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富士通の2020年度第3四半期連結業績、採算性の改善により営業利益が大きく増加

 富士通株式会社は28日、2020年度第3四半期(2020年4月~12月)連結業績を発表した。売上収益が前年同期比8.2%減の2兆5262億円、営業利益が同28.2%増の1557億円、税引前利益が同21.9%増の1640億円、当期純利益が同14.5%増の1143億円となった。売上総利益は29.9%となり、0.8ポイント改善した。

連結業績概要

 富士通 取締役執行役員専務/CFOの磯部武司氏は、「第3四半期の本業の売上はコロナの影響は受けたものの、ほぼ前年並みの水準を確保。営業利益は上期同様に採算性の改善により大きく増益となった。テクノロジーソリューションを中心にコロナの影響を受けている。通期では、前年のPC特需の反動があり1200億円の減収があったが、5G基地局の増加と電子部品の物量増加を中心に800億円の増収。国内サービスおよび海外リージョンでの採算性改善が進んだほか、デバイス事業の再編や、欧州低採算国と北米プロダクトビジネスの撤退、携帯販売代理店事業の譲渡が影響した」と総括した。

富士通 取締役執行役員専務/CFOの磯部武司氏(過去の記者会見より)

 採算性改善については、テクノロジーソリューションのソリューション・サービス事業において、上期からの改善が継続。同じくテクノロジーソリューションのシステムプラットフォーム事業は、プロダクトミックスの影響により好転した。またデバイスソリューションは、売上増により固定費回収が進んで好転したという。

 9カ月累計の受注状況については、エンタープライズ(産業、流通)が前年同期比11%減(パソコンを除くと9%減)。ファイナンス&リテール(金融・小売)が10%減(同6%減)、JAPAN(地方自治体、ヘルスケアなど)が13%減(同10%減)、公共・社会インフラ(官公庁、社会基盤)が10%増(同10%増)となっている。

国内の受注(単独)の状況

 なお新型コロナウイルスの影響については、第3四半期累計で、売上収益では1051億円のマイナス影響、営業利益で370億円のマイナス影響があったという。

 「売上収益に対して、第1四半期は4%、第2四半期は5%の減収影響があったが、第3四半期は2%と、上期に比べて売上全体への減収影響は縮小している。製造、流通ではIT投資予算の縮小、プロジェクト延伸の動きが上期から継続。だが、再開したプロジェクトもあり、影響は縮小傾向にある。自治体、ヘルスケア領域では、お客さまが新型コロナへの直接的対応に追われる状況が継続しており、低調な推移となっている。第4四半期もその傾向が継続するだろう。金融、小売では大きな影響は生じていない。官公庁、キャリアについても影響は見受けられず、堅調に推移している。海外では、再度ロックダウンになった地域もあり、厳しい状況が続いている」とする。

 一方、「ニューノーマルに対応したプラスのデマンドも出ている。テレワークなどのリモートに関連したパソコン、インフラの増設、請求書や領収書などの電子保存ソリューションがプラスに貢献。窓口での接触回避を目的としたAIによる無人受付ソリューションが公共機関、金融機関で採用されるなど、無人化、非接触をキーワードにした商談も増えている。データの積極活用を目的とした基幹システムの再構築商談も数多く、顧客のDXへの意識は高まっている感触がある。これらのデマンドはさらに高まる。しっかりと応えられるように取り組む」とした。

新型コロナウイルスの影響(売上収益)

第3四半期累計のセグメント別業績

 第3四半期累計のセグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上収益が前年同期比5.5%減の2兆1309億円、営業利益は同9.6%減の946億円となった。

 テクノロジーソリューションのうち、ソリューション・サービス事業の売上収益が前年同期比7.1%減の1兆2228億円、システムプラットフォーム事業の売上収益は同7.4%増の4615億円、海外リージョンの売上収益は同7.8%減の5274億円となった。

 「ソリューション・サービス(事業)では、コロナの影響を大きく受けて減収となったほか、パソコンのハード一体型ビジネスが減少したものの、SIおよび運用サービスでの採算性改善が進み、プラスとなった。システムプラットフォーム(事業)では、システムプロダクトにおいて、欧州工場閉鎖による商流変更がプラスに影響。ネットワークプロダクトにおいては5G基地局に加えて、バックボーンの増強に向けた投資もあった。5Gの所要は倍以上に増えており、これが来年度、再来年度も見込める。海外リージョンでは、北欧・西欧(NWE)での公共系大型システム開発商談がプラスに貢献した」という。

