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HPE 望月社長が事業戦略を説明、「DXプラットフォームの提供者としてビジネス変革のさらなる加速に貢献する」

 2020年9月1日付で日本ヒューレット・パッカード株式会社の社長に就任した望月弘一氏が、12月15日、記者会見を行い、2021年度の事業戦略に関して説明した。望月社長が対外的に事業方針を発表するのは、今回が初めてとなった。

 その中で望月社長は、「DXプラットフォームの提供者として、お客さまのビジネス変革のさらなる加速に貢献することが、HPE(Hewlett Packard Enterprise)の2021年度の事業戦略になる」と発言。「IT環境は分散化し、複雑化しており、ユーザーはそこに多くの工数を使っている。HPEの役割はそれをシンプル化し、連携させ、最新のデータにアクセスできる環境を作ることにある」などと述べた。

日本ヒューレット・パッカード 代表取締役 社長執行役員の望月弘一氏

“本物のas a service”を提供できる会社

 望月社長は、上智大学外国語学部英語学科卒後、日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、日本IBM)に入社。20年以上に渡り、日本およびアジア太平洋地域で、営業、戦略、サービス事業などを担当していたが、1998年から2年間の米国IBM本社勤務の経験もある。

 また2007年には、グローバル・ファイナンシング事業部長兼執行役員に就任したが、その後日本IBMを退社し、2010年10月にディメンションデータジャパンの代表取締役社長に就任。2015年11月にはレッドハットの代表取締役社長に就任し、5年にわたって、日本における同社の高い成長を牽引した。そして2020年9月1日に、日本ヒューレット・パッカードの株式会社代表取締役 社長執行役員に就任している。

 「日本の多くの企業でDXが加速されているが、実態は部門ごとに独自のインフラと、独自のアプリケーションを稼働させ、ばらばらの状況である。これをシームレスに、シンプルに連携させることが求められており、『EDGE TO CLOUD PLATFORM AS A SERVICE』というコンセプトを掲げるHPEは、間違いなくお役に立てる」とする。

 その理由としては、「コンピュート、ストレージ、ネットワークを、エッジからオンプレミス、クラウドまで、横断的に幅広い製品として提供できる」ことを挙げたほか、「これらをシームレスにつないでシンプル化できる。自社製品だけでなく、パートナーの製品まで含めて、すべてクラウド化して提供できるサービス部門を有している。そしてHPE GreenLakeにより、自社および他社のソリューションを、すべてコンサンプションベースで提供できるのが強みである。GreenLakeは10年前からノウハウを蓄積し、知見を生かして開始したもの。本物のas a serviceを提供できる会社だ」などとした。

 また望月社長は、「HPEは、ハードウェア、ソフトウェア、OSS(オープンソースソフトウェア)を含むソリューションメニューが広く、サービスのケーパビリティも提供している点が強み。自社の製品にこだわらず、ベストオブブリードをいち早く取り入れ、実装能力も持つ」と述べたほか、「一方で、歴史があるさまざまな部門から構成されるため、トータルでのソリューション能力を最適化して提案する場合に、よりコラボレーションを進められる余地があると見ている。日本において、どこにプライリティを置くのか、各部門になにを期待するのか、社員個人はなにができるのかといったように、戦略の共有を進め、点と点を結ぶといった活動を進めている。これまで以上に部門を超えた活動を進めたい」とも話した。

IT投資動向の4つの動きにフォーカス

 さらに、「HPEは2022年までに、すべてのポートフォリオをas a serviceとして提供する企業へと変革することに取り組んでおり、それに向けては順調に推移している。すべてのデータ発生ポイントから、いち早くデータを集め、情報から洞察を導き出す基盤が重要になるなかで、HPEは、Edge-Centric、Data-Driven、Cloud-Enabledをキーワードに、エッジ、データ、クラウドにまたがるテクノロジーをas a serviceで提供していくことになる」との見通しを示す。

HPEの3つのフォーカスポイント

 そして、「日本における今後のIT投資動向を見ると、5GやIoTにより、エッジの需要が加速すること、ニューノーマル時代の働き方にシフトすること、DXの加速にはデータ戦略が不可欠になること、ITインフラがますますハイブリッドにシフトする、という4つの動きに集約される。HPEの日本における事業戦略は、この4点に立脚したものになる」と述べ、「5G/IoT」「DIGITAL WORKPLACE」「DATA MANAGEMENT & AI」「HYBRID CLOUD」の4点から説明した。

