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新たな働き方を加速させるGoogle Workspaceの価値は? 敷島製パンなどが自社での活用法を説明

 グーグル・クラウド・ジャパン合同会社(Google Cloud Japan)は16日、統合型ワークスペース「Google Workspace」の活用事例を紹介するオンライン説明会を開催した。

 Google Workspaceは、2020年10月にG Suiteから名称を変更した法人向けサービスで、Gmailやカレンダー、Meet、チャット、ドライブ、ドキュメント、スプレッドシート、スライド、フォーム、サイトなどで構成されている。

 今回のオンライン説明会では、コロナ禍において、新たな働き方の加速や顧客接点の強化、社員教育や社内行事のオンライン化などにおいて、Google WorkspaceやChromebookを活用している例が示された。

採用活動や研修などをオンライン化した敷島製パン

 最初に登壇したのは、名古屋市に本社を持つ敷島製パンだ。新型コロナウイルスの感染が拡大するなかにおいて、Google Workspaceを活用し、採用活動や研修などをオンライン化したという。

 従来は全国3拠点で行っていた会社説明会をオンラインで開催しただけでなく、主要工場にて対面式で行っていた採用面接や、本社で行っていた内定式、入社式、研修もすべてオンライン化した。

 「会社説明会はGoogle Meetを活用したが、当初は学生が集まってくれるのか、言いたいことが伝わるのかといった不安があった。だが、地方の学生も参加できるメリットが生まれた。採用面接においては、Google Workspaceのチャットやスプレッドシートを使用し、離れた拠点にいる面接側と情報を共有するといったことが可能になった。内定式や入社式も自宅から参加できる形にし、全員が画面上に顔を出しながら実施した。トラブルはなかった」(敷島製パン 人事部人材開発グループ チーフの金原仁志氏)とした。

会社説明会や採用面接をオンライン化
内定式や入社式も自宅から参加できる形に
敷島製パン 人事部人材開発グループ チーフの金原仁志氏

 また、新入社員や従業員の研修もGoogle Meetを使ってすべてオンライン化。大規模セミナーや少人数研修、拠点ごとの研修など、さまざまな形で実施したという。

 「しかし社員研修後のフォローや参加者同士の横のつながりという点では、対面での実施に比べて改善すべき部分があると感じた。そこで、GoogleのSNSサービスであるCurrentsを活用。同じセミナーに参加した人や、同年代および同じ役職といった人たちでコミュニティを構成し、ふだん感じている悩みなどを共有しながら、人脈づくりや横のつながりを強化できるようにした」という。ここでは、人事部門を通じた継続的な教育や事後フォローも、Currentsを通じて行っているという。

 さらに、ツールを活用するための勉強会として、約30分間の「Meet de 勉強会」を開催。どこからでも参加できるようにしているほか、Google Formsを利用して、要望や悩みなどを収集し、これをセミナーの内容に反映しているという。

社内研修のフォロー
Meet de 勉強会

 2021年の新たな取り組みがインターンシップ(就業体験)へのオンライン活用だ。「グループワークのオンライン化は難しいが、ブレークアウトセッションの機能とスプレッドシートを活用することで、インターンシップに参加している。学生同士が意見を共有できるようにしている」という。

インターシップのオンライン実施に挑戦

Chromebookを導入し新たな働き方の実現につなげた敷島製パン

 また、敷島製パンではChromebookを導入しており、これも新たな働き方の実現につなげている。従来は、外出先への持ち運び用としてシンクライアント端末を導入。社内ではWindows 10搭載PCを導入していたが、シンクライアントでは、Windows環境へのアクセスに時間がかかること、自宅のWi-Fi環境のセキュリティ確保に課題があること、Google Meetの活用を検討した際に相性が悪かったことなどを理由に、Chromebookの導入を検討した。

 「DaaS環境にアクセスせずに基幹系Webシステムが利用できること、ブートチェックなどの何重ものセキュリティが施されていること、Google Meetとの相性がいいこと、従来端末に比べて1台あたりのコストが大幅に削減できることに加え、負荷が集中していたActive Directoryに頼らず、シンプルな管理が可能というメリットがあった」(敷島製パン SPS推進部企画グループ チーフの吉安壮真氏)とする。

Chromebookの導入を決めた経緯
敷島製パン SPS推進部企画グループ チーフの吉安壮真氏

 また、新型コロナウイルスの感染拡大によりテレワークを推進したが、これにあたって、以前から導入していた700台のChromebookに加え、新たに300台の端末を追加することになったという。この際に同社では、迅速さを重視し、迷わずにChromebookの採用を決定。1週間後には配布を完了しており、1回目の緊急事態宣言が発令された時には、すべてが活用できる状況になっていたという。

