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インフォアジャパン、2021年も業種特化とクラウド移行推進で売上2けた増目指す

 インフォアジャパン株式会社(以下、インフォア)は、2021年の事業戦略を発表。2020年11月に代表取締役社長に就任した三浦信哉氏が、「クラウドファースト、インダストリーフォーカスという基本戦略を継続しながら、社内組織強化、パートナーエコシステムのさらなる拡充、当社ならではの60:30:10のプロセスフレームワークのさらなる徹底などを図り、2けた成長を続ける」と重点戦略を説明した。

 60:30:10のプロセスフレームワークとは、6割はERPの標準機能、3割は業種特化機能、1割はその企業特有のカスタマイズに応じてソリューションを作りあげる、インフォア独自のものだ。この仕組みを強みとして、企業へのERP導入をできるだけ短期間に実現していくという。

代表取締役社長の三浦信哉氏

オンプレミスからSaaSへのシフトに注力した1年

 Infor本社は2020年5月、Koch Equity Development LLCの関連会社が、Golden Gate Capitalが保有するInforの全株式を買収し、100%子会社とした。経営体制が変わる中、11月に新たに日本法人の代表取締役社長に就任した三浦信哉氏が、「以前からの戦略同様、オンプレミスからSaaSへのシフトに注力した1年となった」と説明した。

 実際に売上で見ると、SaaS製品の売上は前年比2倍以上に成長した。一方で、オンプレミスの売上は38%減少したが、「これはあらかじめ想定した通り」(三浦氏)と説明。SaaSとオンプレミス合計の売上は前年比37%の成長と、全体では伸長している。

 導入サポートの売上は前年比2倍以上、SaaSビジネスは同67%増、サービスビジネス全体では同18%増となった。SaaSとオンプレミスの比率は61対39となり、SaaS売上高比率でオンプレミスを上回っている。

 また、注力しているパートナー経由のビジネスも21%にまで拡大し、新規にパートナーとして9社が加わった。「3年前は間接ビジネスの比率が16%だったが、それが21%にまで拡大した。さらなる拡大を目指していく」(三浦氏)という。

 直近の4年間で比較すると、「4年間2けた成長を続けている。SaaSの売上比率も増加傾向にある。これは本社の意向と同時に、日本全体で進んでいるクラウドシフトの波に乗っていることを示している」と説明している。

過去4年間の成長

 中長期戦略については、今後3年の成長目標は3年連続2けた成長を続け、2023年に対前年売上50%増。SaaSの比率80%、オンプレミスの比率20%、直販7割、間接販売3割という目標を掲げている。

 「急速に売上を伸ばすことも不可能ではないが、急な成長は反動も大きい。安定的に2けた成長を続けていくことを目指していく」(三浦氏)。

クラウドファーストとインダストリーフォーカスの基本戦略を継続

 基本戦略は、クラウドファーストとインダストリーフォーカスという従前から実施している戦略だ。成長を拡大するために、(1)既存のオンプレミスユーザーのクラウドへの移行注力、(2)注力するインダストリーでの新規顧客を獲得し、そのインダストリーでの横展開をマーケティング施策と共に実施、(3)エッジソリューションとインフォア・アジリティ、(4)パートナーエコシステムの底上げ――の4点をからめていく。

基本戦略とさらなる成長の施策

 ソリューション戦略としては、以前からアピールしている通り、インフラストラクチャ部分に関してはAWSとの連携を最大限に活用。自らはインフラ構築への投資は行わず、それ以外の部分への投資に注力する。それ以外の部分とは、コモンプラットフォーム、クラウドERP+クラウドエッジアプリケーション、クラウド分析と分析情報の3層だ。
 こうした基本戦略をふまえ、2021年の重点戦略として注力インダストリーとして自動車、A&D(航空・宇宙)、産業機械、製造業、食品・飲料、流通業、ファッション、そして化学を挙げている。

 さらに特徴的なのが、業種別顧客にフォーカスしたことで培ったノウハウを入れ込み、「INFOR 60:30:10プロセスフレームワーク」として導入を短期に済ませるプロセスを持っていること。ユーザーに対しERPの標準機能適応部分が6割、インダストリーに特化した割合が3割、残り1割はユーザー独自のカスタマイズを認めた部分となる。

 「これは長年ユーザーに製品を提供し、声を聞いてきたものを反映している。すべてERP側に合わせてもらうのではなく、ここだけは変えたくないという部分については、あえてERPに合わせろとは言わない。ユーザーにとっては競合との差別化となる要素を盛り込める部分であり、それを拡張機能で対応することで、インフォアとしても競合製品にはない特徴的な部分となっている」(三浦氏)。

INFOR 60:30:10プロセスフレームワーク

 また、適切に導入が進むよう、プロセスモデル「Implementation Accelerator」を提供。このモデルをベースに、標準機能をそのまま利用できるのか、利用できないのであればその理由は何か?といったことを聞き込んでいく。「真っ白な状態から話し合うよりも、プロセスモデルがあることで話が進めやすくなる。実際にこの方式を用いて相談を進めていった結果、90%を標準機能で済ませることができたのがワタミになる」(三浦氏)。

Implementation Accelerator

 それ以外の重点施策としては、2025年にクラウド比率7割の実現、社内強化としてインダストリー特化型組織をマーケティング部門、販売部門にも導入する。リファレンスプログラムの強力な推進、インダストリースペシャリスト人材の採用を計画する。パートナーエコシステムもさらに強化し、クラウドパートナー25社獲得、アライアンスパートナー5社獲得を目標としている。

 日本のユーザー獲得に大きな影響がある導入事例についても、「7社の事例を新たに講評する準備を進めている」という。

重点施策

 なお、Covid-19のビジネスへの影響については、「航空業界のように影響を受けているターゲット業種もあるのは確かで、様子を見ながらビジネス推進を行っていこうということになっている。全般としては、リモートワークがこれだけ進展した中で、今更オンプレミスではないのではないか?という声があがって、クラウドビジネスには追い風となっていると感じている」(三浦氏)とプラス効果も出ていると説明している。