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日本マイクロソフトが金融機関向けDX支援策を発表 12社と共同でDX案件の創出を加速

 日本マイクロソフト株式会社は1月28日、金融機関向けDX支援への取り組みについて説明。新たに金融機関向けデジタルトランスフォーメーション(DX)変革特別支援施策を発表した。

 ひとつめは、フィンテックおよびインシュアテック領域における新たなパートナー協業プログラム「Microsoft Enterprise Accelerator - Fintech/Insurtech(MAFI:マーフィー)」の開始である。

 日本マイクロソフト 業務執行役員 エンタープライズ事業本部 金融イノベーション本部の藤井達人本部長は、「日本マイクロソフトが持つテクノロジーおよび顧客リレーションと、パートナーが持つソリューション、ビジネスアイデアという双方の強みを持ち合って、金融機関に向けたDXの提案を共同で行うものである。日本マイクロソフトが感じていた金融業界のモード2(環境の変化に対応する競争力強化に向けた変革)領域における不足部分を、パートナーにおぎなってもらうことになる」などとした。

日本マイクロソフト 業務執行役員 エンタープライズ事業本部 金融イノベーション本部の藤井達人本部長

 日本マイクロソフトが持つMicrosoft Azureやブロックチェーンなどのテクノロジーと、パートナー企業が持つBaaS(Banking as a Service)ソリューションやデータ分析能力、情報管理基盤などを組み合わせることで、金融機関の新たな収益源確保につなげる変革を支援する。具体的には、オープンAPIによるオープンバンキングやオープンインシュランスなどを通して、金融機関が持つ金融機能を外部企業に提供し、デジタルでの販売チャネル拡大を図ることを支援するという。

 日本マイクロソフトはパートナー企業に対して、Microsoft Azure上でのソリューション構築に関する技術支援を行い、DX案件の創出を加速。ソリューションの認知拡大に向けて、パートナー企業と共同でオンラインセミナーなども実施する。

 参加が決定しているのは、インフキュリオン、SBI R3 Japan、クラウドキャスト、クラウドリアルティ、クレジットエンジン、justInCaseTechnologies、ZEROBILLBANK JAPAN、Backbase Japan、bitFlyer Blockchain、Finatext、マネーツリー、LayerXの12社。今後30社程度にまでに拡大させる考えだ。

金融機関のDX推進を支援する新たなパートナー協業プログラムを開始

 2つめは、デジタルフィードバックループを実現するリファレンスアーキテクチャ「FgCF(Financial-grade Cloud Fundamentals)for DX」である。

 各種リファレンスアーキテクチャーとフレームワークをテクニカルガイドとして、金融機関やパートナーに無償で提供する。また、従来のFinancial-grade Cloud Fundamentalsは、マルチクラウドやゼロトラストセキュリティを実現するためのアーキテクチャーと位置づけ、「FgCFfor IT Modernization」に名称を変更する。いずれもGitHubを通じた公開を行う。

 「金融機関はデータを取り扱う業態であり、デジタルフィードバックループが行いやすい。FgCFを拡張し、デジタルフィードバックループの実現に向けた技術基盤を整備するためのテクニカルガイドを新たに提供する。IT基盤や人材、データの在り方を示し、FgCF for IT Modernizationと同様に、アーキテクチャとフレームワークを提供することになる」(藤井業務執行役員)としており、「グローバルで培った知見やユースケースを日本でも一層活用するのに加えて、日本市場における新たな施策を用意する」と述べた。

デジタルフィードバックループ

 なお、藤井業務執行役員は、日本IBMでキャリアをスタート。三菱UFJフィナンシャルグループデジタル企画部マネージングディレクター、auフィナンシャルホールディングスの執行役員最高デジタル責任者を経て、2020年12月に日本マイクロソフトに入社した。フィンテックを推進する立場を経験。かつて、日本マイクロソフトに在籍したこともあり、現場経験を経て復帰した格好だ。