 「導入までのリードタイムの短縮とコスト削減で大きな効果があった。FAT PC(=一般のWindows PCなど)では、キッティングなどを考えると2カ月半ほどかかっていただろう。考えられないほどのスピードだった」(敷島製パンの吉安チーフ)とした。

 Windows 10環境への移行が完了したばかりといったこともあり、オフィスにあるWindows PCに自宅のChromebookからアクセスする環境を構築。セキュアな環境で、使い慣れたWindowsの操作を継続するといった使い方も行ったという。

導入してわかった便利さや敷島製パンでの使い方

 「Chromebookの操作に慣れないユーザーに対する、教育面での課題はあったが、これをオンライン教育によって対応した。これまではOSに依存しない働き方にシフトしたかったが、なかなかできないという状況にあったものの、コロナ禍での対応によって、これまで進まなかったデジタル化を進展させることもできた。就職活動を行う学生や、従業員の感染リスクの軽減、移動費の削減、ワークライフバランスの推進にもつなげることができた。名古屋では緊急事態宣言が解除されているが、今後もオンライン採用やオンライン研修は実施していくことになる。さらに、BeyondCorpの導入に向けた準備を進め、ゼロトラスト対応を図る」(敷島製パンの吉安チーフ)などとした。

在宅勤務中の円滑な社員コミュニケーションに活用する損害保険ジャパン

 損害保険ジャパンでは、在宅勤務中の円滑な社員コミュニケーションなどにGoogle Workspaceを利用しているという。

 損害保険ジャパンIT企画部計画推進グループ 主任の宇津木奈央氏は、「コロナ禍以前にも、災害発生時の店舗横断の情報共有としてスプレッドシートを活用したり、Formsを使った問い合わせ受付を実施したり、といったことを行ってきた」としながら、「在宅ワークの加速により、チャットを活用したコミュニケーション、Currentsを利用したナレッジ共有、Google Meetなどを利用した会議のセミナーなどが進展した」と語った。

 コミュニケーションでは、チャットを通じて、在宅ワークの進捗状況を共有。社員の利用率は90%に達しているという。また、チャットボットの利用数も月200回に達しており、ヘルプデスクへの直接の問い合わせが減少しているとのこと。

 「Google Cloud Japanの協力を得て、社内の衛星放送であるSOMPO.TVを通じて、チャットを活用することのメリットや、気軽に使えるツールであることなどを訴求した。番組の視聴率は通常の番組の3倍に達した。社員からも、Google Workspaceを積極的に使ってみたいという前向きな意見があった」という。

電話・メールからチャットへ

 ナレッジ共有では、これまでは社内イントラを通じた一方通行の発信であったが、コロナ禍においては、Currentsを活用した共有を開始。毎日700件の投稿があるという。ここではコロナ対策のナレッジやデジタルの活用法などのほか、読書の感想なども自由に書き込めるようにしているという。

 「出社していた時には、隣に座っている社員に気軽に聞けるようなことが聞けなくなった、という状況が生まれている。社員が不足していると感じる情報をCurrentsでカバーしている」という。

社内イントラからCurrent活用へと移行したナレッジ共有

 会議、セミナーでは、オンライン企業内大学「損保ジャパン大学」を2020年10月からスタート。本社の関連部門がそれぞれに展開してきた人材育成に関するコンテンツやメニューを統合し、社員が自由に受講できるようにしているという。Google Meetでオンライン開催し、Googleドライブで資料を共有。Formsでアンケートを実施するといった環境を用意しているという。

会議、セミナーでの活用事例

DXのためのツールとしてGoogle Workspaceを採用した生活協同組合コープさっぽろ

 生活協同組合コープさっぽろでは、DXのためのツールとしてGoogle Workspaceを採用。生活協同組合コープさっぽろ CIOの長谷川秀樹氏は、「DXで重要なのは、紙業務をシステム化することではなく、紙業務をオンライン業務化し、自動化するということである。A4サイズの紙をそのままシステムに置き換えることではない」と指摘。

 「仕事をオンライン上で行うことが大切である。Google Workspaceは、オンライン上でドキュメントを書き、共有できる点が特徴であり、Excelなどとは大きく異なる。バージョン管理という考え方がなくなる。脱Cドライブの使い方が大切である。また、会議は、口頭とリアルタイムドキュメンテーションの2つのチャンネルで進めることが最適である。これがオンライン上で仕事をすることだ」と述べた。

 さらに、「クラウドストレージを使用することで効率化し、セキュリティを担保した上でのスムーズな情報共有方法を検討すべきである」などと述べた。

生活協同組合コープさっぽろ CIOの長谷川秀樹氏