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日本マイクロソフト、「Microsoft Ignite 2021」でのAzure関連の発表を解説
ハイブリッドへのアプローチの変化、Azure ArcやAzure Stack HCIの新機能などを説明
2021年12月1日 06:00
米Microsoftが11月3日~4日に開催したカンファレンス「Microsoft Ignite 2021」でのAzure関連の発表について、日本マイクロソフトは11月26日、メディア向けに解説した。
新発表のうち、主にハイブリッドクラウドとセキュリティの部分を紹介しており、Microsoftのハイブリッドへのアプローチの変化や、Azure Arcの新機能、Azure Stack HCIの最新版などに関する説明が行われた。
Azureだけでない包括的なハイブリッドクラウドへ
ハイブリッド関連については、日本マイクロソフト株式会社 Azureビジネス本部 マーケットデベロップメント部 プロダクトマネージャー/Azure SME 佐藤壮一氏が解説した。
まず最初に、MicrosoftのメッセージがIgniteから変わったところとして、クラウドについて「Azure」だけではなく、一連のサービスを「Microsoft Cloud」として包括的に扱うようになったと佐藤氏は語った。そのうえで、「方向性は変わっていない」と補足した。
その中のAzureのハイブリッドについて、佐藤氏は「Most conprehensive hybrid and multicloud platform(最も包括的なハイブリッド・マルチクラウドプラットフォーム)」として整理しなおし、よりフォーカスが当たったのではないかと述べた。「Windows ServerとLinuxだけでも、オンプレミスとクラウドだけでもなく、幅広く包括的にマルチプラットフォームに舵を切るというのが色濃く出たのが、今回のIgniteの発表だったと思う」(佐藤氏)。
その具体例として、「Innovate anywhere with Azure」から「Innovate anywhere with Azure Arc」と、“Arc”を追加したスライドが増えたことを佐藤氏は指摘した。
AzureからvSphereを管理するAzure Arc on VMware vSphere
新発表として取り上げたのは、まず「Azure Arc on VMware vSphere」(パブリックプレビュー)だ。名称はまだ揺れているが、一般提供開始までには確定するだろうという。
これについて佐藤氏は、「ArcってVMwareをサポートしていなかった?」という想定質問を投げかけ、従来はAzure Arc Enabled Serversで他社クラウドやオンプレミスからの仮想マシンをサポートしていたことを紹介。それに対してAzure Arc on VMware vSphereでは、VMwareの仮想マシンではなくvSphereスタック全体をサポートするのだと説明した。
具体的には、VMwareの管理ソリューションであるVMware vCenter Serverに、Azure Arc Resource Bridgeをつなぐ。これにより、Azure Portalから、オンプレミスのVMwareで、仮想マシンの作成と削除、起動と停止などができるようになるという。
同様に、Azure Portalからオンプレミスの操作ができる機能は、Azure Stack HCIについても発表された。「これが包括的というのを端的に表している」と佐藤氏は述べた。
Arc-enabled PaaS servicesのアップデート
Azure Arc関連のそのほかのアナウンスとしては、Azure Stack HCIや他クラウドなどで使えるAzureのさまざまなPaaSサービス(Arc-enabled PaaS services)のアップデートも佐藤氏は紹介した。
SQL managed instanceについて、「展開し管理しやくする」(佐藤氏)機能を一般提供開始した。また、機械学習の推論を実行するArc-enabled ML inferencing(パブリックプレビュー)も発表された。
さらに、Arcの今後のロードマップも佐藤氏は紹介した。GitOpsのFluxのバージョンアップや、KubernetesでAzure ADとの連動性を上げることなど、より包括的な方向にArcのスコープを広げていくという。
Azure Stack HCIの強化点と位置づけ
データセンターやエッジの分野の発表としては、Azure Stack HCIの21H2の一般提供開始を佐藤氏は説明した。
