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富士通、Zippinの技術を利用したAIレジレスソリューションを国内で独占販売

 富士通株式会社は8日、米スタートアップ企業のZippinとの協業を発表。リアル店舗のデジタル化を加速させる。

 富士通は日本におけるZippinの総代理店として、Zippinが開発する、AIを活用したレジレスソリューションを2021年3月までに販売開始する。

 また、富士通研究所が開発したマルチ生体認証による本人認証、省人化や省力化、無人化オペレーション、非接触/非対面オペレーションといった周辺機能の強化・拡充を図り、2021年9月までに、新たな購買体験を実現する日本市場向けソリューションを開発し、SaaS型サービスとして提供を開始する。

 2021年度までに10店舗、2023年度までに100店舗以上への導入を計画している。

協業の概要

 富士通とZippinは、ローソンが、2020年2月から、ローソン新川崎TS店で実施しているレジなし店舗の実証実験に参加。レジ待ち時間が10分の1に縮小するなど、実証実験の成功が後押しとなって、今回の締結に至ったという。

 「両社が持つテクノロジーや無人店舗に関するノウハウ、リソース、強固な顧客基盤を融合させることで、レジのないリアル多店舗展開を支援。リアル店舗におけるDXを加速し、競争力強化を支援することができる。今後は協業関係を強化し、欧州などの日本以外の地域へも展開を検討している」(富士通 リテールビジネス本部DXビジネス事業部 シニアディレクターの石川裕美氏)としている。

富士通 リテールビジネス本部DXビジネス事業部 シニアディレクターの石川裕美氏

利用者と事業者の両方のニーズをとらえた新しいリテール業態を目指す

 Zippinは、シリコンバレーに本社を置くベンチャー企業で、AIをベースにした無人店舗ソリューションを展開。日本のほか、米国、ブラジル、ロシアで実証実験を行ってきたという。Zippinには、NTTドコモ子会社であるのNTTドコモ・ベンチャーズが出資した経緯もある。

 Zippinのクリシナ・モツクリCEOは、「第1号のレジレス店舗は(米国)サンフランシスコに設置し、バスケットボールスタジアムやアメフトスタジアムなど、人が多い場所に出店している。また、リオデジャネイロではオフィス内、サンパウロでは住宅地で24時間営業の店舗で導入している。モスクワでは、スーパーマーケットの通路上に設置している」と、すでに展開している事例を説明。

 その上で、「来店客の利便性の向上だけでなく、事業者にとっては人件費の削減、レジ待ちがないことによる売り上げの向上、すべての商品をカメラで識別することによる在庫管理の合理性や、高度な分析も可能になる。チェックインしてから入店するために万引も不可能だ。実証実験では純利益が3倍に増加している」と、その効果に触れた。

Zippinのクリシナ・モツクリCEO

 富士通が国内で提供するAIレジレスソリューションでは、スマートフォンにアプリをダウンロードしておき、クレジットカード情報を登録。店舗の入り口ゲートで、スマホまたは手のひらをかざすと、富士通独自技術の手のひら静脈認証と顔認証を組み合わせた認証が行われる。これは、非接触ながら世界最高水準の認証精度を実現しているという。

 また店内で商品を手に取ると、天井に設置されたカメラやセンサーで、来店客の体形や衣服などの特徴をとらえて、プライバシーを保護しながら、動きを正確にトラッキング。誰が、なにを、いくつ購入したかを検知し、商品を手に取って退店するだけで決済が完結するため、スタッフや来店客による決済オペレーションは不要になる。

 「店舗業務の30%を占めるレジ業務を完全になくすことができる。またレジ待ちがなくなり、スマホも使わないハンズフリーの消費体験を提供できる。さらに、来店客がポケットやバッグに商品を入れて店外に出ても自動的に決済されるため、万引防止にも活用できる。消費者に新たなUX/CXを提供することによって、満足度を向上させ、ビジネス収益の確立を支援できる」と、その特徴をアピールした。

富士通とZippinが実現する新たな購買体験

 さらに、「小売店舗運営におけるさまざまな課題を解決することで、店舗出店のハードルを下げることも可能になる。例えば、これまで出店が難しかったような狭小スペースや小商圏なマイクロマーケットにも展開でき、例えば、リモートワークの浸透により出社が激減しているオフィス内の社員食堂の代わりに、温かいお弁当を販売する小人数のスタッフで販売するといったことが可能。配送センターやコールセンターなど、リアルの現場で働く人の休憩時間をサポートする施設内店舗や、駅内小規模店舗の密を避けた販売環境の支援、高層マンションや医療施設、過疎地域などの生活支援の店舗などにも利用できる。不測の事態への対応にも適しており、リアル店舗におけるDXを支援できる」と述べている。

新しい購買体験を実現するソリューションのターゲット

 30~40平方メートルの店舗では、初期費用が、カメラなどのデバイスを含めて約1000~1200万円、運用費用が数十万円としている。

 「リアル店舗では、シンプルで多様性がありながらも、ストレスフリーなショッピング体験が求められている。一方、従業員の負担軽減や店舗オペレーションの効率化、コロナ禍での新たな接客手法の導入が事業側の課題となっている。利用者と事業者の両方のニーズをとらえた新しいリテール業態を実現する仕組みにしたい」と述べた。