ニュース

オンライン上の仮想オフィスでアバターを通して業務を遂行――、富士ソフトが新サービス「FAMoffice」発表

 富士ソフト株式会社は26日、仮想オフィス空間「FAMoffice」を販売開始すると発表した。オンライン上に仮想空間のオフィスを設け、社内で働くスタッフがアバターとして業務を行うサービス。テレワークなど、リアルで顔を合わさずに仕事をしている従業員が、同じスペースにいる感覚で仕事を進めることができる。

FAMofficeとは?

 常務執行役員の本田英二氏は、「『コロナ禍で十分な社内コミュニケーションがとれない』という課題をヒントに生まれた、新しいサービスだ。テレワークで難しいとされる雑談、相談が行いやすく、少人数の会議を気軽に開催できる。昨年7月から開発を始め、いよいよ6月15日から販売を始められるようになった」と、開発の背景を紹介した。

 価格は、初期費用が10万円で、その後は3万円(~100ユーザー)から利用できる。

常務執行役員の本田英二氏

「いかにリアルに近い体験をデジタル上で実現できるか?」を目標に開発

 FAMofficeの発表会はサービス上で行われた。取材者もアバターとして参加。壇上の発表者の説明を聞き、疑問点は社内(富士ソフトの)スタッフに話しかけると、音声でやりとりできる。

 カメラを介して自分の顔が表示されるが、写真が小さいので、通常のWeb会議に比べれば気楽に参加できる。富士ソフト社員の女性に聞いてみたところ、「化粧していない顔で参加しても、写真は小さいのでそれほど問題ない感じです」という。

 開発が始まったのは2020年7月。テレワークが実施され、富士ソフト社内でも雑談ができなくなったことによって、コミュニケーションが不足している、仕事上の相談がしにくいといった声が挙がった。

 「そうした課題を解決できるサービスとして、いかにリアルに近い体験をデジタル上で実現できるか?を目標に開発を進めた」と、開発を担当したプロダクト事業本部 副本部長の松浦直樹氏は振り返る。

 利用はWebブラウザ上から。あえて専用ソフトを作らず、誰でも気軽に参加できる仕組みとした。

 今回、発表会で活用したように、外部参加者を招待して利用することも可能で、社外参加者を含めた利用ができる。バーチャルオフィスで再現されているのは、一般的なオフィスをグラフィック化したもので、デスクにいす、会議室などが設けられている。アバターはデスクに着席し、仕事を始めることになる。エグゼクティブ用の席を設けて、エグゼクティブはそこに着席してもらうこともできる。

FAMofficeの外観

 アバターは、話しかけたい人に重なると自動的に会話を始められるようになっており、気軽に話を始めることができる。アバターにはその人の名前が表示され、話したい相手を見つけるのも難しくない。メモを送って連絡することも可能だ。

 「アバターではあるのだが、それぞれのメンバーの個性が出る。机に座っている姿を見ると、テレワークといっても会社で仕事をする感覚で作業を進められる。サービスを知って問い合わせをもらった中には、テレワークではなく、支社や支店で利用したいという声もある。普段は離れて仕事をしているスタッフとも一体感を持って作業ができるのではないか?、という期待をいただいている」(松浦氏)。

 管理者側にとっては、社員がきちんと仕事をしているのかを確認するために利用することも可能。iPhoneの出退勤アプリと連動し、出勤した場合には、そこに出勤しているといったステータスを登録できる。管理者は、自分の所属する部署のメンバーの追加、削除を行うことができる。

 「会議についても、会議スペースにメンバーがそろえば、即会議をスタートできる。資料共有も可能で、配布された資料を見ながら会議を進められる」(松浦氏)。

FAMofficeの機能

 ただし、どんな会議でも自在にできるというわけではない。大人数の会議であれば、Zoom、Teamsといった専用ソフトに分があるという。富士ソフト自身も会議ツールとの併用を行っている。

 気になるのは通信容量だ。自宅でテレワークを行っている場合、家族の複数がオンラインで作業することもあり、通信容量が大きいと家庭内でトラブルが起こるケースもある。

 「実は私自身も同じ悩みを抱えながら、テレワークを行っている。そこで、通信容量を抑えるための改善を進めてきた。使い方にもよるが、現在のところ、1カ月フルに使って1人あたり2GBいかない容量に抑えている」(松浦氏)。

 今回の製品リリース前には、先行導入ユーザーに実際に利用してもらって、感想や意見を聞いた。その声を受けて改善を進めた部分もあるという。今回のリリース後も、「これで完成ということではなく、改善を進め、新しい使い方も実現していきたい」(松浦氏)としており、ユーザーの声を聞きながら、機能改善を進めていく考えだ。

 なお、端末はカメラとマイク付きのWindows 10 PCに対応し、WebブラウザはGoogle Chromeの最新版をサポートする。インターネット環境は、ダウンロードが10Mbps以上、アップロードが5Mbps以上。

 アバター(ID)数は、1オフィスフロアでは最大150人まで利用可能で、フロアの追加も可能となっている。

 発表会では、デジタル改革担当大臣の平井卓也氏のビデオメッセージが寄せられた。「実は5年前に、自民党本部に富士ソフトのmoreNOTEを導入しており、時間はかかったが完全ペーパーレス化を実現している。今回はテレワークを支援する新製品ということだが、新しいデジタルワーキングを進めるためには、こうした新しいツールが必要だ」と、新サービスにエールを送った。

デジタル改革担当大臣 平井卓也氏からはビデオメッセージが寄せられた