 なお、2021年度第3四半期累計のFor Growthの売上収益は前年同期比5%増の6958億円となり、構成比は33%。For Stabilityは前年同期比10%減の1兆4351億円となり、構成比は67%となった。

 「第3四半期は、5G基地局の強いデマンドがFor Growthの伸長を牽引した。DXのためのモダナイゼーション、SAPによる基幹系システムの再構築へのデマンドが強い。非対面、非接触などのニーズがあるが、これらの商談の規模はまだ小さい。富士通自らのDX化をしっかりと進めることで、リファレンスを構築しながら、顧客の事業成長、社会課題の解決に貢献できるように取り組んでいく」という。

テクノロジーソリューション
価値創造のための2つの事業領域

 ユビキタスソリューションは、売上収益が前年同期比31.5%減の2417億円、営業利益は同73.7%増の396億円。帯端末販売代理店事業の連結除外影響のほか、前年のWindows7関連特需の反動を大きく受けて減収となった。

 デバイスソリューションは、売上収益は前年同期比10.8%減の2141億円、営業利益は前年同期の61億円の赤字から、213億円の黒字に転換した。第3四半期は、事業再編を除く本業では、電子部品を中心に10.2%の増収になったという。

 なお、前回公表の社内計画との比較では、第3四半期の全社営業利益は50億円好転したという。内訳は、テクノロジーソリューションは計画通りの推移だが、ユビキタスソリューション、デバイスソリューションでそれぞれ25億円ずつ好転したという。

ユビキタスソリューション
デバイスソリューション

2020年度通期の業績見通しは上方修正

 一方、2020年度通期の業績見通しは、10月公表値から修正。売上収益が前年比6.4%減の3兆6100億円と据え置いたものの、営業利益は250億円増の前年比12.1%増の2370億円、当期純利益は170億円増の同10.8%増の1770億円とした。営業利益率は6.6%を見込む。

連結業績の見通し

 「当期利益は過去最高を想定している。もろもろのリスクをしっかりと抑え込んで、コミットした数字を達成したい。必ず守るべき数字として出したものであり、これを達成して、2021年度につなげたい」と意気込みをみせた。

 通期のコロナ影響は、売上収益で1200億円のマイナス、営業利益で410億円のマイナスを見込んでいる。

 「ソリューション・サービスでは、自治体、ヘルスケア分野において、第4四半期もコロナによる商談停滞の影響が継続することを反映して、売上収益は100億円の下方修正。デバイスソリューションは、電子部品の所要増加を織り込み、100億円増額した」という。

 磯部CFOは、「コロナ禍が直接的、間接的にもたらしたさまざまな変化により、事業を取り巻く環境はますます複雑化している。富士通はイノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくというパーパスの実現に向けて、まずは自らがしなやかな変化をし続け、持続的な成長と価値の創造に取り組んでいく」と述べた。

ワークライフシフトは確実に定着

 また、富士通が取り組んでいるワークライフシフトの進捗についても説明。一部の社員に適用していたコアタイムなしのフレックス勤務制度が、94%の社員にまで拡大。環境面から柔軟な働き方を支援していることも強調し、シェードオフィスとして350拠点約1万席を確保。出勤率は、第2四半期~第3四半期では20%前後に収まっているという。また、従業員の声を収集するVOICEプラットフォームを活用して、次のアクションに反映する仕組みを整えており、これを活用した社内調査では、テレワークに移行しても、生産性が変わらない、あるいはあがったとした社員が75%に達した結果を報告した。

 「ワークライフシフトは確実に定着している。生産性の向上にも寄与している。新たな働き方に向けた投資も継続しているが、従来型の働き方を見直した結果、固定費の圧縮にもつながっている」とした。

 一方、同社では、2021年4月1日付で、富士通研究所を富士通に統合し、CTO直下の組織として、富士通研究所を設置することを発表。社内に点在している調査、分析機能を集約して、全社の技術戦略立案機能を担う「技術戦略本部」と、先端技術研究を行う「研究本部」を置くことを明らかにした。

 また、2020年10月に発足した「富士通Japan」に関しては、2021年4月1日付で、富士通新潟システムズ、富士通ワイエフシー、富士通山口情報、富士通エフ・オー・エムの4社を吸収することを発表。いよいよ本格的に始動に向けた準備が整ったことを示した。磯部CFOは、「4月1日付で、社員数は1万人規模になる。2021年度は6000億円の事業規模になる。詳細は別途説明する」とした。