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富士通、“新しい働き方”に必要なソリューションを「Work Life Shift」として体系化

 富士通株式会社は9日、新しい働き方に必要なソリューションを体系化し、コンサルティングや導入定着支援までをトータルに「FUJITSU Work Life Shift」として提供すると発表した。2023年度までに関連事業で売上1000億円を目指す。

 富士通自身が経験した、新型コロナウイルスの影響でテレワークを実施する際の課題をソリューション化した。例えば、緊急事態宣言後、テレワーク実施者数が大幅に増加した結果、VPNの遅延で業務がスムーズに進まないといった事態が発生。新たなネットワーク基盤を開発することとなった。こうした経験を経ての知見を生かし、新しい働き方に則した17のソリューション、59のサービスに、コンサルティング、定着支援までトータルで提供する。

 「新型コロナウイルスが落ち着いたとしても、働く場所を選択して働くという流れは元に戻ることはないだろう。今回、社内サーベイとともに新しい働き方に必要なソリューションを提供し、多様な働き方に必要なものとして提供していく」(富士通 執行役員常務 デジタルインフラサービスビジネスグループ長の島津めぐみ氏)。

 今後はグローバルを視野に入れた働き方改革の知見を踏まえたサービスとして、ソリューション拡充なども進めていく。

富士通 執行役員常務 デジタルインフラサービスビジネスグループ長の島津めぐみ氏

富士通自身の実践知を一貫して提供する「FUJITSU Work Life Shift」

 富士通は、2020年7月にニューノーマルにおける新しい働き方「Work Life Shift」を推進することを発表した。「発表後はマスコミに多数取り上げてもらい、さまざまなお客さまから多数の問い合わせもいただいた。そこで今回、当社自身の経験を踏まえてさらにソリューション拡充も行い、FUJITSU Work Life Shiftとして、知見を生かした新サービスを提供する」(島津氏)。

FUJITSU Work Life Shift

 ポイントは社内サーベイを行い、そこで得た生の声を生かしてソリューション開発を行っている点だ。例えばテレワーク制度は、新型コロナウイルスが流行する前から取り入れていた。しかし、緊急事態宣言以前と以降では同じ富士通社内で行うテレワークにも大きな違いがあった。

 「緊急事態背宣言前は、一日にテレワークを行う人員は2万人程度。ところが緊急事態宣言があった後は、1日に6万人がテレワークをする状況となった」(島津氏)。

 生産性向上の解決策は?と社内サーベイを行ったところ、最も大きな課題としてあがったのが「ネットワークの接続性」で、80%の人が見直しの必要があるとした。実は緊急事態宣言後、富士通のVPN接続数は770%へと大幅に増加。システムエラーが月に1万7000件、接続障害への問い合わせ件数が200%といった数字が示すようにネットワーク環境が不安定になり、トラブル対応も追いつかず、長期的な対策をとらなければいけない状況となっていた。

 「急激にテレワークをする人が増えた結果、VPNがパンク。業務システムや必要なファイルシステムにアクセスすることができず、業務に大きな支障を来したという声が集まった」(島津氏)ため、VPNに代わる、セキュアでスケーラブルなクラウド型ネットワーク基盤への切り替えを実施した。

 チームメンバーとのコミュニケーションも、リモート環境で意思疎通が困難になったことから、会議の数が20%増加。直接の対話が減ったことでメールの数も20%増えたほか、オンライン会議についても、一方通行のコミュニケーションで同時多発議論が困難という声が高まるなど、テレワークで従業員同士の協働が進まないとの声が高まった。そこで、富士通独自のユーザーインターフェイス技術を実装するコラボレーション基盤を導入することが決まった。

ネットワークの接続性
チームメンバーとのコミュニケーション

 そのほか、テレワーク実施時のトラブルとしては、多様なテレワーク環境に起因する未知のトラブルが多発。さらに、子どもがパソコンに飲み物をこぼすといった、家庭に起因するパソコンなどの故障に加え、働く場所を移動する際にパソコンを落下させて故障させるなど、想定外のさまざまなことが起こる。そこで、多様な場所で働いている社員をサポートできる仕組みを新たに構築したという。

