ニュース
NECの2020年度上期連結業績は減収減益、今後は“ニューノーマル”での新たな需要に期待
2020年10月30日 00:00
日本電気株式会社(以下、NEC)は29日、2020年度上期(2020年4~9月)の連結業績を発表した。
売上収益は、前年同期比9.2%減の1兆3150億円、営業利益は同57.4%減の199億円。調整後営業利益は同47.7%減の290億円、税引前利益は同58.0%減の193億円、当期純利益は同62.3%減の110億円となった。
NEC 代表取締役執行役員社長兼CEOの新野隆氏は、「売上収益は大型案件の減少や、ビジネスPCの更新需要の一巡に加えて、新型コロナウイルス感染症の拡大に起因するマクロ経済悪化の影響により減収となった。また調整後営業利益では、費用コントロールや子会社株式売却益を計上したが売上収益の減少により減益になった」とした。
調整後営業利益では、ビジネスPCの需要減で40億円のマイナス、5GやDX共通プラットフォームへの投資増で90億円のマイナス、グローバルやエンタープライズなどの市況悪化影響で、330億円のマイナスとなったという。
セグメント別業績
セグメント別業績では、社会公共事業の売上収益が前年同期比14.5%減の1771億円、調整後営業利益は前年同期から53億円減の46億円。医療向けや地域産業向けが減少したことに加え、企業向けパソコンの更新需要の一巡などが影響した。
社会基盤事業は売上収益が前年同期比5.9%減の2816億円、調整後営業利益は前年同期から77億円減の166億円。航空宇宙、防衛向けの売り上げが減少したことに加え、連結子会社の日本航空電子工業の売り上げ減少が影響したという。ビジネスPCの需要減は、GIGAスクール需要を取り込むことでカバーしたという。「日本航空電子工業を除いた単独では、前年並みの利益を確保している」とした。
エンタープライズ事業は、売上収益が前年同期比17.4%減の2381億円、調整後営業利益は前年同期から73億円減の180億円。前年同期にあった流通向けおよび金融向けの大型案件の反動や、企業向けパソコンの更新需要の一巡、製造業や流通・サービス業におけるIT投資の抑制などが影響している。「だが、ニューノーマルにおける新たな需要も出てきている。これが今後の業績に貢献すると期待している」とした。
ネットワークサービス事業は、売上収益が前年同期比5.2%増の2255億円、調整後営業利益は前年同期から29億円減の62億円。連結子会社のNECネッツエスアイでニューノーマル商材を中心に増加。だが、下期以降の5G基地局出荷に向けた開発の加速。スタンドアロン向けの開発費用の増加などにより減益になった。
グローバルは、売上収益が前年同期比9.9%減の2193億円、調整後営業損失は44億円悪化し、33億円の赤字となった。海洋システムが増加したものの、ディスプレイやワイヤレスバックホールなどが減少。さらに、買収時から見込んでいたKMDにおける一部の事業の終息が影響した。
「売上収益、調整後営業損失ともに、ディスプレイ事業のマイナス影響が大きい。だが、継続していく事業においては、収益では大幅に改善をしている」とした。ディスプレイ事業のシャープとの合弁会社化は、2020年11月に実施する予定だという。
システムプラットフォームやデジタルビジネスプラットフォーム、クロスインダストリーなどで構成するその他事業は、売上収益が前年同期比11.8%減の1734億円、調整後営業利益は前年同期から67億円減の72億円となった。
なお、2020年度上期の国内受注状況は全体では前年同期比2%増。内訳は、社会公共が同22%減、社会基盤は同22%増、エンタープライズは同12%減、ネットワークサービスは同14%増、グローバルは同56%増となった。全体では、第1四半期が同5%減であったが、第2四半期は同10%増となっている。
NECの新野社長兼CEOは、「グローバルは海洋システムが好調を維持している」としたほか、NEC 代表取締役執行役員副社長兼CFOの森田隆之氏は、「社会基盤の増加の中にはGIGAスクール案件が入っている。ここは順調であり、計画を上回っているが、サプライの問題がある」と供給の遅れを懸念した。
新型コロナウイルス感染症の業績へのマイナス影響は大きくなる
2020年度通期業績見通しは、売上収益が前年比2.1%減の3兆300億円、営業利益は同17.5%増の1500億円、調整後営業利益は同13.2%増の1650億円、当期純利益は同10.0%減の900億円と、期初見通しを据え置いた。
「新型コロナウイルス感染症の影響が当初見込みよりも長期化する中で、業績へのマイナス影響も大きくなる想定である。各種施策を着実に実行することで、調整後営業利益の1650億円をぜひとも達成し。来年度から始まる次期中期計画につなげたい」と述べた。
なお、新型コロナウイルス感染症拡大の通期営業利益への影響は、5月時点ではマイナス約500億円としていたが、これをマイナス約650億円とした。
「感染症拡大の終息に、しばらくの時間を要することに伴い、影響も当初見通しよりも拡大することになる。これを費用コントロール、ニューノーマル需要の獲得、特別対策で相殺するという考えは変わらない。費用節減は予定通りに進捗し、今後も不要不急の費用を抑制することで、年間で220億円の改善を想定している。また、ニューノーマル需要の獲得では、年間で160億円を想定しているが、現時点では60億円は見えており、下期に100億円の足づけをしていく。補正予算や各種案件を積み上げていくことになる。さらに、株式や不動産の売却による資産の圧縮を行い、資産売却で270億円を見込んでいる。これらにより、新型コロナによるマイナス影響を相殺していく」とした。
また、NECグループ外企業による利用比率が増大し、利用形態が大きく変化していた相模原事業場の土地をヒューリックに譲渡したことで、2020年度業績において約160億円を営業利益に計上する。なお譲渡後も当面は賃借で利用し、同事業場で行う事業は従来通り継続するという。
さらに、スイスの大手金融ソフトウェア企業のAvaloq社を買収し、2021年4月までに買収完了することにも触れた。買収金額は約2360億円を予定している。
英国政府との5Gのインフラ整備における協業については、「NECは、欧米での5Gのグローバル展開を進めたいと考えており、そのためにはさまざまな評価をそれぞれの地域で行う必要がある。英国では、まずは評価のためのシステムを作ることになる。ここで一定の成果が出れば、オペレータに対してもビジネスができるようになる。技術的な検証をきちんとやることが先決である。英国以外のオペレータからもPoCの要求がきており、これにも対応していく。うまくいればグローバル展開に向けて弾みがつくだろう」と述べた。