Azure StackはかつてはWindows ServerでHCIを構成する機能だったが、現在ではAzure Stack HCIという独立したOSとなっている。佐藤氏は、「21H2で、あらためてAzure Stack HCIとWindows Serverのすみ分けが明確になってきた」として、仮想化プラットフォームがAzure Stack HCI、その上やベアメタルサーバーのワークロードがWindows Serverという位置づけを説明した。
「Ignoteのブレークアウトセッションでひっそり発表されていた」(佐藤氏)というのが、Windows Server 2022 Azure Editionだ(近日提供予定)。AzureのIaaS上で提供されているエディションのWindows Server 2022を、Azure Stack HCIにも提供するもの。
Add-on subscriptionというライセンスモデルもアナウンスされた。Azure Stack HCIのライセンスのサブスクリプションの中で、ゲストのWindows Serverのライセンスも購入できるものを、2020年内(12月中ごろ予定)に発表予定だという。
そのほか、サポート終了したゲストOSのセキュリティパッチを無償提供する拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)の対象ホストに、Azure Stack HCIが含まれることも佐藤氏は説明した。
Azure Stack HCIの21H2の新機能についても佐藤氏は概要を紹介した。OSアップデート時などにハードウェアのリブートを避け、ソフトウェアだけ再起動するKernel Soft Rebootや、GPUへの対応、高い機能レベルでCPUの互換性を持つ機能、シンプロビジョニングをS2D(Storage Spaces Direct)で使えるようにする機能、インテントベースのネットワーク管理などがあるという。
さらにAzureとの統合については、Kubernetesプラットフォームとしての継続的な進化や、Arcからのシームレスな管理の強化、複数HCIクラスターをAzure Portalから一括監視する機能(全国やグローバルに展開している組織向け。プレビュー版)、Azure Portalからのセルフサービス系の機能(Azure PortalからAzure IaaSと同じようにAzure Stack HCIでも仮想マシンの展開や管理が可能。プレビュー版)といった変更点を佐藤氏は紹介した。
Azure Virtual DesktopでAzure Stack HCIを利用可能に
佐藤氏は最後に、Azure Virtual Desktop for Azure Stack HCI(パブリックプレビュー版)の発表を紹介した。
Azure Virtual Desktop for Azure Stack HCIは、VDIサービスのAzure Virtual Desktop(AVD)で、仮想デスクトップの実行場所をオンプレミスのAzure Stack HCIにもできるようにするものだ。
利点としては、管理プレーンがAVDなのでその管理が不要なこと、Windows 10/11マルチセッションがAVDだけでなくAVD for Azure Stack HCIでも使えること、ネットワーク的に近いところにあるのでレイテンシーが小さく使えること、データがオンプレミスにあるフルコントロール性、クラウドとオンプレミスを横断したスケーラビリティ(ふだんはオンプレミスでユーザーが増えたらクラウド、など)を佐藤氏は挙げた。
セキュリティ関連の発表
セキュリティ関連のIgniteでの発表については、日本マイクロソフト株式会社 Azureビジネス本部 マーケットデベロップメント部 シニアプロダクトマネージャー/Azure SME 廣瀬一海氏が解説した。
まず、Microsoft Defender for Business。ビジネス向けEDR製品を、新しく中小企業向けに発売する。
Microsoft Defender for Cloudは、複数の製品を「for Cloud」としてまとめたものだ。その中で、ポリシーによるセキュリティチェックがマルチクラウド対応し、AzureからAWS上のセキュリティチェックができるようになったという。
Microsoft Defender for IoTは、OT(産業系などの制御機器)デバイスが狙われやすくメンテナンスしにくいことに対応するもので、SIEMのMicrosoft Sentinelで透過的に統合できる。
そのMicrosoft Sentinel(旧名Azure Sentinel)では、Content hub(対応先の一覧)の登録が100個ほど増えたこととを廣瀬氏は説明した。
そのほか、コンプライアンスまわりで細かいアップデートも発表された。Teamsなどでハラスメント的なことがあったときに気づける機能「Communication Compliance features」などがあると廣瀬氏は紹介した。