 また、緊急事態宣言が解除された後でどんな働き方を望むのか社内調査を行ったところ、事務所や工場といった職場と自宅の両方を働き場所として選択できることを望む社員が、54.92%と最も多くなったことも、社員の変化を表す調査結果といえるだろう。

 これを踏まえて誕生したFUJITSU Work Life Shiftは、富士通自身の実践知を一貫して提供するとともに、コンサルティングでは富士通に加えRidgelinezのメンバーと人事・総務など現場を含めたコラボレーションチームによる、「ありたい姿」を共有。デリバリーは短期導入を目指し、グローバルに統一された17のソリューションを提供する。
 加えて、利活用を拡大するために、定着と効果確認のために定着化支援チームによって、動画やテンプレートを使った導入教育、利活用推進のための利用状況の把握とハンズオンなどを行っていく。

富士通自身の実践知を一貫して提供
FUJITSU Work Life Shiftの体系

5つのソリューションを紹介

 本日の発表会では、提供しているソリューションのうち主要5つが紹介された。「Zero Trust Network」は12月提供開始予定のクラウド型のネットワークサービス。クラウドへの接続レスポンスを改善し、ダウンロード速度はVPNと比較して7.8倍、アップロード速度は1.7倍を記録した。

 「グローバルで100カ所以上のアクセスポイントを用意し、自宅だけでなく、海外からでも快適な業務を実現する。セキュリティに関しても複数要素認証でセキュリティを強化している」(富士通 理事 マネージドインフラサービス事業本部長 古賀一司氏)

Zero Trust Network
富士通 理事 マネージドインフラサービス事業本部長 古賀一司氏

 「Secure Remote Working」は10月30日提供開始予定。PCと仮想デスクトップ環境・サポートをセットにしてサブスクリプションモデルで提供する。PCにデータが残らないため、リモートワークでも安全に作業できる。2021年第1四半期中には、秘密分散技術を組み込んだFATパソコンを提供し、ファイルを閉じると自動でデータが消去される仕組みを提供することも予定している。

 「Customer Experience Center」は12月提供予定。在宅勤務を取り入れた企業に、パンデミックや災害時につながるサポートデスクを提供する。夜間や早朝にテレワーク中の人に対してもサポートを行えるよう、24時間態勢のサポートも提供する。AIチャットボット、Webなどのデジタルサポートも提供し、「時間と場所にとらわれない働き方をしている人を支援するサポートを実現する」(古賀氏)と従来のサポート体制を大幅に拡充したものとなっている。

Secure Remote Working
Customer Experience Center

 ボーダーレスなオフィス実現に向けた「Workplace Support」は、10月30日から提供開始予定。子どもがジュースをこぼしてパソコンが動かなくなった、パソコンを落としたといった過失も補償する。スマートフォンで昼の15時までに修理依頼があった場合には、翌営業日に代替え機を個人宅まで発送する。「家庭まで修理品を引き取る法人向けサービスは、大手ベンダーとしては初めてのサービス」(古賀氏)となる。

 離れている環境でも共同作業を行っていくことを支援する「Virtual Collaboration」は11月30日提供開始予定。手書きスケッチや資料を張り付けて共有することも可能で、即座にアイデアを共有することができる。「これは富士通研究所で開発した技術で、空間を超えて情報共有を実現する」(古賀氏)

Workplace Support
Virtual Collaboration

 サービスの定着、利活用支援については、ツールの特色に合わせ、利用ルールと使い勝手のバランスを意識した支援を行う。富士通自身は、利用ルールの策定などを行った結果、ファイル共有サービスの利用率が29%から64%と大幅に上昇した。

 今後はグローバル視点での働き方改革支援、新たなテクノロジーの開発と実装やさらなるソリューションの拡充、医療や建設現場といった業種に特化した業務サービスの提供などを行っていく。

定着・利活用支援