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日本マイクロソフト、金融業界におけるDX支援の取り組みや最新事例を紹介

フルクラウド型フルバンキングシステムを導入した北國銀行での事例も

 日本マイクロソフト株式会社は22日、金融市場向け戦略に関する説明会をオンラインで開催した。説明会では、金融市場におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)支援の取り組み状況、および最新事例を紹介するとともに、今年5月に国内初となるパブリッククラウド上でのフルバンキングシステムの稼働を開始した株式会社北國銀行の事例について説明した。

 日本マイクロソフトでは、業界ごとに特化したDXの支援を推進しており、DXをエンドツーエンドでカバーするフルポートフォリオのソリューションをラインアップしている。

 日本マイクロソフト 執行役員 常務 エンタープライズ事業本部 本部長の五十嵐毅氏は、「当社は、顧客のDXを全包囲網でサポートするDXパートナーになることを目指して事業展開している。その中で、本年度の日本企業の動きとして、『意思決定を早くするために企業構造を変革』、『DXに関わるCIO、CDO、CSOといった人材を社外から採用』、『リーダーの代替わり』という3つの傾向が多くみられた。これは、1年以上続くコロナ禍を経て、攻めの施策に転じる企業が増えたことを示しており、今年は日本のDX元年になると考えている。当社は7月から新年度となるが、より業界特化型のソリューションを強化して、顧客のDX支援を加速していく」と、同社のDX戦略の方針を語った。

日本マイクロソフト 執行役員 常務 エンタープライズ事業本部 本部長の五十嵐毅氏

 金融業界でのDX支援の取り組み状況について、日本マイクロソフト 業務執行役員 金融イノベーション本部長の藤井達人氏は、「金融業界においてもテクノロジーの活用が急速に進展しており、データドリブンや没入感のある体験など、金融サービスに求められるユーザー体験の基準も、すでにテック業界と同レベルに達している。これに対して当社では、金融業界の顧客が最新の技術トレンドに追随し、市場で高い競争力を発揮できるよう、信頼性の高いクラウドテクノロジーを提供している。また、テクノロジーの供給だけでなく、Go To Marketにおける協業、または人材育成、データ活用の支援など、さまざまな側面から金融機関のDXを支援できることも当社の強みとなっている」とした。

日本マイクロソフト 業務執行役員 金融イノベーション本部長の藤井達人氏

 同社が推進する金融DXの事例としては、海外ではグローバル金融機関とDXパートナーシップを締結している。今年4月にアクサ生命保険と協力してデジタルヘルスケアプラットフォームを構築するDXパートナーシップを発表。また、6月には、モルガン・スタンレーのクラウドネイティブへのシフトに焦点を当てたパートナーシップを発表している。

 国内の最新事例としては、三菱UFJフィナンシャル・グループとジェーシービーの取り組みを紹介。三菱UFJフィナンシャル・グループの事例では、リスク管理システムのEoS(End of Support)対応をきっかけに、グループ全体の共同システム基盤を構築したという。このシステム基盤にAzureを採用しており、第1弾として三菱UFJモルガン・スタンレー証券におけるリスク管理システムを稼働開始している。

三菱UFJフィナンシャル・グループの事例概要

 ジェーシービーの事例では、同社の働き方改革の取り組みの中で、リモートワークを支える基盤にWindows Virtual Desktopを採用。合わせて、Microsoft Teamsなどのコミュニケーションツールも活用し、コロナ禍の影響を受ける中でスピーディなリモートワーク環境の構築を実現した。

ジェーシービーの事例概要

 また、藤井氏は、現在開発を進めている金融業界向けのクラウドサービス機能「Microsoft Cloud for Financial Services」にも触れ、「Microsoft Cloud for Financial Servicesは、パートナー企業のソリューションと連携し、金融業務のクラウド化を推進するサービス機能となる。現在、リテールバンキング向けの新機能として、『統合化された顧客プロファイル』、『カスタマー オンボーディング』、『バンキング カスタマーエンゲージメント』、『ローンマネージャー』の4つを開発している。これらの機能により、金融機関が短期間・低コストでデジタル化を実現できるようになる」と述べた。

「Microsoft Cloud for Financial Services」の機能概要

北國銀行の事例を紹介

 そして、国内初となるフルバンキングシステムのパブリッククラウド移行を実現した北國銀行の事例について、同社 取締役頭取の杖村修司氏が説明した。「当社のクラウド移行の取り組みは、2019年に個人向けのクラウドバンキングをパブリッククラウドであるAzure上で提供開始したことからスタートした。その後、勘定系システムのデータをAzure上に集約し、今年5月、フルバンキングシステムのIaaS化に成功した。また、クラウド化を推進した背景には、次世代のシステム基盤構築に向けて戦略的投資へのシフトを加速したことも挙げられる。2011年3月期のIT投資関連コストは保守・運用が9割を占めていたが、2016年3月期には戦略的投資が3割に拡大し、2021年3月期は4割を超えている」という。

北國銀行 取締役頭取の杖村修司氏

 今後の展開については、「引き続きクラウド移行に向けた戦略的投資を強化し、来年春ごろには法人向けクラウドバンキングをリリースする。勘定系システムについては、2024年をめどにPaaS化することを予定している。さらに、サブシステムのクラウド移行も進め、今年11月には営業支援システムと融資支援システムをAzure上で運用開始する。2024年には、100を超えるサブシステムをすべてAzure上に移行する計画だ。これにより、勘定系システムを中核として、あらゆるバンキングシステムがAzure上でシームレスに連携できるようになる。将来的には、総合的クラウドシステムをITパートナーに無償提供することで、価値観と戦略を共有する金融機関を目指していく」との考えを示した。

2024年に向けて北國銀行が目指すエコシステム