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ソフトクリエイト、人間の目をAIでカバーする状況認識AI「メニナルAI」で中小製造業の現場改善を支援

 株式会社ソフトクリエイトは3日、製造業が課題とする技術継承のサポートを目的とした中堅製造業向けAIソリューション「メニナルAI」を販売開始すると発表した。手順通りに作業が進められているかどうかといった確認や、生産性改善のポイントなどをAIによって可視化する。

 作業状況を可視化して、例えば、手順や作業工程は同じなのにスタッフによって生産効率に違いがある要因や、品質のバラツキが起こる要因などを発見し、課題解決を進めるとのことで、ソフトクリエイト 事業推進本部 製品開発部の畠山覚部長は「大手企業は自身で同じようなソリューションを開発しているので、我々のターゲットはAI導入が進んでいない中小の製造業になる。今後は音声データを認識するソリューションの開発、フィジカルAIとさらに技術進化を進めていきたい」と述べた。

株式会社ソフトクリエイト 事業推進本部 製品開発部 部長の畠山覚氏

現場の目になり日本の製造業を変えていく

 ソフトクリエイトでは2023年からAI活用と開発に取り組み、「仕事でも安心して使えるAIとしてSafe AI Gatewayを提供し、150社を超えるお客さまに導入している。その後、AI技術開発を進め、12件の特許取得などの実績を作ってきた」(ソフトクリエイト 上席執行役員 規格統括部の鈴木大智統括部長)とのこと。

株式会社ソフトクリエイト 上席執行役員 規格統括部 統括部長の鈴木大智氏

 その中で、製造業向けにアンケートを実施したところ、人手不足と技術継承という課題を抱えているほか、AI利用も進んでいない実態が明らかになった。そこで開発を進めることになったのが、現場の目になり日本の製造業を変えていくことを目標とした「メニナルAI」だ。

 AIがカバーする領域は広いが、ソフトクリエイトでは、自社で進めている基礎研究、応用研究に加え、商品開発、AI利用支援などを進めている。その中で、製造業など人間が動いて作業する現場ではAI導入がうまく進んでいないことに着目した。

 事務処理にはAIが着実に浸透しているものの、製造業などの現場では作業工程が個別最適化されているため、パッケージ製品の適用が難しく、課題をデジタルデータとして捉えにくい。特に中小の製造業では導入可能な価格帯の製品がなかったことから、これらをターゲットとしたメニナルAIを開発した。

作業工程が個別最適化されているため、パッケージ製品の適用が難しい点が課題という

 最初に取り組んだのは、「AIに手順を聞くのではなく、手順通りかを確認させたい」だった。普通のパソコンとWebカメラのみを使い、マルチモーダルLLM(大規模言語モデル)の画像認識機能を利用して、連続した画像から状況を把握することで、あらかじめ学習した手順通りに物事が進んでいるかどうかを検証した。その結果、画像と文書を時系列で並べて手順の識別を行い、あらかじめ学習させた手順と比較して正誤判定を行えたという。

あらかじめ学習した手順通りに物事が進んでいるかどうかを検証

 次に取り組んだのは、工場などの生産性改善ポイントを見つけ出すといった、AIによる可視化支援だ。人や物を認識する画像認識とセンサー情報などのデータによって状況を認識。認識した状況から改善点を示唆するもので、工場内で作業するスタッフの動線を記録してAIに改善提案をさせることで、作業プロセスの改善を図った。その結果、画像認識から一段進化した状況認識を行うことが可能になったという。

「画像認識」から「状況認識」へ拡張

 続いては、それまで人間が行ってきた難易度の高い検品をAIに補助させる取り組みを行った。介護事業所では、同じ材料を使った同じメニューであっても、入所者の状態によって食材を細かく切って提供する、すりつぶして提供するなどの違いがある。こうした入所者ごとの食形態に応じた配膳方法を人間がチェックして提供しているが、AIを活用することで、人間の作業を補助することができないかといった点について検証を行った。

 その際は、お盆を撮影した画像から料理を抜き出し、メニュー情報を基にした推論を実施したが、画像のほかにさまざまな情報を取得して推論を行う方法に着目。画像認識だけでは取得が難しかった料理残量については、LIDARセンサーを用いて対応した。

画像から状況を判断し、そこからの作業プロセスの改善提案をAIで可能に

 さらに、反射してしまうため画像認識がしにくい画像に対して、AIで画像処理フィルタを生成し瞬時に画像処理するなど、画像認識を追及。こうして画像認識AIにより検品作業の改善を進めた結果、この方式で多種の部品に対応可能となった。

認識精度向上のためにさまざまな技術に着目

 最後に取り組んだのは、工程を可視化する取り組みだ。細かい部品の手作業が300工程あり、生産効率を上げるために各工程を可視化することが必要になった。そこで画像認識、センサー情報などとともに時系列でデータを保管し、状況認識と工程を認識した結果、工程の開始と終了の検知、工程単位での時間や手順の比較など、各スタッフがどのように作業を進めているのかを可視化できたという。

作業工程の可視化に向けた取り組み

 こうした経験を経て、通常は人間の目で行っている確認作業をAIでカバーする「メニナルAI」が開発された。製造現場に導入し、画像認識や状況認識によって人間の目の代わりになるAIサービスとなる。

 画像のタグ付け、工程の定義、画像認識、工程認識の4ステップで導入でき、センサーなどの情報があれば、画像集合にひも付けできる。

 提供開始時期は2月中旬からで、導入は最短で1週間程度となる。

画像のタグ付け、工程の定義、画像認識、工程認識の4ステップ

 なお、技術的なポイントとしては4つを挙げた。

 1つ目の静止画ベースの状況認識では、従来型の動画を前提としたものとは異なり、静止画単体から状況を推定可能。順序情報をタグで付与することによって状況遷移を定義する方式を採用しており、軽量、即時性、低コストでの導入といった特徴を持つ。

 2つ目のタグベースの状況定義は、物体認識やシーン認識を超えて「タグの発生順序」という時系列的な内容を静止画の集合から推定可能にしており、何がどの順番で起こったのかを柔軟に判別できるという。

 3つ目は、安全性と現場で使えるUIを持つこと。クラウド依存の生成AIだけでなく、小型ローカル生成AIと従来型アルゴリズムのハイブリッド運用を行えるため、コスト面、セキュリティ面でメリットを提供可能。病院や工場といった機密性の高い場所での活用にも対応する。

 最後は精度へのこだわりで、生成についてはファインチューニング、強化学習にも対応。初段の画像処理におけるカスタムビジョンの採用、後続のデータによるデータ補正などが可能とした。

 なお、今後は、音声データを認識し人間の耳の代わりとなる「ミミ(耳)ニナルAI」を2026年夏に、フィジカルAI「ウデ(腕)ニナルAI」を2026年秋に提供する計画だ。

今後の展開