お客さまのIT投資動向

 このうち5GおよびIoTでは、「エッジ分野に対しては、2018年から4年間にわたって4000億円の投資を行い、Aruba ClearPassやHPE Edgelineといった製品を投入して、高い評価を得ている。2019年11月には、5G専用モデルであるHPE Edgeline EL8000を発表したが、この製品は、日本でもローカル5Gでの採用が開始されている。またClearPassでは、メーカーを問わず多種多様なデバイスの検知、検出、認証、可視化を行うことができる。30年の歴史を持つ通信・メディアソリューションでは、独自のソフトウェアやSI機能を使いながら、5Gネットワーク環境を提供し、IoTにおいても幅広く利用してもらうことができる」との認識を示している。

 なお2020年8月には、HPEの米本社にHPE 5G Labを設置し、パートナーとともにソリューション開発を進めていることも紹介。「HPE 5G Labには、日本からもPTCやキヤノンなどが参画している」とした。

5GおよびIoT

 2つ目、ニューノーマル時代の働き方にフォーカスした「DIGITAL WORKPLACE」に関しては、「いま求められているのはID管理や認証だけでなく、セキュリティを含めた全体的な運用管理である。無線LANやVPNといったこれまでのArubaの機能に加えて、2020年7月にはSilver Peakを買収し、SD-WANの製品群を強化。モバイルワーカーが拠点をまたがって利用したり、複数のクラウドサービスをまたがったりしながら、自由にデータにアクセスできる環境を実現できる。さらに、Aruba Edge Service Platform(ESP)では、ネットワークに接続するすべてのリソースを管理し、AIによるゼロトラストセキュリティを実現できる。HPE自らがデジタルワークプレイスのベストプラクティスの会社として実践してきたノウハウをお客さまに提案したい」と述べた。

DIGITAL WORKPLACE

 続いて、DXを加速するデータ戦略を支えることになる「DATA MANAGEMENT & AI」では、「分散化したデータ基盤を統合し、全社規模のデータファブリックを構築し、AIを活用して、ひとつでも多くの洞察を導くための仕組みづくりに取り組んでいる。2018年以降、Bluedata、MapR、CRAYを買収したほか、2020年6月には、Ezmeralを発表し、AIやデータ分析のためのプラットフォームや、より価値の高いコンピューティングプラットフォーム環境を提供できるようになった。HPE Right Mix Data Storeでは、データの最適配備が可能になる」などと述べた。

DATA MANAGEMENT & AI

 4つめの「HYBRID CLOUD」については、「ITインフラの自由な選択権を提供することが目的である。オンプレミスのクラウド化、コンテナ基盤の実装化などを積極化するとともに、パートナーとの協業によるハイブリッドクラウドのメニューを拡大する。HPE GreenLake Cloud Servicesでは、幅広いリソースの可視化とシステムの最適配備を行えるようになる。Tシャツモデルと呼ぶ、S、M、Lによる顧客の要望にあわせた柔軟性の高いソリューションメニューを提供しているのも特徴だ。また、HPE HCI SolutionによるAzure Stackの提供やGoogle for Anthosにも提供。SAP HANAのオンプレミス環境も従量課金で利用できるようにしている。AIを活用した自律的なインフラ監視サービスであるHPE InfoSightも提供しており、これら製品を広く提供できる体制へと強化したい」と語った。

HYBRID CLOUD

 さらに、2021年度は産業別営業体制を強化。従来の3つの業種別営業体制から、通信サービス、製造、流通・サービス、金融、公共の5つの産業別営業体制に細分化し、人員を40%増員したほか、DXプラットフォーム推進チームを新設して、ビジネスに貢献できる提案を行える体制を確立するという。

 「プラットフォーム提供者としてのプロダクト中心のアプローチではなく、DX推進をテーマに、お客さまの業務に則した付加価値の高い提案ができる組織を作りたい」と述べた。

パートナーとの協業体制を推進

 また、パートナーとのアライアンスについては、「国内には3000社を超えるパートナーがいるが、サーバー中心の関係だけでなく、ストレージやHPC、エッジといった幅広い製品を提供できる環境を整備するとともに、GreenLakeやコンサルティングサービス、アドバイザリーサービスも、パートナーを通じて提供する仕組みを提供する」などとした。

 会見では、日商エレクトロニクスの寺西清一社長兼CEOが登壇し、「当社は、1995年からパートナーシップを結んでおり、協業関係を強化してきた。GreenLakeについても専任チームを組成し、この2年間で、製造業を中心に5社から受注している。日商エレクトロニクスは、IT環境をシンプルにすることに取り組んでいるが、当社のマネージドサービスであるNCPF(Nissho Cross Platform)とGreenLakeを組み合わせることで、IT環境をシンプルに効率よく運用でき、価値を高めることができる。IT投資を30%以上削減できた事例もある。GreenLakeは、パブリッククラウドとオンプレミスの良いところどりの産物であり、オンプレミス環境のサービス化を実現できる。DX時代にフィットしたサービスである。来年度から始まる3カ年計画の成長ドライバーとしても期待している」などと述べた。