 藤井業務執行役員は、「金融機関は、長引く低金利化、少子高齢化などの影響を受けて収益が低下しており、それを打開するために、コスト削減やDXへの投資を行っている。調査によると、テクノロジーを成功裏に使いこなす金融機関において増加する収益は40%に達し、テクノロジーと人々をうまく結びつけることで、業務を再設計することの必要性に同意する金融機関のエグゼクティブは79%に達している」とのデータを紹介。

 そして、「多くの人が、身の回りのレベルと同じ使いやすさのサービスを金融機関に求めている。さらに非金融機関が市場参入し、さまざまなサービスを開始している。銀行ではリテールや法人ビジネスのUXの進化、プロセスのオンライン化、自動化が求められている。証券ではデジタル証券市場への躍進やエコシステムの拡大、保険では事故が起きる前に防ぐためのテクノロジーを活用した提案が進んでいる。オープンバンキング/インシュランス、超パーソナライズされた体験の提供、データインテリジェンス、自律型サービスへの進化の4点が、デジタル時代の金融サービスの方向性であり、日本マイクロソフトはこうしたトレンドに先んじて、金融機関のDXを支援するパートナーになることを目指す」とした。

デジタルは金融機関と顧客の関係性に大きな変化をもたらしている
デジタル時代の金融サービス変革の方向性

 日本マイクロソフト 業務執行役員 エンタープライズ事業本部 金融サービス営業統括本部の綱田和功統括本部長は、Microsoftの2021年第2四半期業績において、Azureが前年同期比50%増、Office 365は同21%増、Dynamics 365は39%増と、全世界で高い成長を維持していることを示しながら、「米本社 CEOのサティア・ナデラは、『企業のDXは第2の波の幕開けが訪れている』『全産業でDXが進み、クラウド需要が伸びていると述べている』」とコメント。

 「日本の金融機関においてはコロナ禍でクラウドの利用が増加。Microsoft Teamsの利用は10倍に増加している。リモートワークでの社内向け利用、非対面営業での活用が増えている。Azureはこれまでの前年比2倍以上という成長を引き続き維持している。ここでは、WVD(Windows Virtual Desktop)が成長しているほか、既存システムのモダナイゼーションが加速している」とした。

日本マイクロソフト 業務執行役員 エンタープライズ事業本部金融サービス営業統括本部の綱田和功統括本部長

 また、「2025年の崖で示されたように、金融機関が持つブラックボックス化した大規模なレガシーシステムを放置すると、データ活用ができずにDX時代の敗者になり、DXのための新たな領域の予算を確保ができなかったり、サイバー攻撃や事故、災害のリスクが高まったりという課題がある。それを解決するために、メインフレームを無くすというロードマップを用意している金融機関もある」と前置き。

 「マイクロソフトでは、ITインフラやルール、ガバナンス、IT人材の近代化によるモダナイゼーション、データの収集、洞察、活用を中心としたITシステムの再編成というDXによる2つのモデルを提唱。企業としてのTech Intensityの強化と、アジャイルなデジタルフィードバックループを提案する」とする。

 ここでは、FgCFfor IT Modernizationの事例を挙げ、「第一生命の『ホームグランド』という基盤で利用されており、これをリファレンスとして多くの金融機関で導入が進められている。DXを通じて、新たなビジネスの開拓、グローバルでの競争力強化をするためのモダナイゼーションが進んでいる」とした。日本マイクソロフトと大手SIとの連携による金融機関のDX支援が進んでいることも明らかにした。

FgCF:Financial-grade Cloud Fundamentals

 グローバルでの金融機関との戦略的パートナーシップの事例も挙げた。2019年11月に、保険会社のAllianzとは、グローバル保険プラットフォームであるAllianz Business SystemをAzureで運用することを発表。コア部分をオープンソース化し、Insurance as a Serviceとして外部企業に提供しているほか、2020年8月には、Standard Charteredと提携。2025年までに、勘定系、次世代決済、オープンバンキングなどのコアシステムをクラウド化する上でAzureを選択。変革を加速しているという。

 「金融機関と共同体の形で、複数年に渡るパートナーシップを実施している。日本市場においても、早期に戦略的パートナーシップを実現したい」(藤井業務執行役員)とした。

グローバル金融機関と戦略的パートナーシップを締結