7000万円を見込んでいる。現在、1740社へのクラウド導入実績があるという。

クラウド売り上げ目標と上半期実績

 また2021年4月には、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するトータルITサービス「HARMONIZE」を発表。ビジネスモデル変革支援、業務変革ソリューション、プラットフォーム変革ソリューション、コラボレーションサービスの4つの領域に分けて、製品およびサービスを体系化した。このなかで、クラウドに関する選定から設計・構築・導入・運用までを一貫して支援する「IaaS/SaaSサービス」を提供している。

 「IaaSでは、クラウド構成の最適化サービスや監視・管理サービスで最適なクラウド運用を支援。SaaSでは、自社のクラウド利用と、2万社を超えるITソリューション支援の経験をもとに、最適な組み合わせを提供するのが特徴である」(JBCCの薮下副社長)としている。

トータルITサービス「HARMONIZE」を提供。その1ラインアップとして、「IaaS/SaaSサービス」を用意している
SaaSとIaaSの違い

 JBCCでは、クラウドへの移行提案にも力を注いでいる。例えば、クラウドのコスト試算を簡易に実施しているが、データセンター費用やサーバー台数、CPUコア数、メモリ容量、ディスク容量を入力するだけでコストが試算できるアセスメント「Cloud Fitness」を無償で提供している。

 さらに、より詳細に実施するクラウド移行アセスメント「ITモダナイゼーションクリニック」では、600社以上の診断実績をベースにした知見などを活用することで、サイジングから構築、移行、運用までのフレームワークを提供する。ある製造業では、ITモダナイゼーションクリニックを利用して、CPUやメモリの容量を30%以上削減できることを可視化し、同時にソフトウェアライセンス数も50%以上削減。コストを大幅に抑える提案を行ったという。

 加えて、運用最適化サービス「Cloud Health by VMware」を利用すれば、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などの使用状況を分析して最適なインスタンスをレポートし、継続的な可視化を行えるので、余剰インスタンスや余剰リソースを削減できるとした。

各種移行支援サービスを提供
Cloud Fitness
ITモダナイゼーションクリニック
Cloud Health by VMware

 これについて、JBCC プラットフォーム・ソリューション事業部長の大島貴幸氏は、「リソースの変化がないものは長期利用割引プログラムの適用を提案し、24時間稼働が不要なものは起動・停止を自動化してコストコントロールを行う」といった例を提示。その効果について、「JBCCが提供するクラウド移行支援サービスでは、コスト削減、移行ノウハウ、定着化といった点での支援が可能になる。当社の実績では平均20%のコスト削減の実績がある」(JBCCの大島事業部長)と述べた。

JBCCクラウド移行の考え方とアプローチ

オンプレミスの仮想環境をマルチクラウドに移行する新サービス

 今回、新たに提供する「VMware環境最適クラウド移行サービス」は、オンプレミスの仮想環境をマルチクラウドに移行するサービスだ。

 VMware仮想環境移行用のアセスメントを提供し、システム規模や現時点のクラウド利用状況、今後のクラウド移行方針を踏まえて、Azure VMware Solution、VMware Cloud on AWS、IBM Cloud for VMware Solutionsのなかから、どのハイブリッドクラウドサービスが最適であるかを選定して提案する。また、現行のシステム環境のリソース使用状況の調査に基づき、必要なサーバー数を最大限に集約することで、コストの最適化を実現するとのこと。

 「顧客の環境を正しく理解した上で、ベアメタルクラウドとIaaSを組み合わせて、最適な環境を提供するものになる。ベアメタルクラウドにサーバーを集約することでのコストメリットがあるほか、レガシーアプリケーションのシステム変更がなく、移行期間を大幅に短縮できるメリットを提供できる」(JBCCの大島事業部長)とした。

VMware環境最適クラウド移行サービス

 ここでは、移行段階とする事例を示した。VMware Cloud on AWS(VMC)の活用により、データセンター利用のVMware環境から、ベアメタルクラウドへと移行し、高集約率で配置したことで、年間200万円のコストを削減。同時に、AWSからJBCCへの運用移管により、35%のコスト削減が可能になるという。

 またAzure VMware Solution(AVS)の採用では、オンプレミスへのマイグレーションと比較して、年間420万円のコストを削減。AVSにサーバーを集約し、Azure仮想マシンへの配置より、25%のコスト削減ができるとのこと。「全体のサーバーの9割がWindowsであり、Azureの利用特典が利用できたため、AWSに比べて42%のコスト削減が可能になる。顧客の環境によって最適なクラウドの提案を行った事例のひとつ」とした。

VMware Cloud on AWS(VMC)採用事例
Azure VMware Solution(AVS)採用事例

 なお国内クラウド市場は、2025年まで年平均成長率が18.4%と2桁成長を続け、ITソリューション分野において最も高い成長を遂げると予測されている。

 だが、パブリッククラウドの未活用企業は約7割であり、日本のクラウド利用は米国に比べて7年遅れているともいわれている。また日本では、ITエンジニアの77%がIT企業に在籍しており、ユーザー企業のIT人材が質・量の両面において不足していることを薮下副社長は指摘。

 「その背景には、クラウドでコストは安くなるのか、運用環境が複雑化し、技術が高度化してしまうのではないかといった不安により、クラウドが選ばれない、クラウドが適切に活用されないことにつながっている。ユーザー企業だけではクラウドの活用は困難であり、ユーザー企業とIT企業が真の意味で伴走する必要がある。JBCCでは、クラウド活用の効果を見える化、最適なクラウドの組み合わせの提案、最適な構築から運用までの支援を行うことで、クラウド運用のパートナーとなり、クラウドをITの選択肢とすることで、日本企業が競争力を高めて成長し、躍動する社会の創出につなげたい」と述べた。

 またJBCCの大島事業部長は、「環境はサイロ化しても、運用はサイロ化させないことを目指している。クラウドへの移行後も運用サービスでサポートし、今後加速するハイブリッド/マルチクラウドに対応したサービスを開発し、顧客のモダナイゼーションをサポートし、DXを支援できる」などと述べた。

JBCCのクラウド事業の目指す姿