ニュース

エッジコンピューティングに必要となるマイクロデータセンター、IIJが実証実験を公開

IIJが実証を進めるマイクロデータセンター

 株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は10月7日、同社の白井データセンターキャンパスで実証実験を進めている、マイクロデータセンターを報道陣向けに公開した。

 マイクロデータセンターは、冷蔵庫ほどのサイズに、データセンターに必要な機器を凝縮し、簡単にどこにでも設置できるようにした、超小規模のデータセンター設備。IIJでは、屋外環境に設置したマイクロデータセンターについて、設備的な性能や、自立運転シナリオの憲章、データセンターインフラ管理システム(DCIM)からの遠隔による運用・監視に関する検証を行っている。

 IIJ基盤エンジニアリング本部基盤サービス部サービス開発課長の室崎貴司氏は、どのような場所にでも容易に設置可能で、運用の手間がかからないマイクロデータセンターを提供したいということから、マイクロデータセンターの選定基準としては、構築/拡張しやすいこと、運用しやすいこと、経済的であることを挙げた。

マイクロデータセンター(MDC)とは
実証概要

 こうした条件から、実証には豪Zella DC製のマイクロデータセンターを採用。Zella DCは、オーストラリアで10年超があるマイクロデータセンター専業メーカーで、運用しやすさを追求した設計思想や、オーストラリアの鉱山などの過酷な環境で長期間の使用実績があること、6大陸にまたがる導入実績があること、台湾/日本製パーツを使用し、オーストラリアの工場で製造された信頼性などが、採用の決め手となったという。

 今回の実証では、12Uタイプのモデルを屋外に設置。内部にはサーバーのほか、ラックマウント型UPSや、監視用カメラ、消火装置などの設置が可能で、空調には一般的な家庭で使っているものと同様のエアコンを使用している。現時点では、発熱に関する試験のための機器が設置されているという。

ラックの内部
12Uタイプの小型モデルを屋外に設置
空調には一般的なエアコンを使用

 また、マイクロデータセンターの隣には、ローカル5Gのアンテナもあり、5G基地局の近くにサーバーを分散配置することで、データ処理を超低遅延で実行できるようにする、マルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)などのユースケースの実証も計画する。

マイクロデータセンターの隣にはローカル5Gのアンテナ

 マイクロデータセンターの必要性について室崎氏は、IoT機器から収集したビッグデータをもとに、サイバー空間上に現実の工場などを再現してシミュレーションを可能にする「デジタルツイン」技術などにより、今後はさらにエッジコンピューティングの重要性が増すことが挙げられるとした。

 IoT機器などから収集した膨大なデータを処理することを考えると、大量の計算が必要な機械学習モデルの生成などの処理はクラウド側で、学習モデルに基づいた推論など、すぐに反応が必要な処理はエッジ側で行う必要があり、今後のはデータセンターは、クラウド向けハイパースケールデータセンターと、エッジ向けデータセンターが役割分担をする形になると予想されるとした。

 マイクロデータセンターのユースケースとしては、5G基地局の近くに設置するMECのほか、工場のデジタル・IT基盤、スマートシティのIT・IoT基盤、オフィスや店舗内などに設置するサーバールームなどが考えられると説明。また、災害時などに設置する用途も考えられるため、屋外にも設置可能なマイクロデータセンターでの試験を行うという。

 IIJでは実証実験を進め、MDCを活用して顧客が自社でエッジコンピューティング環境を短期間で容易に構築、運用できるソリューションを開発し、2021年度中に提供開始する予定としている。

MDCのユースケース