日商エレクトロニクス 代表取締役社長 CEOの寺西清一氏

 望月社長は、日本のIT市場環境についても言及。「新型コロナウイルスの感染拡大は、経済的な影響を及ぼす一方で、ITの重要性を再認識できる機会にもなった。2021年から3年間のIT投資は年率3.5%で増加するとの予測からもそれは明らかである。産業別に見ると濃淡があるが、すべての産業でIT投資はプラスになると見られている。デジタルマインドセットが高まり、デジタライゼーションをキーワードにIT投資が進む。従来型のインフラ投資は縮小するが、クラウド投資は2けた成長になり、エッジが高い成長を遂げる。HPEが掲げる『EDGE-TO-CLOUD PLATFORM』は、これまで以上に多くの顧客に貢献できる余地がある」と発言した。

 日本においては、キヤノンおよび日本システムウェアとともにスマートファクトリー化に取り組んでいること、大同特殊鋼ではマテリアルインフォマティクス分野での活用、auカブコム証券では、証券取引を含むミッションクリティカルシステムを従量課金で運用している事例などを紹介した。

 さらに、テクノロジーサービスを提供する「POINTNEXT TECHNOLOGY SERVICE」では、全世界には2万2000人、日本でも1500人以上の陣容を擁していることを示しながら、「HPEは自社製品だけでなく、他社のソリューションもエンド・トゥ・エンドで提供できる点が強みであり、これをGreenLakeというコンサンプションモデルで提供することに力を入れたい。GreenLakeは、エッジからクラウドまで、あらゆる場所で、従量課金によるクラウドエクスペリエンスを提供できるソリューションである。スケールアップやスケールダウンにも柔軟に対応し、マネージド型で提供できる。一日の長があるという自負のもと、より多くのユーザーに価値を提供したい」などと述べた。

 また、「GreenLakeの売り上げ構成比は、グローバルでは10%に届かないが、加速度的に伸びている。日本は、GreenLakeが最も浸透している国であり、普及率が格段に高い。また、成長率も最高に近い伸びを示している。オンプレミスでのas a Service市場は、2023年度までに58%の成長が見込まれているが、GreenLakeはこの伸びを遥かに上回っている」とした。

4つの顧客からの要望

 一方、望月社長は、「エッジコンピューティングに対する要望の高まり」、「データ活用基盤の整備」、「ハイブリッド化するインフラ基盤の最適な管理」、「コンサンプションモデルの導入」という4点が、顧客からの要望であることも指摘した。

 「2025年までに、ネットワークに接続されるデバイスは550億個台以上となり、2020年以降にリモート環境で働く労働人口は45%を占めるというなかで、DXはますます推進され、ITは、リアルタイムコラボレーション、スマートファクトリー、自動運転、遠隔医療、リモート学習などの領域に活用されることになる。これに伴い、ITへの期待は変化し、エッジからハイブリッドクラウドに渡るオーケストレーションが重視されるだろう。ネットワークを介在して、すべてのものがつながるだけの時代から、これまで以上にセキュアなコネクティビティが求められる時代になってくる」という点を指摘。

 「また、5GやIoTといったテクノロジーの進歩もあり、データの発生ポイントが拡大し、データボリュームも飛躍的に増加する。2025年には、現在の5倍となる3.6ZBのデータが生成される。しかし、企業が活用できているデータは3分の1というのが実態である。データから洞察を導く環境が大切になってくる。それが企業の競争力を維持することになる。そして、90%の企業においてハイブリッドクラウドの導入かが進んでいるが、クラウド間の相互互換性が乏しく、このまま放置をすると企業にとって効率が悪いインフラ投資につながる。さらに、オンプレミスの環境においても、従量課金で活用したいという要望が増加している。これに対しては、HPEは、3年前からGreen Lakeで対応してきた。こうした顧客からのニーズが、HPEがas a serviceの企業にシフトしている理由である」などと述べた。

 このほか、先ごろ発表された米HPEの2020年度通期業績(2020年10月末締め)についても説明。「3~5月は、ハードウェアを中心としたサプライチェーンの大きな混乱の影響もあり、大きなインパクトがあった。だが、第3四半期、第4四半期と順調に回復し、第4四半期は新型コロナウイルス感染拡大前の前年度第4四半期とほぼ同等まで回復している。コンピュートとストレージの軌道を回復に戻すこと、HPCやインテリジェントエッジといった戦略投資エリアにおいて市場シェアを獲得していくこと、サービスビジネスへのシフトという3つの重点ポイントにおいて成長を遂げており、年間で2けた成長を達成した」と報告した。